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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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162/221

✪新しい妹と、問題児の兄

 ――タウロス(一〇歳)

◆アクア・ワン・アリエス邸

 朝食中。

「今日、新しい家族を紹介します」

 アリエス(三六)が真面目な顔でそう言った。


 タウロスは、ぴたりとスプーンを止める。


 向かいでは、 二〇歳になったオリオンが、何故かゴーグル姿でプリンを食べていた。


「新しい家族?」

 タウロスが首を傾げる。


 アリエスは静かに頷いた。

「ええ」


 するとオリオンが即答する。 「新型アンドロイド?」


「違う」


「生体アンドロイド?」


「違う」


「人工生命体?」


「だから違う!!」

アリエスが机を叩いた。


 その直後。

 リビング奥から、ふにゃあ……という小さな泣き声。


 タウロスが目を丸くする。

「……赤ちゃん?」


 アリエスは少しだけ緊張した顔で、二つのベビーベッドを運んできた。

 一人は、銀色に近い淡い髪。  もう一人は、金髪。

「この金髪の子は、サファイア・ミラノ・デズモンド」

「そして――もうひとりは、ミラ・オルセン」


 タウロスが目をぱちぱちさせる。


 オリオンは数秒沈黙したあと、  真顔で言った。

「母さん」


「なに」


「説明を要求します」


「でしょうね」


 ――数分後。

◆アリエス邸・リビング


 タウロスは妙に真面目な顔で座っていた。まるで軍事会議。


 対するアリエスは、ものすごく説明しづらそうだった。

「……まず、サファイアちゃんは」

「ルミナス号船長ダイヤさんとレオ兄さんの遺伝子から生まれた子よ」


 タウロスがゆっくり頷く。

「つまり、レオ伯父さんとダイヤさんの娘」


「そう」


「じゃあ僕の従妹?」


「そうなるわね」


 オリオンも小さく呟く。

「じゃあ、父さんが同じなら妹だ……」


 ――そして、次。


「ミラちゃんは」

「ライラ・オルセンさんとルミナス号のサイモンさんの遺伝子から――」


 オリオンが目を丸くする。

「待って情報量……ライラさんって僕の亡くなった母の妹の名前……」


 アリエスが頭を抱える。

「私も説明してて混乱してるわよ」


 タウロスは真剣に整理を始めた。

「つまり、ライラさんの遺伝子を使って」

「ミラちゃんが生まれた」


「ええ」


「でもライラさん本人ではない?」


 アリエスは補足する。

「そう、ライラのクローン申請は保留中で、いつになるかわからないからね」

「でも、ミラちゃんは一年後にはオルセン家へ」


 タウロスは深く頷いた。

「……ミラノ家って複雑だね」


「本当にね……」

 アリエスが遠い目になる。


 すると。

 オリオンが突然立ち上がった。

「よし」


「え?嫌な予感」

 タウロスが即座に言う。


 オリオンは真顔だった。

「妹たちのために、育児支援アンドロイドを作る」


「やめて」

 アリエスが苦笑い。


「今度は安全性重視」


「前回もそう言って、オリオンは研究所が感情崩壊させた」


「今回は違う」


「私、それ毎回聞いてるわよ」


 ――数時間後。

◆地下研究室

『育児補助型アンドロイド《ママサポート壱式》起動』


 銀色のアンドロイドが起動する。胸部には、なぜか大量の哺乳瓶。


 タウロスが嫌そうな顔をした。 「すでに見た目が怖いよ、兄さん」


 オリオンは自信満々。

「完璧だよ、タウロス」


 その瞬間。

『赤ちゃんヲ検知』

 アンドロイドの目が光る。

『最優先保護対象』


 次の瞬間。

 ――ガシャン!!!

 超高速でサファイアを抱き上げた。


「速い速い!!危ないよ!!」

 タウロスが叫ぶ。


『子守唄ヲ再生シマス』

 爆音。

『♪ねーんねーこー♪』


「音量がおかしい!!」

 アリエスも叫ぶ。


 さらに。

『衛生管理開始します』

 部屋中へ消毒液噴射。


「うわぁぁぁ!?」

 タウロスが逃げ回る。


 ミラが泣く。

 サファイアも泣く。


 アリエスが絶叫。

「オリオンーーーー!!」


 オリオンが端末を叩く。

「待って、停止コードが――」


『育児ハ戦争デス』


「誰の思想学習したのこれ!?」

 タウロスが真顔で言った。


「オリオン、早く止めなさい!!」

 アリエスが大声で一喝。


 オリオンが少し傷ついた顔になる。

 ――数分後。

 なんとか停止成功。


 リビングは消毒液まみれ。


 アリエスはソファで燃え尽きていた。

「……もう嫌だ……アンドロイド増やさないで……」


「そこ!?」

 オリオンが突っ込む。


 その横で、タウロスが静かにミラを抱っこしていた。

 慣れた感じの手つきだった。


 アリエスが少し驚く。

「上手ね」


 タウロスは照れもせず答える。

「僕は、宇宙局の最高司令官になるのが目標です」

「まず家庭内の混乱を制御できないと話になりません」


「一〇歳の発言じゃないわよ」

 アリエスは少し誇らしげな顔で言った。


 すると、タウロスの腕の中で、  ミラが小さく笑った。


 サファイアは、隣で静かに眠っている。


 オリオンがその光景を見て、  少しだけ笑った。

「……家族、増えたね」


 アリエスも、小さく頷く。

「ええ」


 失われたもの。戻らない人たち。

 それでも、ミラノ家の時間は、  少しずつ前へ進んでいた。


 ――後に。

 サファイア・ミラノ・デズモンドは、母ダイヤに匹敵すると言われる天才科学者となる。


 そしてタウロス・ミラノ・ゴールドバーグは、宇宙局史上最年少で最高司令官へ就任する。


 だが彼は後年、こう語っている。

「幼少期に兄の研究を止め続けた経験が、危機管理能力を育てた」

 ……と。


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