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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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✪問題児の帰宅

 ――サファイア(一五歳)

◆アクア・ワン・アリエス邸

 夜。

 リビングには、穏やかな時間が流れていた。


 キッチンでは、アリエス・ミラノ(五一歳)が夕食を準備している。

「レグルス、そっちお願い」


「はいはい」

 レグルス・ゴールドバーグ(五四歳)が苦笑しながら皿を運ぶ。

 二年前から、彼は長期単身赴任をほぼ終え、家にいる時間が増えていた。

 昔より少し白髪も増えたが、相変わらず穏やかな男だった。


 リビングのソファでは、タウロス・ミラノ・ゴールドバーグ(二五歳)が、生後四ヶ月の息子を抱いている。

「……やっと、寝たな」

 小さく呟く。


 その隣には、妻のマイラが座っていた。同じく二五歳。宇宙局勤務。


 マイラは疲れた顔をしながらも、幸せそうに笑っている。

「リオ、今日は機嫌よかったわね」


「たぶん父さんが静かだから」   タウロスが真顔で言った。


「どういう意味?」

 アリエスが振り向く。


「兄さんがいないからさ、父さん叫んだりしないだろ」


 全員、一瞬黙る。


「……否定できないわね」

 アリエスが少し遠い目をした。


 その横で。

 一五歳になったサファイア・ミラノ・デズモンドが、静かに端末を操作していた。

 昔よりずっと落ち着いた。


 物静か。

 冷静。

 だが、時々オリオンそっくりの危険な目をする。


 現在、彼女はすでに宇宙船設計分野で注目され始めている。若干一五歳にして、大学研究機関から共同開発依頼が来るレベルだった。


 アリエスが娘を見る。

「サファイア、ちゃんと休みなさいよ?」


「あと少し」

 サファイアは静かに答える。

「新型帰還制御システム、理論まとまりそうだから」


 レグルスが苦笑した。

「この家、仕事の話しかしないな」


「父さんも昔そうだったでしょ」

 タウロスが言う。


「否定はできん」


 そのときだった。

 ――ピンポーン。

 インターホン。


 全員が止まる。

 アリエスが静かに目を閉じた。

「……来たわね」


 タウロスが深いため息。

「兄さんか……」


 サファイアだけは少し嬉しそうだった。

「久しぶりよね」


◆玄関前

 ドアが開く。

 そこには。

 白衣姿。無精髭。疲れた顔。

 そして、どこか反省していない目。

 オリオン・ミラノ(三五歳)が立っていた。

「ただいま、母さん」


 アリエスが腕を組む。

「おかえり」


「いやぁ、今回は長かった」


「今回は、じゃないわよ」

 アリエスが即座に突っ込む。


 タウロスが真顔で言う。

「宇宙条約違反で拘束された人、普通“今回は”って言わないから」


「実験規模を少し間違えただけだよ」


「未認可重力歪曲実験は“少し”じゃない」

 タウロスが即答。


 レグルスも呆れていた。

「あの時のニュースすごかったぞ」

「“研究区域一帯が三分間ねじれた”って」


「理論上は成功した」


「被害出てる時点で失敗なんだよ」

 タウロスが頭を抱える。


 すると。

 オリオンがふと、タウロスの腕を見る。

「……その子?」


 タウロスが静かに頷く。

「リオ」

「僕の息子、まだ四ヶ月だよ」


 オリオンの目が、少しだけ柔らかくなった。

「へぇ……」

 リオは、小さな寝息を立てていた。

 その顔を見て、オリオンがぽつりと言う。

「タウロスが父親かぁ……」


「なんだよその反応」


「昔、泣きながら僕の研究止めてたのに」


「止めなきゃ家が消えてたからね!?」


 サファイアが小さく笑った。

「兄さん」

「また逮捕されたの?」


「拘束」

 オリオンが訂正する。


「同じようなものよ」

 アリエスが呆れる。


 その空気に、マイラが思わず吹き出した。

「なんか……」

「聞いてた通りの家族ですね」


「もっと酷い時期もあったわよ」

 アリエスがまた遠い目をする。


「主に兄さんが原因で」

 タウロスが真顔で補足。


 オリオンは反論した。

「でも科学は進歩した」


「犠牲も多かった」

 タウロス即答。


 サファイアが静かに言った。

「でも、兄さんの論文」

「今、宇宙航行用AIの基礎理論になってるのよ」


 オリオンが少し驚く。

「読んでたの?」


「全部読んでる」

 サファイアは昔から、オリオンの研究が好きだった。

 危険でも。無茶でも。

 そこにある発想だけは、誰より好きだった。


 オリオンが少し笑う。

「そっちは?」


「新型恒星間航行船の設計やってる」


「一五歳で?」


「兄さんに言われたくない」


 全員が吹き出した。


◆深夜・アリエス邸テラス

 食事も終わり、少し静かな時間が流れていた。


 オリオンは一人、宇宙を見ていた。

 その横へ、アリエスが来る。


 オリオンが聞く。

「……どうだった?」


「何が?」


「三人育てるの」


 アリエスは少し考えたあと、  笑った。

「大変だった」

「ですよね」


「毎日爆発したし」

「それは僕のせい」


「研究所も壊れたし」

「それも僕」


「タウロスは小さい頃から胃痛持ちになりそうだったし」


「……ごめん」


 アリエスが吹き出す。

「でもね」

 静かな声だった。

「楽しかったわよ」


 オリオンは少し黙る。

 風が吹く。

 宇宙船の光が、遠くを流れていく。

「……母さん」


「なに?」


「ありがとう」

 昔より、ずっと自然に言えた。


 アリエスは優しく笑った。

「どういたしまして」


 そのとき。

 テラス窓が開く。

 タウロス。

 サファイア。

 レグルス。

 マイラ。

 そして、小さなリオ。


 皆がそこにいた。


 賑やかな声。

 笑い声。

 失ったものは、きっと戻らない。

 それでも。

 残された人たちは、ちゃんと前へ進んできた。


 ――後に。

 オリオン・ミラノは、宇宙史最高峰と呼ばれるアンドロイド研究者となる。


 タウロス・ミラノ・ゴールドバーグは、宇宙局史上最年少で最高司令官へ就任。


 そして。

 サファイア・ミラノ・デズモンドは、“必ず帰還する宇宙船”を設計した天才科学者として、人類史へ名を刻むことになる。


 だが。

 彼らを知る者たちは、後にこう語る。


「ミラノ家の本当の偉人は――」 「たぶん、アリエスだった」と。




 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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これからも彼らの物語を届けていきますので、**【ブックマーク】**での応援もぜひよろしくお願いいたします!


このエピーソードで、アリエスと子供達の閑話は最終回です。


今夜20時から、間章壱がスタートします。

明日からは、平日毎朝6時に1話、断章をアップしていきます。土日祝は朝6時と夜20時に2回アップしていく予定です。

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