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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

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☆その日が来る前に

◆極秘区画・作戦ブリーフィングルーム

 ホログラムに、複数のルートが表示されている。

 資金。通信。人員配置。

 すべてが繋がっていた。


 ダイヤが顎に手を当て、画面を睨む。

「これ、もう潰せるよね?」


 アクアが首を横に振る。

「いいえ、まだよ」


 ダイヤが眉をひそめる。

「なんで?」


 アリエスが静かに補足する。

「今動けば、カストルは潜る」

「証拠も人も、全部切り捨てるわ」


 レオが短く言葉を落とす。

「本体を逃がすな」

 その一言で、空気が締まる。


 ダイヤが小さく息を吐く。

「なるほどね」

「全部まとめて焼く気か」


 アクアが淡く笑う。

「ええ」

「だから今は、“見逃す”」


 サイバー空間上で、いくつものラインが光る。


 アストラの声が淡々と響く。

『現在、カストル組織の全通信を監視下に置いています』

『資金移動経路、武装搬送ルート、関係者位置情報――』

『すべてリアルタイムで追跡可能です』


 ダイヤが苦笑する。

「それもう勝ってない?」


 アストラはわずかな間を置いて応じる。

『いいえ』

『現時点では、証拠の確定および同時拘束条件が未達成です』


 レオが画面を見据える。

「暗殺当日までに揃える」


 アリエスが頷く。

「ええ、その日に全部終わらせる」

 ダイヤが首を軽く鳴らす。

「つまりそれまでは我慢かな?」


 アクアが静かに言う。

「狩りと同じよ」

「追い詰めてから仕留める」

 その言葉に、わずかな緊張が走る。


 アストラが続ける。

『提案』

『サイバー上に逃走経路の一部を意図的に残します』

『対象に“逃げられる”と誤認させることで、指揮系統の露出確率が上昇します』


 ダイヤが笑う。

「性格悪い作戦だね」


 アリエスが淡く笑う。

「効率的と言いなさい」


 レオが短く言う。

「いい」

「それでいく」


 アクアが全員を見渡す。

「暗殺当日」

「守るべきものと、終わらせるべきもの」

 一拍。


「全部、同時にやりましょう」


 誰も異論はなかった。

 ホログラムの光が静かに揺れる。


 決戦は、すぐそこまで来ていた。


 ――暗殺日前夜。

◆アリエス邸・リビング

 その空気の中で、不意にアクアが結依へ視線を向けた。

「……結依さん」


 結依が顔を上げる。

「はい?」


 アクアは少しだけ迷うように微笑した。

「あなたを見てると、不思議な感じがするわ」

「ライラに少し似てるの」

「目とか、考え込む時の癖とか」


 結依は驚いたように瞬きをする。

「……そう、なんですか?」


「ええ」

 アクアは静かに頷いた。

「だからかもしれないわね」

「初めて会った気がしないの」

 その優しい声に、結依の胸が少しだけ熱くなる。


 少し迷ってから、結依は小さく息を吸った。

「……私、正直に言っていいですか」


 レオがわずかに視線を向ける。


 結依は照れ隠しみたいに笑った。

「私、レオさんのこと……ちょっと好きでした」

 一瞬、空気が止まる。


 サイモンが小さく反応する。

「おっ」


 ルビィが目を丸くする。


 結依は慌てて続けた。

「いや、今も尊敬してますけど!」

「その……ルミナス号を救助してから、一緒に戦ったり、助けてもらったりして」

「気づいたら、すごく頼りにしてて……」


 レオは困ったように眉を寄せる。

「……おい」


 結依は苦笑した。

「でも、アクアさん見て分かりました」

 ゆっくり、アクアを見る。

「私じゃ、敵わないなって」


 静かな沈黙。


 だが次の瞬間、アクアがふっと笑った。

「ふふっ」

 どこか嬉しそうだった。

「安心したわ」


 結依がきょとんとする。 「え?」


 アクアはレオをちらりと見る。 「この人、昔から無愛想で不器用だから」

「ちゃんと誰かに好かれてるんだなって分かって」


「……おい」

 レオが低く返すが、アクアは気にしない。


 そして、少しだけ優しい目で結依を見る。

「でもね、結依さん」

「恋って、勝ち負けじゃないのよ」

「誰かを好きになった時間は、それだけでちゃんと意味があるわ」


 結依は、少し驚いたようにアクアを見る。


 アクアは穏やかに微笑していた。責めるような色も、嫉妬もない。ただ、長い時間を生きてきた人の優しさだけがあった。

「それに」

 アクアはちらりとレオを見る。 「この人を好きになるの、結構大変だったでしょ?」


 レオが眉をひそめる。

「……どういう意味だ」


 ダイヤが吹き出した。

「いや、めちゃくちゃ分かる」

「必要以上に喋らんし」

「説明しないし」


 サイモンも肩を揺らして笑う。

「基本、言葉足りねぇしな」

「急に一人で抱え込むし」


 レオが低く返す。

「お前ら、好き勝手言ってないか?」


 ルビィは思わず笑ってしまう。

「……ちょっと、分かります」


 レオがさらに渋い顔になる。


 アクアはそんなレオを見ながら、どこか楽しそうに目を細めた。

「でもね、不器用だけど」

「ちゃんと大事な人は守る人なの」


 その言葉に、レオは何も返さなかった。ただ、ほんのわずかに視線を逸らす。


 結依はその横顔を見て、小さく笑う。

「……はい」

「それは、知ってます」

 その声には、もう切なさだけじゃなく、  どこか温かな納得が混ざっていた。


 ――そして、暗殺の日を迎える。


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