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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章壱】宝石(星)の系譜/黒き兵士と夜の獣

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167/221

✮黒き惑星への再選択

【間章零】ep135〜145がプロローグで、その続きの【間章壱】になります。

間章は壱、弍、参……と続きます。

楽しんでもらえると嬉しいです。



 この物語は、本編【第七章】と【第八章】の間の物語です。【第八章】のEpisode.117の☆五〇年……の途中から、枝分かれします。

 本編では語られなかった、もう一つの惑星での物語です。



◆ジュラシックアース宙域


 巨大な惑星を背に、ルミナール号はゆっくりと減速し、ルミナス号の隣へと滑り込むように宙停し、ルミナール号により自動で連結される。


 ルミナール号のブリッジは、今後どうするか話し合いが進んでいた。

 そして、沈黙が続く中、ルビィが静かだが、揺るがない声で切り出す。

「ひとつ、はっきりさせます」

 全員の視線が集まる。


 ルビィはダイヤ、レオ、サイモンを見る。

 そして、一呼吸おき話し始める。

「“救援された”三人――あなたたちは、救助された時点で、私の指揮下です」

 一瞬、空気が止まる。


 ルビィは背筋を伸ばし、まっすぐに前を見据える。

「私は、この船――ルミナール号の船長です」

 足元で、白い毛玉がぴたりと動きを止めた。


 その宣言に、誰も異を唱えなかった。


 ダイヤが静かに問いかける。

「それで……ルビィ船長は、どちらを選ぶ?」


 ルビィはわずかに目を伏せる。

 短い沈黙のあと、顔を上げた。

「私は、二人のルミナールのクルーの結依とアストラを信頼しています」

 結依へ視線を向ける。

「結依は、探索を続けたい」

「私は……リトス銀河に帰りたい。本部の判断を聞く義務がある……でも何より、母サファイアにおばあちゃんを会わせたい」

 小さく息を吸う。

「意見は割れました。だから、三人目の意見で決めます」


 最後に、ルビィはアストラを見据える。

「アストラ。あなたは、どうするべきだと思いますか?」


 アストラは動かない。

 だが、その視線だけがわずかに揺れる。

 数秒の沈黙。


『私の結論を述べます』

 淡々とした声が、空間に落ちる。

『この状況において、最優先すべきは不確定要素の解消です』

 五人へ視線を巡らせる。


『五〇年の時間差は、単なる理論問題ではありません』

『社会構造、勢力図、技術倫理――いずれも、未知のまま行動を続けるリスクが高すぎます』

 一拍。


『予定していた二つの未探索惑星は、待てます。しかし、私たちの不確定要素の解消の方が急務と判断します』

 アストラは、ルビィへ視線を向ける。

『よって、最適解は――』

 わずかな間。

『リトス銀河の宇宙ステーションへ帰還することです』

 そして、ほんの少しだけ間を空ける。

『……船長の判断と一致しています』


 静寂。


 やがてルビィが、深く頷く。

 その動きには、迷いはなかった。

「決まりですね」

 ルビィは正面を見据える。


「ルミナール号、進路をリトス銀河へ。ルミナス号と連携し、帰還準備に入ります」

 その声が、確定した未来を告げる。

 レオは目を細め、次に待つ現実を思い描く。

 サイモンは一度だけ目を閉じ、ゆっくりと開いた。

 結依は小さく肩を回し、気持ちを切り替える。

 アストラは静かにログを更新する。

 ルビィは、まっすぐ前を見続けた。

 そして、ダイヤは静かに息を吐き、遠くの星を見つめる。

 ブリッジの外、無数の星々がゆっくりと流れていく。


 その中で――

「……あ」

 小さく、漏れる声。

 ダイヤの視界の端に、ひとつの星が入る。

 黒い。

 光をほとんど反射しない、あの異様な惑星だ。

 無意識に、身体がわずかに前へ傾いた。

「……ねぇ」

 誰にともなく、呟く。


 レオが横目で見る。

「どうした?」


 ダイヤは、指を上げる。

「あれ」

 全員の視線が、ゆっくりとその方向へ向く。

 一拍。


 サイモンが、目を細める。

「……おいおい」

 口元がわずかに歪む。

「まさかとは思うが……」


 ダイヤが、はっきりと言う。

「前に行った黒い惑星」

 沈黙が落ちる。


 ルビィの表情が、わずかに強張る。

 「あの黒い惑星、何かあるんですか?」


 サイモンが食い気味に言う。

「……偶然とは思えねぇな!」


 レオが静かに言う。

「軌道計算上、再接近はあり得る」


 ダイヤは、視線を外さない。

「……行きたい!」

 一言。

 空気が、わずかに変わる。


 ルビィがすぐに返す。

「却下です」

 即答だった。


 ダイヤは振り返る。

「でもさ――」


「ダメです」

 ルビィの声は静かだが、強い。

「先ほど決定した通り、私たちは帰還します」


 サイモンが、ふっと息を吐く。

「……いや」

 一拍。


「正直、俺もあの惑星は気になってた」

 全員の視線がサイモンへ向く。

「戦って終わりじゃなかっただろ」

 腕を組む。

「あいつら、敵じゃなかった気がする」


 ダイヤが小さく頷く。

「でしょ?」

「中途半端で終わるの、一番気持ち悪い」

「だから、あそこだけはやり切りたい」


 レオは黙っていた。

 だが、ゆっくりと口を開く。

「あの惑星だけ、完結していない」

 一拍。


「中途半端なまま帰るべきではない」


 ルビィが視線を向ける。

「レオさんまで……?」


 レオは続ける。

「他の惑星は、危険も含めて結果が出ている」

 一拍。


「あそこだけは違う」

 静かに言い切る。

「……決着がついていない」


 ダイヤが、ニヤッと笑う。

「いいね、それ!」


 結依が腕を組みながら頷く。

「私は最初から探索続行派だし」

 一歩前に出る。

「行くなら全然大賛成!」


 ルビィの視線が鋭くなる。

「結依も……」


 結依は真っ直ぐ見る。

「伝説の三人が、“未知”を残したままの惑星でしょ?面白そうじゃん」


 沈黙。


 ルビィはアストラを見る。

「……アストラ」

 短く呼ぶ。


 アストラは静かに応答する。

『現状の判断は既に提示済みです』

 一拍。


『帰還が最適解です』


 ルビィが小さく頷く。

「……ええ」


 だが。

 アストラは続ける。

『ただし』

 その一言で、全員の意識が向く。

『行動意思の分布を再評価します』

 視線が順に巡る。

『ダイヤ、サイモン、レオ、結依――四名が再探索を希望』

 一拍。


『ルビィ船長と私は帰還を優先』

 静かな声。

『多数決的観点においては、再探索が優勢です』


 ルビィの表情が固まる。

「……それは」

 言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける。

「船長の判断を、多数決で覆すということですか?」


 アストラは即答しない。

 ほんのわずかな間。

『最終決定権は船長にあります』

 一拍。


『ですが、現場意思の無視はリスク要因にもなります』


 静寂。


 重い空気がブリッジを満たす。


 ダイヤが、静かに言う。

「お願い、ルビィ」

 一歩、前に出る。

「なんか敵がいてさ、そいつらの一人に発信機をつけてきたよ」

「今なら、追える」


 サイモンが続く。

「でもさ」

 少しだけ真面目な顔で。

「たぶん、敵じゃなかったろ、あいつら」


 レオも言う。

「交渉の余地がある可能性が高い」


 結依が笑う。

「えー!なにそれ、やっぱり面白そうじゃん。ルビィ、一つだけで良いから寄ろうよ」


 四人の視線が、ルビィに集まる。


 ルビィは――目を閉じた。

 静かに、息を吸う。

 そして、吐く。

 ゆっくりと目を開ける。

「……わかりました」

 小さく、だが確かに言う。

「その惑星だけですよ」

 一拍。


「再探索を許可します」


 ダイヤの表情が明るくなる。

「よし!」


 サイモンが軽く拳を握る。

「決まりだな!」


 レオは短く頷く。

「了解」


 結依が笑う。

「面白くなってきた」


 ルビィは視線を前に戻す。

 その顔には、覚悟があった。

「進路変更」

 一拍。


「目標――黒い惑星」


 アストラが即座に応答する。

『航路を再計算します』

 進路が、わずかに曲がる。

 ルミナール号とルミナス号。

 二隻は、ゆっくりと向きを変えた。


 あの黒い惑星へ向かって。

 ――再び。


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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