★港跡と影
◆黒い惑星――ルミナス号船外
風の抜ける廃墟の中で、サイモンがふと口を開いた。
「なあ……最初に戦闘になったのってさ」
ダイヤとレオが視線を向ける。
「港にあった、あの機械に近づいたときだろ?」
一拍。
「あれ、たぶん重要なもんなんじゃねぇか?」
ダイヤが少し首を傾げる。
「重要なもの?」
サイモンが頷く。
「だからさ、あそこ行けば――向こうから出てくるんじゃねぇかって」
レオは少し考え込む。
静かに視線を落とし、状況を組み立てる。
「……可能性はある」
一拍。
「だが、それをやると“交渉”じゃない」
顔を上げる。
「また即戦闘になる」
ダイヤはあっさり言う。
「戦闘になったらなったでいいよ」
二人がわずかに目を向ける。
「発信機、つけられればそれでいいし」
サイモンが呆れたように笑う。
「簡単に言うなぁ……」
一拍置いて、少し真面目な声になる。
「あいつら、かなり強かったぞ」
レオを見る。
「お前だって、いいのもらってただろ」
レオは否定しない。
「……ああ」
短く答えてから続ける。
「だが、あれは俺も“様子見”だったし」
ダイヤが眉を上げる。
「でも、向こうも“様子見”だったはずだよ」
レオが頷く。
「おそらくな。全力ではなかった」
一瞬、静けさが落ちる。
ダイヤが、さらりと言った。
「じゃあさ」
二人を見る。
「隠してた戦闘スキル、どっちが上か――はっきりさせようか」
サイモンが吹き出す。
「そういう方向に行くか普通」
ダイヤは気にせず続ける。
「とりあえず行こうよ」
一拍。
「ルミナス号で。歩きはリスク高いし」
レオも同意する。
「ああ。サイレンが来たら動けなくなる」
サイモンが肩を鳴らす。
「決まりだな」
ルミナス号のエンジンが低く唸る。
灰色の地表を滑るように移動し、やがて――
かつて港だった場所へと辿り着く。
崩れた構造物。
錆びた残骸。
そして――あの機械。
少し距離を取った位置に、ルミナス号は静かに着陸した。
ハッチが開く。
三人は地面に降り立つ。
サイモンが小さく言う。
「……来てるな」
ダイヤが周囲に目を走らせる。
「うん、気配ある」
レオが低く呟く。
「監視されている」
一拍。
ダイヤが前を見る。
「あの機械……やっぱり気になるね」
サイモンが息を吐く。
「行くか」
レオが短く言う。
「慎重に――」
ダイヤが振り返る。
「よし、じゃあ」
小さく笑う。
「あれに近づいてみようか?」
三人はゆっくりと歩き出す。
足音だけが響く。
機械までの距離が縮まっていく。
そのとき、レオが低く言った。
「……いいか」
二人が足を緩める。
「今回は様子見はなしだ」
一拍。
「あいつら、本気で来る」
視線を前に固定したまま続ける。
「こっちも最初から本気で行く」
サイモンが頷く。
「了解」
ダイヤも静かに言う。
「発信機は、私が付けるから」
機械まで、あと数メートル。
その瞬間――
空気が変わった。
気配が、増える。
ダイヤが小さく呟く。
「……来た」
影が、現れる。
一つ。
……二つ。
さらに――
増える。
サイモンが低く言う。
「……おい」
レオの視線が鋭くなる。
全部で――
「え?……五人?」
ダイヤが思わず声を漏らした。
――目の前に立っていたのは、
五体の黒い影だった。




