↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章零】宝石(星)の伝説/黒い惑星と黒い兵士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
139/222

★サイレンの夜と群れる影



◆黒い惑星――港

 ――ウゥゥゥゥン……

 さっきまで交戦していた黒い三体は、音が鳴った瞬間、まるで命令を受けたかのように一斉に後退し、影の中へと消えていった。


 ダイヤが眉をひそめる。

「……なに、あれ」


 レオは空を見上げる。

「ただの警報じゃないな」


 サイモンが周囲を見回す。

「……なんか、嫌な感じするな」


 そのときだった。

 空が――落ちた。


「……は?」

 ダイヤが思わず声を漏らす。

 さっきまで薄暗かった空が、ほんの数秒で完全な闇へと変わる。

 夕焼けも、移り変わりもない。

 まるで、スイッチを切ったように。


「暗くなるの早すぎるだろ……」  サイモンが低く呟く。


 静寂。

 風の音すらない。

 その中で――

 カサッ。


 ダイヤの肩がピクリと揺れた。

「……今、なんか」

 カサカサカサ……。

 今度は、はっきり聞こえた。

 足元。

「……え」

 視線を落とした瞬間、

「――いやあああああっ!!」

 ダイヤが飛び退く。

 地面を、黒い小さな影が這っていた。

 いや、一つじゃない。

 無数。

 ダイヤが叫ぶ!

「なにこれ!!虫!!?」


 直径四、五〇センチほどの、丸く膨らんだ殻。節足が細かく蠢き、地面を覆うように広がっていく。

 ダンゴムシに似ているが――

 その動きは異様に速い。


「来るぞ!」

 レオが即座に構える。


 一斉に、跳ねた。

「ぎゃああああ無理無理無理無理!!」

 ダイヤが必死に後退しながら、紙一重で避ける。


 足元、横、背後。

 すべてから飛びかかってくる。


 レオが即座に言う。

「ダイヤ、落ち着け!数は多いが――」

 

 ダイヤは半泣きで叫ぶ。

「多いのが無理なの!!」


 サイモンが一体を踏み潰す。

 ――グシャッ。

「……中身、なんか嫌だなこれ」

 だが、潰しても止まらない。

 次から次へと湧いてくる。

「キリがねぇ!」


 レオが蹴り飛ばし、距離を取る。

「ここは離れるぞ!」


 三人は一斉に走り出す。

 虫の群れが、波のように追いかけてくる。


 少し距離が離れ安心したのもつかの間――

 それだけじゃ終わらなかった。


 ガルルル……

 低い唸り声。

「……今の、聞こえたか」


 サイモンが足を止めかける。

 次の瞬間。

 影の中から、飛び出した。

「っ!」


 黒い獣。

 犬のような体躯。だが目が、異様に光っている。

 さらに、もう一体。

 そして、また一体。


「……囲まれてるな」

 レオが低く言う。

 虫の群れの向こう側から、野犬型の生物がじわりと距離を詰めてくる。


「虫だけじゃねぇのかよ!」

 サイモンが舌打ちする。


 一体が飛びかかる。

 ――ドンッ!

 サイモンが正面から受け止め、そのまま投げ飛ばす。

「来いよ!」


 レオは横から回り込み、連撃。

 ――ドッ、ドッ、ドッ!

 動きは鋭いが、相手も連携してくる。

「くっ……数が多い!」


 ダイヤは後方でかわし続ける。

「前も後ろも来てる!!」


 虫と獣。

 二つの群れに、完全に挟まれていた。


「逃げ道は!?」

 サイモンが叫ぶ。


 レオが一瞬で周囲を見渡す。

「……あそこだ、海辺がある!」

 遠くに、黒い水面が広がっている。

「走れ!」


 三人は一気に突破をかける。

 野犬型を弾き飛ばし、虫の群れを蹴散らし――

 海辺へ飛び出した瞬間、三人は同時に息をついた。

「はぁっ……はぁっ……!」


 背後では、虫の群れが波のように押し寄せ、野犬型の生物たちも距離を詰めてくる。


「まだ来るのかよ!」

 サイモンが振り返りながら叫ぶ。


 レオが舌打ちする。

「完全に追跡モードだな……!」


 ダイヤは荒い呼吸のまま、海へ視線を向けた。

「と、とりあえず……あっち――」


 そのとき。

 水面が、わずかに揺れた。


「……ん?」

 サイモンの視線が止まる。


 次の瞬間。

 ――ズルッ。

 黒い何かが、水中からゆっくりと伸び上がった。


 ダイヤは目を丸くする。

「……は?」


 細長い触手。

 一本、二本――

 いや、違う。

 次々と、水面の下から現れる。

 ぬらりと光を反射しながら、空気を探るように揺れる。


 ダイヤの声が小さく漏れる。

「……え?、なに?」


 触手が地面へ落ちる。

 ――バンッ!!


「うおっ!?」

 サイモンが思わず後退する。

 さらに、もう一本。

 さらに、もう一本。

 海そのものが、“こちらへ手を伸ばしてくる”ようだった。


「ここもアウトだろ……!」

 レオが即座に判断する。


 だが、そのとき。

 背後で――変化が起きた。


 カサ……カサ……

 虫の群れが、ぴたりと動きを止める。


 野犬型の生物も、低く唸りながら後ずさる。


「……?」

 ダイヤが振り返る。

 さっきまで襲いかかってきていた群れが、一斉に、距離を取っていた。


「なんだ……?」

 サイモンが目を細める。


 野犬型の一体が、触手の方を見たまま、ゆっくりと後退する。

 そして――

 走った。

 一体、また一体と、闇の中へ逃げていく。


 虫の群れも、ざわざわと波打ちながら散開し、地面の影へと消えていく。


 残されたのは――三人だけ。

 そして、海から伸びる無数の触手。


 静寂。


 ダイヤが、ぽつりと呟く。

「……ねぇ」

 一拍。


「あれ……あいつら“逃げた”よね?」


 レオは触手から目を離さないまま答える。

「……ああ」

 低く、確信を込めて。

「“あれから逃げた”」


 サイモンが小さく笑う。

「つまり……」


 触手が、ゆっくりと空を探るように揺れる。


「こいつが、一番ヤバいってことか」

 ダイヤがじり、と一歩下がる。

「……やめよ」

 即答だった。

「これは、関わっちゃダメなやつ」


 レオも頷く。

「同感だ」


 海は、静かに揺れている。

 だがその中に、“何か”がいる。

 確実に。


 サイモンが後ろへ一歩下がる。 「じゃあ、どうする」


 レオが短く言う。

「陸に戻る」


 ダイヤが小さく息を吐く。

「……夜の方が危険とか、聞いてないんだけど」

 誰も、答えなかった。


 闇の中で。

 三人はようやく理解し始めていた。

 この星は――

 昼よりも、夜の方が“支配されている”。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。