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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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✪天才助手と災害級発明

 ――オリオン(一七歳)

◆アクア・ワン・アリエス遺伝子研究所

 研究所の朝は早い。

 白衣姿の研究員たちが慌ただしく行き交う中、一人だけ空気の違う男がいた。

「……あの、アリエス博士」

「なんでまた煙出てるんですか?」

 新人研究員が青ざめながら言う。


 アリエス(三三)は、額を押さえたまま答えた。

「聞かないで」

「たぶんオリオン」


 その瞬間。

 ――ボンッ!!

 研究所の奥から、虹色の煙が噴き出した。


「ほらね」


 周囲の研究員たちが、一斉に遠い目になる。


 十七歳。オリオン・ミラノ。

 十四歳で博士号取得。

 論文は宇宙工学賞を史上最年少受賞。アンドロイド工学分野では、すでに複数の大学教授が議論相手を避けるレベル。


 ――だが同時に。

「また何か爆発したぞ!!」

「避難経路確認!!」

 “研究所を最も破壊する研究者”  としても有名だった。


◆研究室区画・第三開発室

 自動ドアが開く。

 中では、オリオンが真顔で端末を叩いていた。

 周囲には謎の機械。

 浮いている工具。

 逆立ちしている清掃ロボ。


 そして中央には――

 巨大な球体。


 アリエスが嫌な顔をする。

「……何それ」


 オリオンが振り返る。

「感情共有型会議支援AI」


 アリエスが即座に言う。

「嫌な予感しかしない」

 

 オリオンが真面目な顔で説明する。

「会議中、相手の感情を読み取って最適解を提案する」


「へぇ」

アリエスが少し感心した。

「珍しく真面目な研究ね」

 少し間を置き続ける。

「ちなみに感情同期機能付き」


 アリエスが眉をひそめる。

「なんで余計なことするの?」


 その瞬間だった。

 球体が突然光る。

『感情接続開始』


 アリエスの目が見開く。

「え?」


 研究室全体へ、謎の波動が広がった。


 一秒後。

「…………」

 研究員の男性が急に泣き始める。

「僕、本当は研究向いてないかも……」


 研究員女性が叫ぶ。

「違う! 君は頑張ってる!」


 別の研究員の女性が机を叩く。

「博士ぇぇぇ!! いつも怖かったですぅぅ!!」


「今それ言う!?」

 アリエスが振り向く。


 さらに。

 清掃ロボが急に震え始めた。

『孤独……』

『私ハ……モップ交換可能ナノニ……誰モ褒メテクレナイ……』


「ロボまで情緒壊れてる!!」

 オリオンが慌てて、端末を確認する。

「感情同期が予想以上に強い」


 アリエスが叫ぶ。

「止めなさい今すぐ!!」

「みんな落ち着いて!?」


 そこへ。

 七歳のタウロスが、静かに研究室へ入ってきた。

 祖父バルゴ譲りの整ったスーツ姿。小さなタブレットを抱え、  妙に落ち着いた顔をしている。

「母さん」

「宇宙議会ニュース見た?」


「今それどころじゃないの!」

 アリエスが答えた。


 タウロスは研究室を見回した。

 泣く研究員。

 哲学を始めるロボ。

 虹色の煙。

 ドヤ顔のオリオン。


「…………」

 七歳児とは思えない深いため息。

「兄さん」


「なんだよ?」


「どうして毎回、“人類には早すぎる”物を作るの?」

 研究員たちが静かに頷いた。


 オリオンは少し考える。

「好奇心……かな?」


 タウロスが静かに言う。

「もっと、反省して」


 その瞬間。

 ――バチィッ!!

 球体がスパークした。


『感情過負荷』

『暴走開始』


「待って、それ初めて聞くワードなんだけど!?」

アリエスが叫ぶ。


 研究室の照明が点滅。

 ロボたちが一斉に歌い始めた。

『悲シミノ〜♪』


「なんでミュージカル化したのよ!!」

 アリエスが突っ込む。


 タウロスが呟く。

「祖母の好きなミュージカルをするアンドロイド、前につくってたよね、兄さん」


 オリオンが青ざめる。

「同期ネットワーク広がってる」


「つまり!?」

 アリエスが青ざめる。


「研究所全部に感情感染する」


「最悪!!」


 ――数十分後

 なんとか停止成功。


 研究所は疲弊していた。

 泣き疲れた研究員。

 人生相談を始めるロボ。

 なぜか恋愛を語り出す警備AI。


 アリエスはソファへ崩れ落ちる。

「……もう嫌……」


 オリオンがコーヒーを差し出した。

「ごめん」


 アリエスはニコッと笑う。

「毎回ちゃんと謝るのよね、あなた……」


「悪気はないので……」


「そこが一番怖いのよ」


 タウロスは静かに紅茶を飲みながら言った。

「でも兄さん」

「今日は被害額、過去三位くらいだから成長してるよ」


「比較対象がおかしいのよ」

 アリエスが突っ込む。


 オリオンは少し笑った。


 昔なら、こんなふうに笑う余裕はなかった。

 両親を失って、世界から置いていかれた気がしていた頃。


 でも今は違う。

 怒鳴りながらも隣にいてくれる人がいる。

 呆れながらも見捨てない家族がいる。


 オリオンはふと、アリエスを見る。

「……母さん」


「なに?」


「いつも、ごめん」


 アリエスは少しだけ目を丸くしたあと、ふっと笑った。

「ほんとにそう思ってる?」


「五割くらい」


「少ないわね」


 研究室に笑い声が広がる。

 その横でタウロスが静かに呟いた。

「ミラノ家って、たぶん普通には生きられない血筋なんだろうね……」

 七歳とは思えない発言だった。


 ――後に。

 オリオン・ミラノは、やがて宇宙史にその名を刻む天才科学者となる。

 ――だが同時に。

 「彼の発明には、常に危険が付きまとう」

 そう恐れられる存在としても、研究者たちの間で伝説となっていくのだった。



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