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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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✪暴走する首チョンパ人形

 ――オリオン(一三)

◆テセウス第三宇宙ステーション・ミラノ家本宅

 通称=テセウス・スリー。


 政財界の重鎮たちも暮らす巨大宇宙ステーション。その上層区画に、ミラノ家本宅は存在していた。


 本日、ミラノ家では小規模な祝賀会が開かれている。

 主役は――  オリオンの祖父である政治家のバルゴ・ミラノ。

 宇宙議会における長年の功績が表彰されたのだ。


「おじいちゃん、おめでとう!」

 三歳になったタウロスが、満面の笑みで抱きつく。


 バルゴは目尻を下げた。

「はっはっは! ありがとう、タウロス!」

 政治家としては厳格で知られる男だが、孫にはとことん甘い。


 その隣では、妻のリブラ・ミラノが穏やかに微笑んでいた。

「アリエス、少し痩せたんじゃない?」

「ちゃんと寝てる?」


「寝れてないわね……」

 アリエス(二九)が遠い目をする。

 その視線の先。


 オリオンが、会場隅の高性能給仕ロボを真顔で観察していた。

「……叔母さん」

「この機体、旧世代AIベースだよね?」


「お願いだから今日は分解しないで」


「まだ何もしてない」


「“まだ”って言ったわね、今!」


 リブラが小さく笑う。

「レオそっくりね」


 その言葉に、一瞬だけオリオンの動きが止まった。

 だが、すぐにいつもの顔へ戻る。

「父さんなら、もう分解終わってると思う」


「そこ張り合わなくていいのよ」

 アリエスが頭を押さえる。


 そのときだった。

 タウロスが、オリオンの鞄をごそごそ漁り始めた。


「あっ」

 オリオンが止める前に――


 ぽん。

 例の首チョンパ人形が取り出される。

 タウロスの目が輝く。

「くびー!」


「待ってタウロス、それ改造中――」


 ――スポン!!!

 勢いよく首が発射された。


 真上へ。

 高速回転。

 そして。

 祝賀会用シャンデリアへ直撃。


 ――ガシャン!!!!

「…………」

 会場が静まり返る。


 高級ガラス片が、キラキラと降り注いだ。

 政治家たちが固まる。

 給仕ロボ停止。


 沈黙。


 そして。

 バルゴがゆっくり振り向く。

「……オリオン」


「はい」


「説明してくれるかな」


 オリオンは真顔で答えた。

「新型推進機能付き首チョンパシステムです」


「聞きたいのはそこじゃない」

 アリエスが即座にツッコむ。


 タウロスは床を叩いて大爆笑。

「もういっかーい!」


「ダメ!!」

 アリエスが即突っ込む。


 その横で、リブラが落ちた首を拾い上げ、しげしげと観察していた。

「……これ、妙に精巧ね」


 オリオンの目が少し輝く。

「磁気加速式」


「十三歳で何作ってるの?」

「父さんの設計メモ、少し参考にした」

 オリオンが満面の笑みで答えた。


 その言葉に、アリエスとリブラが一瞬だけ黙る。


 “レオの名前”


 今でも、この家では少し空気が変わる。


 だが次の瞬間。

 バルゴが深々とため息をついた。

「……アリエス」


「はい」


「この子、本当に大丈夫か?」


 アリエスも遠い目になる。

「最近、私もそれ考えてます」


 オリオンは反省した感じもなく言う。

「叔母さん失礼じゃない?」


「シャンデリア壊した子に言われたくない」


 するとタウロスが、また首チョンパ人形を持ち上げた。

「くび、とばす!」


「返せよ!!」

 オリオンが慌てて追いかける。


 三歳児、逃走。

 十三歳児、追跡。

 その後ろをアリエスが全力疾走。

 「二人とも待ちなさい!!」


 祝賀会場を走り回る三人。


 バルゴはその光景を見ながら、  静かに笑った。

「……賑やかになったな」

 リブラも優しく目を細める。

「ええ」

「レオがいた頃みたいね」


 一瞬だけ、  部屋の空気が柔らかくなる。


 そして。

 ――バゴォン!!!

 再び何かが爆発した。


 アリエスの絶叫が響く。

「オリオンーーーー!!!」


 後に彼は、宇宙最高峰のアンドロイド研究者となる。

 そして同時に。

 ミラノ家歴代でも屈指の問題児として、親族会議で語り継がれることになるのだった。


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