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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

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☆泣き崩れる世界の裏側で

 時間は少し戻り。

 ――二人の拘束の数分前。


 空は、雲ひとつなかった。


 ノアの零間二射……フェザーが弾道を防いだ直後。


 アクアは倒れ、胸元が――赤く、弾ける。

 血が飛ぶ。

 白い衣装が一瞬で染まる。


 群衆の悲鳴。

 誰かが叫ぶ。

「アクアさんが撃たれた!」


 アクアの体が崩れ落ちる。

 フェザーが鳴き声を上げる。

 混乱。

 パニック。

 人波が崩れる。


 医療班突入

「道を空けろ!」

 担架が滑り込む。

 白衣姿のサイモンとアリエス。

完璧な手際。

「意識なし! 出血多量!」

 サイモンはわざと聞こえるように叫ぶ。


 アリエスが胸元を押さえる。

 手袋が、真っ赤に染まる。

 血糊。

 事前に仕込んだ衝撃反応パックが、倒れたのと同時に作動した。


 サイモンが小声で。

「呼吸、安定。パルス正常」

「声、抑えて」

 アリエスが低く返す。


 担架が持ち上げられる。

 アクアはぐったりと動かない。

 完璧な“死にかけ”の演技。


 群衆は泣き崩れる者、怒号。

 通信網が一斉に騒ぎ出す。

 速報が走る。

 《アクア博士、狙撃され重体》

 空気が凍る。世界が揺れる。


 アンビュランス内部――

 ドアが閉まる。

 音が遮断される。


 数秒の沈黙。


 すこしして。

 アクアが、薄く目を開ける。

「……成功?」


 サイモンがニヤリとした。

「大成功だ。今ごろ黒幕は祝杯だろうな」


 アリエスが小さく言う。

「本当に……心臓止まるかと思った」

「そして、二度とこんな作戦やらないで」


 アクアはアリエスを見つめて小さく頷いた。


 アリエスはモニターを確認しながら言う。

「通信が跳ね上がってるわ。内部リーク網が動いてる」


 フェザーが胸元に戻り、小さく鳴く。

 外ではサイレン。

 車内では静かな笑み。


 そのときだった。

 アストラから、通信が入る。

『報告』

『狙撃犯二名――エリオ、ノア。両名の拘束を確認しました』


 短い報告。だが、その一言だけで空気が変わる。


 サイモンが深く息を吐いた。

「……よし」


 アリエスもようやく肩の力を抜く。

「最悪のケースは回避ね」

 フェザーが「きゅ」と小さく鳴き、アクアの胸元へ丸く収まる。


 続けて、通信回線が次々に開いた。

『アクアさん!』

最初に飛び込んできたのは、結依の声だった。

『怪我は!?本当に撃たれてない!?』


 その後ろで、ルビィの声も重なる。

『フェザーは!?』

『ちゃんと無事ですか!?』


 サイモンが笑いながら返す。

「全員無傷だ」

「フェザーも英雄ポイント爆上がり中」


「きゅ!」

 フェザーがタイミングよく鳴く。


『よかったぁ……』

 結依が安堵したように息を漏らす。


 次に、レオの低い声。

『アクア』

 一瞬だけ、通信の空気が静まる。

『……本当に無事なんだな?』


 アクアは小さく笑った。

「ええ、ちゃんと生きてるわ」

 その返答のあと、通信越しにわずかな沈黙。


 レオが、ゆっくり息を吐く音だけが聞こえた。

『……そうか』

 短い言葉。けれど、その一言に詰まった感情は、誰にでも伝わった。


 そこへ、ダイヤの明るい声が割り込む。

『いやー、でも完璧だったねぇ!』

『世界中、完全に騙されてるよ今!』


 ルビィも頷くように続ける。

『ニュースも全部、“アクア博士死亡”で統一されてます』

『内部通信もかなり動揺してます』


 アリエスの目が鋭くなる。

「来るわね」

「黒幕側、絶対に動く」


 アストラの声が淡々と響く。

『現在、複数の秘匿回線に異常アクセスを確認』

『カストル系統ネットワーク、活動活発化』


 サイモンがニヤリと笑う。

「釣れたな」


 アクアも静かに頷いた。

「ええ、ここからが、本番よ」


 通信の向こうで、ダイヤが楽しそうに笑う。

『じゃ、こっちも合流するよ』

『派手な“お返し”の準備しないとね』


 アストラが続ける。

『中央放送網への侵入準備、完了してます』

『電波ジャック、いつでも可能です』


 結依も気合いを入れるように言った。

『世界中に流しましょう』


 ルビィも力強く言った。

『“本当の敵”を』


 アリエスが端末を操作しながら、小さく笑う。

「史上最悪のフェイクニュースからの、史上最大の暴露放送ね」


 アンビュランスは静かに進む。

 世界は今、“アクアは撃たれた”と信じている。


 だがその裏側では――  反撃の準備が、着々と進んでいた。


 そして、それは――

 黒幕を引きずり出すための、最高の餌。



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