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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【最終章】宝石(星)の系譜/五〇年後の約束

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☆祝杯の灯り

◆アリエス邸・リビング

 テーブルの上には料理と飲み物。

 窓の外には静かなコロニーの夜景が広がっている。


 ホロ画面ではまだニュースが流れていた。

 《カストル議員、暗殺教唆の容疑で拘束》

 その映像を背に、部屋の空気はどこか軽い。


 サイモンがグラスを掲げ、口元を歪める。

「――というわけで」

「作戦成功だ」


 ルビィが柔らかく笑みを浮かべる。

「アクアさんも無事、みんな無事、本当に良かった」


 レオは椅子に深く腰を預け、視線だけを上げる。

「ああ、最大の山は越えた」


 ダイヤが背もたれに体重を預け、楽しげに目を細める。

「それにしても、あのドローンのスナイパー。最後まで諦めなかったね」


 結依が静かにグラスを指先で回す。

「二人とも腕を撃たれても撃とうとしていた。根性は認める」


 サイモンが眉をひそめ、乾いた笑いを漏らす。

「いや、そこ褒めるところじゃない」


 部屋に笑いが広がる。

 そのとき。

 ソファに座っていたアクアが、わずかに視線を落とす。

「でも……本当に危なかったわ」


 アリエスの視線が鋭く刺さる。

「危なかったじゃないわよ」

「あなた、倒れたとき本気で死んだと思ったんだから」


 アクアが困ったように眉を寄せる。

「ごめんなさい」

 その肩に――

 白い影がふわりと降りる。

 フェザーだった。

 肩の上で小さく鳴く。

「きゅっ」


 アクアは指先でそっと頭を撫でる。

「あなたのおかげで助かった」

 フェザーが胸を張る。


 ダイヤが笑みをこぼす。

「いや、あれ完全にヒーローだったよ」


 ルビィが軽く頷く。

「弾道に飛び込むなんて、普通の生き物じゃしないよね」


 サイモンがフェザーを眺めながら口角を上げる。

「今度から作戦のコードネームは、フェザー作戦だな」


 結依が間を置かずに切り捨てる。

「却下」

 全員が笑った。


 アストラの電子音声が静かに響く。

『みなさんの脳波データを解析しました。現在、幸福度が通常の三倍です』


 レオがわずかに笑みを浮かべる。

「機械にまでバレてるぞ」


 アリエスがグラスを持ち上げる。

「じゃあ改めて」

 全員を見渡す。

「暗殺阻止と――」

「無事に帰ってきたことに」

 グラスが上がる。

「乾杯」

 軽い音が重なる。


 窓の外には、静かな星。


 ――二時間後。

 打ち上げはまだ続いている。

 リビングからは笑い声が絶えない。


 その外。

 テラスの手すりにもたれ、アクアは夜のコロニーを見ていた。

 光の海が静かに揺れている。


 背後で、ドアが開く音。

 レオだった。

 アクアは振り向かず、わずかに声を落とす。

「抜けてきたの?」


 レオが隣に立つ。

「主役がいないと宴会が締まらないぞ」


 アクアが小さく笑う。

「今日はアリエスが主役よ」


 短い沈黙。

 遠くでサイモンの笑い声が弾ける。


 レオの声が低く落ちる。

「……正直に言う」

「お前が倒れたとき」

「本気で終わったと思った」


 アクアは何も返さない。

 風が髪を揺らす。

 青みがかった銀髪が頬にかかる。

 そのまま、視線を落とす。

「……ごめんなさい」


 レオが首を振る。

「謝るな」

 わずかに口元を緩める。

「ただ、次はもう少し安全な作戦にしてくれ」


 アクアが微笑む。

「善処するわ」

 そのとき。

 白い影がふわりと飛び込む。

 フェザーが胸元に収まる。

 アクアは優しく撫でる。


 レオがそれを見て、視線を細める。

「……俺より頼りになるな」


 アクアが小さく笑う。

 その笑いに、レオもつられて息を漏らす。


 勢いよくテラスの扉が開く。

 アリエスが眉を吊り上げる。

「ちょっと二人とも!」

「勝手に抜けてないで戻ってきなさい!」


 その後ろからサイモンの声。

「ケーキ切るぞー!」


 ルビィが額に手を当てる。

「完全に打ち上げモードね」


 アクアがレオを見る。

「行きましょう」


「ああ」


 二人が戻ると、テーブルの前に全員が集まっていた。


 そのとき――

 廊下の奥から、小さな足音。

「ままー!」

 よちよちと走ってくる小さな影。

 タウロス。

 まだ一歳。

 アリエスへ一直線に駆け寄る。

 アリエスがしゃがみ、両腕を広げる。

「タウロス」

 そのまま抱きつく。

「ままー!」

 フェザーがふわりと降り、タウロスの頭にとまる。

 タウロスが笑い声を上げる。


 結依が視線を向ける。

「ほら見て」

「この子が将来、宇宙ステーションの最高司令官になるとはね」


 ダイヤが軽く笑う。

「今はただの甘えん坊だけどね」


 ルビィが静かに目を細める。

「子供の頃って、みんなこういうものでしょ」

 優しく頭を撫でる。

「未来の司令官、今日はパーティーだよ」


 タウロスが意味も分からず声を張る。

「ぱーてぃー!」

 全員が笑った。


 中央には大きなケーキ。

 サイモンがナイフを持ったまま入口を見る。


 戻ってきた二人を確認し、口元を緩める。

「主役の帰還だ!」


 アリエスが呆れたように目を細める。

「ちょっと待って、なんであなたが仕切ってるの?」


 サイモンが胸を張る。

「本日の医療責任者として、ケーキにメスを入れる」


 ダイヤが吹き出す。

「いや、ゴリにぃは医者役だっただけだからね」


 結依がケーキを見つめる。

「……それ、何人分?」


 サイモンがわざとらしく咳払いをする。

「一応」

「二〇人分」

 一瞬、空気が止まる。


 アリエスがゆっくり言葉を落とす。

「ここ、八人しかいないけど?」


 サイモンが真顔で返す。

「祝勝会は長期戦になると判断した」


 レオが視線を向ける。

「ただの食いしん坊だろ」


 アクアが小さく笑う。

 その肩でフェザーが鳴く。

「きゅっ」


 ダイヤが口元を緩める。

「フェザーも食べる気だよ」


 ルビィが息を吐きながら笑う。

「このチーム、本当に世界救ったの?」


 ――世界はまだ。

 アクアが死んだと信じている。

 だがその夜。


 アリエス邸には、久しぶりに、本物の笑い声が満ちていた。



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