★影たちの拒絶の合図
◆黒い惑星――港
五体――。
その数に、さすがの三人も一瞬だけ言葉を失った。
ダイヤが小さく息を吐く。
「……増えてるね」
サイモンが低く言う。
「さすがに五は想定外だな」
レオの視線はすでに全体を捉えていた。
「配置が違う。三と二……役割分担している可能性が高い」
ダイヤが一歩前に出る。
「とりあえず――話してみる」
「おーい!」
声を張る。
「敵じゃない! 交渉したい!」
沈黙。
五体は微動だにしない。
サイモンが小さく呟く。
「……ダメか」
次の瞬間。
動いた。
前に出たのは、長身の三体。
約一九〇センチの個体。
残る二体――一七〇センチほどの小柄な個体は、後方で様子を見ている。
レオが短く言う。
「来るぞ」
地面を蹴る音。
三対三。
戦闘が始まった。
序盤は、完全に一対一。
サイモンが正面の一体を掴み、力任せに投げ飛ばす。
「オラァッ!」
鈍い音と共に、黒い影が地面に叩きつけられる。
サイモンはすぐさま距離を詰め、拳を叩き込む。
「どうした!昨日より軽いぞ!」
一方、レオは流れるような動きで攻撃をいなしていた。
コンビネーションで間合いを崩し――左のハイキック。
――ガツンッ!!
クリーンヒット。
相手の頭部がわずかに揺れる。
「……入ったな」
レオは冷静に次の動きへ繋げる。
ダイヤは――
笑っていた。
「遅い遅い」
迫る攻撃を、紙一重でかわし続ける。
拳も、蹴りも、そして――尻尾の一撃も。
「それ、もう見た」
ダイヤは体をひねり、尻尾を回避。
そのまま足をかける。
相手の体勢が崩れた瞬間――
ダイヤは相手の力を利用して軽く投げる。
「はい、いってらっしゃい」
前回とは明らかに違う。
三人とも、優勢だった。
だが。
変化は、唐突に来た。
三体のヘルメット。
その“目”の部分が――
淡く光る。
「……来るぞ」
レオの声が低くなる。
次の瞬間。
動きが変わった。
速い。
重い。
そして――連携。
サイモンが腕で受ける。
「くっ……!」
衝撃が抜けない。
「おい、これ……!」
さらに追撃。
連続で押し込まれる。
「スピードもパワーも上がってやがる!」
レオが横から声を飛ばす。
「ガードするな!」
一拍。
「距離を取ってかわせ。ガードの上から削られる!」
サイモンが舌打ちする。
「ちっ、了解!」
ダイヤも押され始めていた。
だが――
まだ、余裕はある。
ギリギリでかわし続けながら、位置を調整する。
(……今)
背後に回る。
尻尾の付け根。
一瞬の隙。
――カチッ。
(よし!)
発信機を取り付けた。
その瞬間。
戦闘が、止まる。
後方にいた二体が、前に出てきた。
小柄な個体。
五体が、一列に並ぶ。
静寂。
そして――
「……レグラ、ラルシス……」
低く、機械のような声。
だが、意味は通じない。
ダイヤたちも顔を見合わせる。
「……今、喋ったよね?」
サイモンが眉をひそめる。
「けど、何言ってるかさっぱりだ」
ダイヤが手振りで示す。
「えっと、話したい、って――」
ジェスチャー混じりに話す。
だが、反応はない。
小柄な二体が、同時に動く。
ホルスターから少し変わった形の銃を抜く。
サイモンが身構える。
「来るぞ!」
だが――
銃口は、三人ではなかった。
海。
遠く、かなり離れた位置。
――パンッ。
乾いた音。
直後、
――ドンッ!!
爆発。
水柱が高く上がる。
サイモンが目を見開く。
「……は?」
一拍。
「こいつら……武器使わずに戦ってたのか?」
レオが静かに言う。
「……その可能性が高い」
サイモンが苦く笑う。
「まだ本気じゃねぇ、って言いたいわけか」
ダイヤも小さく頷く。
「たぶんね」
沈黙。
黒い個体の一体が、ゆっくりと手を上げる。
そして――
ルミナス号の方向を指す。
続けて、自分たちから離れるような動作。
明確なジェスチャー。
「……帰れ、ってこと?」
ダイヤが呟く。
そのとき。
背後の機械。
その影が、わずかに動いた。
――ギィ……。
隠し扉。
開く。
そこから、もう一体。
小柄な黒い個体が現れる。
レオが低く言う。
「……地下か」
一拍。
「基地……あるいはシェルター」
新たに現れた個体。
手にしているのは、小型の銃。
それを――
ダイヤたちの足元へ。
――パンッ!
弾が地面を弾く。
威嚇。
再び、同じ手を動かす。
そのジェスチャーは離れろ。帰れと言っているように。
三人は、顔を見合わせる。
サイモンが低く言う。
「……六対三は、さすがに分が悪いな」
レオも頷く。
「目的は達成している」
ダイヤが小さく息を吐く。
「……だね」
一拍。
「戻ろっか」
三人はゆっくりと後退する。
黒い個体たちは、追ってこない。
ただ、じっと見ているだけ。
三人はルミナス号へ。
静かに戻っていく。
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