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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【間章零】宝石(星)の伝説/黒い惑星と黒い兵士

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136/222

★黒き星の生物

 ルミナス号は、大気圏を静かに抜けた。

 視界が開けた瞬間――

 三人は、言葉を失った。


 そこに広がっていたのは、生命の気配よりも先に感じる“終わった世界”だった。


 ダイヤがぽつりと呟く。

「……なにこれ」


 地表には、無数の建造物の残骸。

 崩れ落ちたビル群、骨のように剥き出しの鉄骨、半ば地面に埋もれた巨大構造物。

 それらは、ただ壊れているのではない。

 “時間に削られた”痕跡だった。


 サイモンが低く言う。

「……文明、あったな」


 レオがモニターを操作する。

「かなり大規模だ。都市単位で存在していたはずだな」


 ダイヤが目を細める。

「でも……ずいぶん昔っぽい」


 ルミナス号はゆっくりと高度を下げる。

 陸地のほとんどは、灰色と黒。

 植物はわずかに存在するが、まばらで、どこか弱々しい。


 一方で、海は――

 不気味なほど穏やかだった。


 サイモンが前方を指差す。

「海、普通じゃね?」


 レオが頷く。

「水質、問題なし。むしろ異常に安定している」


 ダイヤが首をかしげる。

「陸は死んでて、海は生きてる……?」

 一瞬の沈黙。


 サイモンが軽く笑う。

「なんか、バランス悪い星だな」


 ダイヤがくすっと笑う。

「ほんとね」

 だが、その笑いは長くは続かなかった。


 着陸ポイントとして選ばれたのは、崩壊した都市の外縁部。

 かつて道路だったらしき平地が、かろうじて残っている。


 ルミナス号は静かに接地した。

 ハッチが開く。

 冷たい空気が、ゆっくりと流れ込んできた。


 ダイヤが一歩踏み出す。

「……思ったより寒くないね」


 サイモンが外に出ながら言う。

「三度ってとこか。まあ予想通りだな」


 レオは周囲を見渡す。

「視界良好……だが」


 一拍置く。

「……静かすぎる」


 風の音すら、ほとんどない。

 遠くに見える廃ビル群は、ただ沈黙していた。


 ダイヤが軽く手を広げる。

「誰もいませーん、って感じ」


 サイモンが笑う。

「観光地なら貸し切りだな」


 レオがぼそっと言う。

「観光地にしては物騒すぎる」


 三人は歩き出す。

 足元には、割れたガラスのようなものや、風化した金属片。

 かつての文明の欠片が、そこら中に散らばっている。


 ダイヤがしゃがみ込み、ひとつ拾い上げる。

「これ……機械の部品っぽいね」


 レオが近づく。

「高度な加工技術だ。かなり発展していた文明だな」


 サイモンが周囲を見回す。

「で、それが全部こうなった、と」


 ダイヤが小さく言う。

「戦争かな……」

 誰も答えなかった。


 そのとき。

 ――カラン。

 乾いた音が、どこかで鳴った。

 三人の動きが止まる。


 サイモンが眉をひそめる。

「……今の」


 レオが即座に反応する。

「右前方、建物内部」


 ダイヤが小声で言う。

「風じゃないよね」


 サイモンが首を振る。

「こんなとこで風鳴るかよ」


 静寂が戻る。

 だが――

 “何かいる”。

 それだけは、確実に伝わってくる。


 ダイヤが少しだけ笑う。

「……初接触、来る?」


 サイモンが軽く構える。

「歓迎はされなさそうだけどな」


 レオは低く言う。

「警戒を上げろ」


 三人はゆっくりと、その建物へ近づく。

 崩れかけた壁。

 暗く口を開けた入口。

 中は、光が届かず――黒い。


 ダイヤが一歩踏み出す。

 その瞬間。

 ――ガッ!!

 何かが、上から落ちてきた。


「っ!?」

 ダイヤがとっさに後ろへ飛ぶ。


 地面に着地した、それは――

 黒く、細長く、異様にしなやかな形。


 サイモンが叫ぶ。

「なんだこいつ!」


 それは二足のように見えたが、尾があるように見えた。

 表面は硬質なのに、生物のようにうねっている。

 “虫”にも、“獣”にも見えない。


 ただ一つだけ確かなのは――

 敵意。

 それは音もなく、再び跳ねた。


 レオが低く言う。

「来るぞ!」

 だが、その瞬間。

 影は、三人の目前でピタリと止まった。

 一拍。


 ゆっくりと――

 “こちらを観察するように”頭部らしき部分が傾く。


 ダイヤが小さく呟く。

「……見てる」


 サイモンが構えたまま言う。

「攻撃してこねぇな」


 レオが分析する。

「様子見か……」


 そのとき。

 影の背後、暗闇の奥に――

 “複数の気配”が、わずかに動いた。


 ダイヤの表情が変わる。

「……一匹じゃない」


 次の瞬間。

 影は、音もなく後退し――

 闇の中へと消えた。


 再び、静寂。

 サイモンがゆっくり息を吐く。

「……なんだよ今の」


 レオが短く言う。

「偵察だな」


 ダイヤが、廃墟の奥を見つめる。

「……歓迎されてないね」


 遠くで、何かが動く音がした。

 見えないが――確実に、増えている。


 この星は、死んでなどいない。

 ただ――

 “別の何か”に置き換わっているだけだった。



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