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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【閑話①】宝石(星)の系譜/アリエス子育て奮闘記

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157/222

✪オリオンの誕生日

 ――オリオン(一一歳)

◆アクア第一宇宙ステーション・アリエス邸

 通称=アクア・ワン


 八月十七日。

 オリオン・ミラノ、一一歳の誕生日。


 とはいえ――

「……ケーキ、大きすぎない?」

 テーブルを見たオリオンが真顔で言った。


 その中央には、どう見ても三人家族用ではない巨大ケーキが鎮座している。


 アリエス(二七)は腕を組み、満足げに頷いた。

「オリオンは、育ち盛りでしょう?」


「叔母さん、限度があるよ!」


 すると、その横で小さな手がぱちぱち叩かれる。

「けーき! けーきー!」

 一歳半過ぎのタウロスだった。

 すでに椅子によじ登ろうとしている。


「あっ、タウロス待ちなさい!」

 アリエスが慌てて抱き上げる。


 タウロスはじたばた暴れながら、全力主張。

「たべるー!!」


 オリオンはそれを見て、少しだけ吹き出した。


 ――去年までは、こんな日が来るなんて思っていなかった。


 父、レオは行方不明。

 母、アクアは暗殺。


 世界そのものが急に静かになったような一年だった。


 でも。

 アリエスは、ずっとオリオンの隣にいた。

 泣いても、黙っていても、無理に元気づけたりしなかった。


 ただ、毎日ちゃんとご飯を作って、「今日は何食べたい?」 と聞いてくれた。


 オリオンは、そのことをちゃんと覚えていた。

「……ありがと、叔母さん」

 ぽつりと呟く。


 アリエスは一瞬きょとんとして、すぐにふっと笑った。

「どういたしまして」


 その空気をぶち壊すように。

 ――ボゴンッ!!

 キッチン奥から爆発音。


 二人が同時に振り向く。

「…………」

「…………」


 アリエスが静かに言った。

「オリオン何かやった?」


「僕じゃない」

「叔母さん、今“絶対に僕だ”って顔してた」


 アリエスはため息をつく。


 するとタウロスが嬉しそうに拍手した。

「ばーん!」


 アリエスは頭を抱えながらキッチンへ向かった。


 数秒後。

「……オリオン?」


「はい」


「なんで冷蔵庫の中に試験管入ってるの?」


「温度管理」


「何の!?」


 オリオンが視線を逸らす。

「えっと……人工知能搭載型プリンの開発」


「やめなさい」


「まだ喋る段階まで行ってないよ!?」


「喋る予定だったの!?」

 アリエスの声が響く。


 その横で、タウロスが床をぺちぺち叩きながら笑っていた。

「ぷりん!たべるー!」


「食べれるかも怪しいから、ダメよ、タウロス!」


 数分後。

 なんとか爆発未遂騒動も収まり、三人は改めてテーブルを囲んでいた。


 ケーキのロウソクが灯る。

 アリエスが優しく言った。

「お誕生日おめでとう、オリオン」


 タウロスも真似する。

「おめめとー!」


 オリオンは少し照れ臭そうに笑った。

「……ありがと」

 ロウソクを吹き消す。

 小さな拍手。

 そのあと、プレゼントが渡された。

「はい、これ」

 アリエスから渡されたのは、小型電子工具セットだった。


 オリオンの目が、一瞬で輝く。

「うわ……!」


 アリエスは優しい目でオリオンを見つめ言う。

「アンドロイド整備用の初心者モデルよ」

「あなたのお父さんも、昔はよくアンドロイドを作ってたのよ」

「あなた、最近そっち興味あるでしょう?」


 オリオンは箱を抱えたまま固まった。

「……いいの?」


「もちろん」


 その瞬間だった。

 オリオンの脳内で、何かが弾けた。

「ありがとう叔母さん!!」


 数時間後――

◆ミラノ家・地下研究スペース

 机いっぱいに並ぶ工具。

 分解された家庭用掃除ロボ。

 謎のコード。

 火花。


 ――そして。

「……完成した」

 オリオンが不敵に笑う。


 首チョンパ人形が机の中央に置かれていた。

 だが、ただの玩具ではない。

 目が赤く光っている。

「新時代の首チョンパシステム……!」


 その瞬間。

 人形の首が、

 ――バゴォン!!!!とロケットみたいに発射された。

 

「うわぁぁぁ!?」

 オリオンが叫んだ。


 天井へ激突。

 照明破壊。

 部屋が暗転。

 煙。


 沈黙。

 地下へ降りてきたアリエスが、暗闇の中で静かに言った。

「……何してるの?」


 オリオンは煤だらけの顔で振り向く。

「……アンドロイド研究」


「絶対違う」


 その横でタウロスが大笑いしていた。

「くび、とんだー!!」


 ――後に、この少年は宇宙でも指折りのアンドロイド研究者となる。

 だが同時に。

 “危険人物寄りの天才”とも呼ばれることになるのだった。


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