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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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165/221

✪ノア・セブン観光と問題児二世

 ――サファイア(一〇歳)

◆ノア第七宇宙ステーション  通称=ノア・セブン。


 巨大円環型宇宙ステーション。  観光、研究、軍事教育。その全てを兼ね備えた、人類圏有数の宇宙都市である。


「わぁぁぁ……!」

 展望デッキへ飛び込んだミラ・オルセンが、ガラスへ張り付いた。


 一〇歳になったミラは、銀髪を揺らしながら目を輝かせる。

「すごい! 宇宙船いっぱい!」


 その横で、サファイア・ミラノ・デズモンドは静かに景色を見ていた。

「……あれ、新型長距離巡航艦だ」

「推進ノズル配置、旧型より効率化されてる」


 ミラが振り向く。

「えっ、わかるの!?」


「なんとなく」


「なんとなくで分かる話じゃないよ!?」

ミラが笑う。


 少し離れた場所では、タウロス(二〇歳)が腕を組みながら周囲を警戒していた。

 現在、宇宙局士官学校へ進学済み。夏休み中だが、ミラノ家の中では、もはや保護者側の立ち位置である。


 その横で、アリエス(四六)が深いため息をついた。

「……ねぇタウロス」


「なに、母さん」


「嫌な予感しない?」


「すごくする」

 二人の視線の先。

 そこには。

 二九歳になったオリオン・ミラノがいた。

 数日間に渡る、ノア・セブン研究区画での仕事を終え、ちょうど家族と合流したところである。

 白衣。無精髭。疲れた顔。

 なのに目だけ妙に元気。

 オリオンの危険な時の顔だった。


 タウロスが即座に言う。

「兄さん」


「なに?」


「今回は観光だからね?」


「わかってるよ」


「その顔、“わかってない”時の顔なんだよなぁ……」


 するとミラが元気よく手を上げた。

「オリオン兄ちゃん!」

「宇宙船見たい!」


「いいね」

 サファイアも静かに頷く。

「研究区画も行きたい」


 アリエスが即座に反応した。 「研究区画はダメよ」


「なんで?前は入れたよ」

 サファイアが不満そうにする。


「なんでって……」

 アリエスがオリオンを見る。


 オリオンは視線を逸らした。


 タウロスが真顔で補足する。

「前回来た時、兄さん研究棟一つ封鎖したから、それで少し入れてもらえたんだ」


「あれは事故で」


「研究用AIが宇宙管制へ侵入したのを事故とは呼ばない」


「三分で戻したし」


「侵入した時点でダメなんだよ!!」


 その横で、ミラが楽しそうに笑っていた。

「ノア・セブンって面白いね!」


 無邪気なミラの声で空気が少し和んだ。


◆ノア・セブン・中央商業エリア

 数時間後。

 一行は観光エリアへ来ていた。

 無重力アトラクション。

 宇宙食カフェ。

 小型宇宙船シミュレーター。


 観光客で賑わっている。


 ミラはテンション全開だった。 「うわぁー!」

「浮いてるパンケーキ!」


「磁力制御だね」 

 サファイアが冷静に分析する。


「え、そこ分析する!?」

 ミラが突っ込む。


 すると。オリオンが突然立ち止まった。

「……ほう」


 タウロスの顔が死ぬ。

「兄さん、その“ほう”やめて!」


 オリオンの視線の先には、ノア・セブンの最新型の案内アンドロイド。

 スマートな白色機体。

 観光客対応用高性能AI。


 オリオンの目が輝く。

「新型神経模倣AI搭載か」


 タウロスが直ぐに言う。

「触らないで」


「見てるだけ」


「兄さんが“見てるだけ”で済んだこと、一回もないから」


 すると。

 サファイアが小さく笑った。

「オリオン兄さん」

「ちょっと試したい」


 タウロスが即座に振り向く。 「サファイアまで!?」


 一〇歳の少女とは思えない顔だった。

 完全に、“いたずらを思いついた科学者”。

 サファイアがオリオンに耳打ちする。


 オリオンもニヤッと笑う。

「いいな」


「よくない!!」

 タウロスが止める。


 しかし止められなかった。

 ――数分後。

◆中央商業エリア・メイン広場

『本日ハ晴天デス』

『観光ヲオ楽シミクダサイ』

 案内アンドロイドたちが整列している。


 その中央で。

 サファイアが小型端末を操作。

 オリオンが横で補助。

 ミラはワクワクしながら見学。


 タウロスは頭を抱えていた。 「止めるべきかな……」

「でももう遅い気もする……」


 次の瞬間。

 ――ピコン。

 案内AI起動。

『観光案内ヲ開始シマス』


 数秒沈黙。

 そして。

『今日モ生キテテ偉イ!!』


「…………」

 広場沈黙。


 さらに。

『宇宙ハ怖イ!!』

『デモ頑張レ人類!!』


「なんで情緒応援型AIになってるの!?」

 タウロスが叫ぶ。


 ミラは爆笑していた

「すごーい!!」


 サファイアは真顔。

「観光客の精神ケア効率を向上させたの」


「余計なお世話だよ!!」

 タウロスが呆れ顔で言った。


 さらに。案内ロボたちが一斉に動き出す。

『疲レタラ休モウ!』

『無理ハ禁物!』


「なんか優しい……」

 観光客がちょっと癒され始める。

 タウロスが困惑する

「……あれ?」

「意外と苦情出てない?」


 その瞬間。

『追加機能起動』


 オリオンが固まる。

「え?」


『観光客ノ幸福度向上ノタメ』


 次の瞬間。

 ――パァン!!

 広場中へ、大量のシャボン玉噴射。


「うわぁぁ!?」

 観光客大喜び。


 ミラも大喜び。

「きれー!!」


 サファイアも吹き出した。

「オリオン兄さんがやったの?」


「いや知らない」


「知らないの!?」

 タウロス絶叫。


 さらに。

『踊リマショウ』

 案内アンドロイドたち、一斉ダンス開始。


 広場カオス化。


 その中心で、オリオンが真顔で呟く。

「……学習進化したな」


「感心してる場合じゃない!!」

 タウロスが突っ込む。


 ――数十分後

 なんとか停止。


 観光広場は落ち着きを取り戻した。


 しかし。

「楽しかったー!!」

 ミラは満面の笑み。


 サファイアも、珍しく声を出して笑っていた。


 タウロスが深いため息をつく。 「……なんで君たち、兄さんと相性良いんだろう」


 ミラが元気よく答える

「面白いから!」


 サファイアは静かに言った。 「オリオン兄さん、発想が普通じゃないからね」


 オリオンが笑う。

「褒めてる?」

 

 サファイアがニコッとして言う。

「たぶん」


 アリエスが頭を抱える。

「褒めちゃダメなのよ……」


 そのとき。

 展望窓の向こうを、一隻の大型宇宙船がゆっくり通過した。


 サファイアが静かに見上げる。

 遠くへ向かう船。

 帰ってくる船。

 サファイアは小さく呟いた。

「……いつか」

「わたし、ああいう船つくる」


 ミラが笑う。

「じゃあ私、乗る!」


 サファイアは続ける。

「危険な試験全部やってもらう」

 

 ミラが叫ぶ。

「えぇ!?」


 タウロスが苦笑する。

「その頃には、僕が安全基準で止める側かな……」


 オリオンは静かに笑った。


 未来はまだ遠い。

 でもきっと。この騒がしい家族は、これからも変わらず、誰かの夢を笑いながら支えていくのだろう。


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


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