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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

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☆ふたりの容疑者

 ――数日後

◆リトス宇宙ステーション・下層居住区

 人通りの多い通路を、ルビィとサイモンは並んで歩いていた。

 服装は地味だが、二人とも目だけは鋭い。


 サイモンが視線だけで周囲をなぞり、小さく口を動かす。

「で、候補はこの二人か」


 ルビィが端末を軽く操作し、淡い光を指先に映した。

「うん。アストラが絞った二名。年齢、経歴、射撃記録……どっちも“おかしい”」


 サイモンが口元だけで笑う。

「“上手すぎる”って意味でな」


 《暗殺実行犯・候補①

 エリオ・ヴァンス(二八)

 元・外縁宙域警備隊。

 長距離射撃専門。

 【零間二射照準訓練】の修了者》


 《暗殺実行犯・候補②

 ノア・カルディナ(三〇)

 民間警備会社出身。

 宇宙防衛射撃大会・優勝。

 【連続即応射撃】異常な成功率》


 ルビィが画面から目を離さず呟く。

「どっちも“二射”をやってる」


 サイモンが顎をわずかに引く。

「“頭と胸”を、ほぼ同時に。これ、教わらなきゃ無理だ」


 ルビィが少しだけ間を置く。

「結依のお父さんと、同じだよね」


 サイモンは無言で頷いた。


 清水獠。

 未来で、軍と警察、そしてコロニー防衛を統合した射撃教官。

 結依が子供の頃、遊び半分で“基礎”だけ教えられた技術。


 サイモンが低く言葉を落とす。

「個人の発想じゃない。流派だ。教えた人間がいる」

 そのとき。

「――あれ?」

 不意に、聞き覚えのある声。


 二人が同時に足を止める。

 前方、露店の並ぶ通路の角。

 小さな影が、首チョンパ人形を抱えて立っていた。

「……オリオン?」

 サイモンが反射的に口を開きかけ、すぐに手で押さえる。

 そのまま素早く柱の影へ滑り込んだ。

「俺は顔が割れてる。隠れる」


 ルビィだけが、何事もない歩調で近づいた。

 ――オリオン・ミラノ(幼少期)

 子供のオリオンは、床に座り込んでいた。

 左手には、例の人形。

 まだ新しさを残したそれは、首がくるりと回る、少し不気味な作り。

 だが、彼はそれを宝物のように抱えている。


 ルビィが静かにしゃがみ込む。

「それ、首チョンパ人形?」


 オリオンが胸を張るように頷いた。

「うん。パパがくれた」


 ルビィの口元が柔らぐ。

「面白いね。ちゃんと考えてる顔してる」


 オリオンの目がきらりと光る。

「ほんと?」


 ルビィが少しだけ視線を落とす。

「ねえ。もしさ。それが動いたら、どうなると思う?」


 オリオンは人形を見つめ、しばらく考え込んだ。

 やがて、ぽつりと答える。

「……友だち、かな」


 ルビィは静かに笑った。

「友だち、いいね。君が大人になったら、もっと大きな首チョンパ人形がいるかもね」


 オリオンがニコッと笑う。

「いいね、大きい首チョンパ人形、欲しいな」


 ルビィはそっと頭を撫でる。

「きっと手にはいるよ、じゃあ、またね…」


 オリオンが嬉しそうに手を振る。

「うん、またね」


 離れていく背中を見送りながら、ルビィはほんの一瞬だけ目を細めた。


 その後、二人は再び通路を進む。

 目標はエリオ・ヴァンス。

 アクアの情報では、彼はこのコロニーに昨日、偽IDで午後に入管手続きを済ませている。

 暗殺に向け、現場の高所を下見している可能性が高い。


 ルビィが足を止める。

「……あれ、エリオじゃない?」


 サイモンが視線を滑らせ、わずかに頷く。


 二人は柱や看板の陰へと身を寄せた。

 エリオは広場近くの路地を抜け、古い観測ビルへ向かう。

 手元には小型端末。周囲を警戒しながら、屋上構造と射線を確認している。


 そのとき。

 ルビィが息を呑む。

「……あれ?」


 視界の先に、もう一人。

 ノア・カルディナだった。


 ノアもまた慎重に周囲を見回している。一瞬、エリオと視線が交差する。

 軽く頷き合う二人。


 ルビィが端末越しに囁く。

「……やっぱり知り合いみたい。明らかに連携してる」


 サイモンの視線が鋭くなる。

「共犯ってことか?」


 二人は路地や建物の影を伝い、観測ビル屋上まで追跡する。


 ルビィは息を殺しながら記録を取り、サイモンは動線を頭に刻む。


 サイモンが低く言う。

「共犯だって、事前に分かって良かったな」


 ルビィが小さく頷く。

「一人だと思ってたら、守りがもっと大変になるところだった」


 エリオとノアは高所を巡り、広場と周囲のビルを見渡す。

 ノアは端末で構造をスキャンし、エリオは距離と角度を測る。

 小型の光学スコープケースから、ライフルを取り出す動き。


 サイモンが息を吐く。

「ほら……これだ」


 ルビィも画面を確認する。

「二人とも暗殺用の装備持ってる。共犯は間違いない」


 その後も二人は位置を変え、観測ビルや周囲の屋上を入念に下見する。


 ルビィとサイモンは、その一連の動きを録画し、証拠として確保した。


 サイモンが端末を閉じる。

「これで二人の共犯関係も証明できる」

 録画完了。


 二人は静かにその場を離れ、証拠を安全圏へ送信する。


 サイモンが歩きながら言う。

「よし、あとは実行日まで暗殺阻止をどうするかだな」


 ルビィも頷き、次の作戦の準備を心に決めた。


 ――これで、暗殺実行犯二人の共犯証拠が手に入った。

 アクアの暗殺阻止に向けて、一歩前進。


◆リトス宇宙ステーション・アリエスの研究室

 ルビィとサイモンが、追跡結果を報告する。


 サイモンが端末を掲げる。

「アクアさん暗殺実行犯、まさかの二人だった」


 ルビィが静かに補足する。

「歴史上は一人だと思われてたけど、二人でした。これでアクアさんを守るハードルがさらに上がります」


 そのとき。

 ドアが開き、結依がフェザーを連れて入ってくる。

 結依の顔がぱっと明るくなる。

「凄いよ、フェザー!」


 フェザーがぴょこんと座り、胸を張る。

 結依がしゃがみ込み、撫でながら続ける。

「零間二射のガードも完璧!ほんとに凄いペットだわ。ルナストン市民が番兵やボディガードにするの、納得だよ」


 ルビィが少し表情を引き締める。

「でも……実行犯、二人の可能性もあるの」


 サイモンが腕を組む。

「零間二射の技術を持つスナイパーが二人……アクアさんを守るの、本当に大変になった」


 レオが即座に口を開く。

「何のための二人だ?予備なのか?」


 結依が眉を寄せる。

「それとも一人一射ずつ撃つの?二人で四射?」


 アストラが静かに答える。

『歴史上では、同じ入射角から二射撃ちされています。なので、実行犯は一人と考えられます』


 結依の表情がわずかに緩む。


 だが、アストラは続ける。

『もう一人は、邪魔が入った場合の予備でしょう。しかし、当日は二人を同時にマークする必要があります』


 ルビィが小さく息を吐く。

「なるほど……スナイパーが二人……」


 フェザーが小さく鼻を鳴らし、皆を見上げる。

 その仕草に、空気がほんの少し和らいだ。


 結依が端末を握り直す。

「よし、二人を同時に監視しながら、アクアさんを安全に守る。準備は万端にしておきましょう」


 レオも静かに頷いた。


 アクアを守る作戦は、さらに輪郭を増していく。


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