★黒き星の選択
一度、本編から離れます。
本編の続きは2026年6月19日朝6時にアップします。
この章は【第零章】パート②のEpisode94と95の間の物語です。前回、完結した時には作ってなかった物語【間章零】になります。
後に、【間章壱】以降に繋がる、プロローグ的な章です。
良かったら読んでください。
楽しんでもらえると嬉しいです。
この物語は、ルミナス号が三番目に探索した惑星での記録である。
だが、その詳細は――【第零章】では語られていない。
―――――――――――
◆ルミナス号船内
ルミナス号は、青黒い宇宙へと浮上していく。
船は雲を抜け、直前まで叩きつけていた酸性雨は、すでに視界の彼方だった。
コックピットに、静けさが戻る。
サイモンが大きく息を吐く。
「……はぁー……やっと出たな」
ダイヤが笑いながら言う。
「ほんとね。あの雨、ずっと浴びてたら服溶けてたかも」
レオはモニターから目を離さずに言う。
「冗談じゃ済まん。機体も長時間は危険だった」
サイモンが軽く笑う。
「しかし、暑いわ寒いわ雨は酸だわで、忙しい星だったな」
ダイヤが指を折りながら言う。
「昼は四五度、夜はマイナス四〇近く。温度差すごすぎでしょ」
サイモンが続ける。
「砂もな。あのサラサラ具合、普通じゃねぇ」
レオが補足する。
「粒子構造が特殊だったな。あと、例の鉱石」
ダイヤが少し嬉しそうに言う。
「あれね、黄色く光るやつ。あれ絶対エネルギー系でしょ」
サイモンがニヤッとする。
「リトス銀河に持って帰ったら怒られたりしてな。“勝手に触るな”って」
レオが淡々と返す。
「すでに触っている」
三人は小さく笑った。
その空気のまま、ダイヤが操作パネルに触れる。
ホログラムが展開され、六つの惑星が宙に並ぶ。
色も形も、まるで違う六つの世界。
レオが腕を組みながら言う。
「……次は俺の番だな」
ダイヤがすぐに返す。
「え?」
レオは当然のように言う。
「順番だろ」
ダイヤが首をかしげる。
「そんな順番なんてないよ?」
一拍。
ニコッと笑って続ける。
「私が船長だから、私が決める」
サイモンが吹き出す。
「出たよ、船長権限」
レオが珍しく食い下がる。
「待て。酸性雨の惑星はサイモンが選んだ」
一拍置いて、続ける。
「恐竜の惑星はダイヤだっただろ」
ダイヤがさらっと言う。
「うん、だから次も私でいいよね?」
レオが眉をひそめる。
「よくない」
ダイヤは即答する。
「いいの」
サイモンが楽しそうに二人を見る。
「お、珍しくレオが粘ってる」
レオは低く言う。
「バランスの問題だ」
ダイヤは少し考えるふりをして――
すぐに指を伸ばした。
「じゃあこれ」
選ばれたのは――
ひときわ黒く、光を吸い込むような惑星だった。
サイモンが目を細める。
「……なんでそれ?」
ダイヤが楽しそうに言う。
「なんか面白そうだから」
レオが即座に返す。
「却下だ」
ダイヤが言う。
「決定です」
レオが短く息を吐く。
「……はぁ」
サイモンが笑う。
「決まりだな」
ルミナス号は進路を変更する。
黒い惑星へ向かって。
やがて、その姿が視界に入る。
光を反射しない、暗い星。
まるで、そこだけ宇宙が欠けているようだった。
ダイヤが少し身を乗り出す。
「……ほんとに黒いね」
レオが操作しながら言う。
「反射率が異常に低い。地表の材質が特殊だな」
サイモンがぼそっと言う。
「なんか……静かすぎないか」
そのとき、スパコンが解析を開始する。
《大気成分解析中……》
《酸素濃度:低。長時間活動には補助装置を推奨》
《重力:地球基準の〇.九三》
《予測地表温度:〇〜五度》
ダイヤが頷く。
「寒い系ね」
サイモンが言う。
「さっきの星の寒暖差よりはいい」
レオが淡々と続ける。
「生体反応……あり」
一瞬、空気が変わる。
ダイヤが小さく言う。
「……いるんだ」
サイモンがニヤッとする。
「いいねぇ」
レオが短くまとめる。
「大気圏突入準備に入る」
ルミナス号は、静かに高度を下げていく。
黒い惑星が、ゆっくりと迫る。
その奥に何があるのか――
まだ、誰も知らない。




