↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/222

☆ライラ・オルセン



 再会の余韻は、まだ部屋の中に残っていた。

 笑い声が混じり始めた空間には、さっきまでの張り詰めた空気はもうなかった。


◆アリエス邸

 そんな中、アクアの視線がルビィと結依へ向き、ふっと笑う。

「へえ」

「レオとダイヤとサイモンの孫ね〜」


 ルビィが少し照れくさそうに笑い、結依は困ったように頭を下げた。


 アクアは楽しそうに続ける。 「未来のアリエス、三人の遺伝子使って、そんな事するんだね」


 アリエスが複雑そうな顔になる。

「そうらしいのよ」

「もう、この事実を聞いてしまった以上、ルビィさんと結依さんが生まれてくるために、私は三人の遺伝子使って子供を作らないといけないのかしら……」


 サイモンが吹き出した。

「責任重大すぎるだろ、それ」


 そのときだった。

 アクアがふと気になったように結依を見る。


「結依さんの母型の祖母は、誰なの?」


 結依は少し困ったように視線を落とした。

「母方の祖父母は、私が生まれる前に亡くなったって聞いてて……」

「名前も聞かされてなくて、誰なのか分からないんです」


 その瞬間。

 アストラが静かに口を開いた。

『結依さんの祖母のデータはあります』

 全員の視線が、一斉にアストラへ向く。

 アストラは淡々と続けた。

『清水結依さんの祖母は――ライラ・オルセンさんです』

 一拍。


『アクア・オルセン・ミラノさん。あなたの妹です』

 空気が、止まった。


 アクアの目が大きく見開かれる。

「……え?」


 隣でアリエスも固まっていた。

「ライラ……?」


 レオがゆっくり顔を上げる。

「待て……ライラって、あのライラか?」


 ダイヤが眉をひそめる。

「え?」

「アクアさんに妹なんていた?」


 サイモンも困惑した顔をする。 「いや、聞いたことねぇぞ……?」


 アクアはしばらく何も言えなかった。

 やがて、小さく息を吸う。

「……ライラは」

 声が、少し震える。

「私の妹よ」

 静かな沈黙。


 アクアは遠い記憶を見るように目を伏せた。

「……亡くなったの」

「当時はまだ一三歳だった」


 結依が息を呑む。


 アクアは続ける。

「ウイルス性の病気だったわ」

「治療法の確立が、間に合わなかった」


 その場の空気が、一気に重くなる。

 さっきまで笑っていたサイモンも、もう何も言わない。


 アクアは静かに目を閉じた。

「……でもね」

小さく笑う。

「ライラは、本当にすごい子だった」

 ゆっくり、結依を見る。

「私より頭が良かった」

「発想力も柔軟で、吸収も早くて……将来有望だった」

 そして、ダイヤへ視線を向ける。

「たぶん、天才性だけなら――ダイヤと同じくらいあったわ」


 ダイヤが珍しく真顔になる。

「……そんな子だったんだ」


 アクアは静かに頷いた。

「ええ」

「だから、私は諦めきれなかった」

 その言葉に、全員がアクアを見る。

 アクアは、少しだけ迷うようにしてから続けた。

「ライラが亡くなる前に……遺伝子データを採取して、保存してるの」

 一瞬、空気が揺れた。


 アリエスが目を見開く。

「まさか……オルセン家の保存庫に?」


「ええ」

 アクアが静かに頷く。


 結依の視線が揺れる。

「じゃあ……」

「私の中に、ライラさんの……」


 アストラが静かに答える。

『はい』

『ライラ・オルセンさんと、サイモンさんの遺伝子情報を基に誕生したのが――ミラ・オルセンさんです』

 一瞬、空気が静まり返る。


 アストラは淡々と続けた。

『記録によれば、ミラ・オルセンさんは、その後オルセン家で育てられています』

『後に宇宙飛行士になり、三一歳で引退。ノア第七宇宙ステーションで探索士官学校の校長をやっています』


 結依の瞳が、わずかに揺れる。

「……ミラ・シミズ」

 小さく呟く。

「それ、私のお母さんの名前です」

 その声は、驚きと戸惑いが混ざっていた。


 今まで“知らなかった家族”が、  点と点を繋ぐように、少しずつ形になっていく。


『結依さんには、ライラ・オルセンさん由来の遺伝子情報が確認されています』


 結依は言葉を失った。

 自分の知らない祖母。

 会ったこともない少女。

 一三歳で亡くなった、未来を夢見た天才。

 その存在が、今になって自分へ。


 アクアはそんな結依を見つめながら、静かに微笑んだ。

「……そっか」

「ライラ、ちゃんと未来に繋がってたんだね」


 その声は、どこか寂しく――それでも、少しだけ救われたように聞こえた。


 アクアは、どこか懐かしむようにダイヤを見る。

「……だからだったのかもしれないわね」


 ダイヤが首を傾げる。

「ん?」


 アクアは小さく笑った。

「初めてダイヤに会った頃から、あなた見てると、時々ライラを思い出してたの」

「発想の飛び方とか、急にとんでもない答えを出すところとか」 「周りが“無理”って言ってる中で、一人だけ平然と別解を持ってくるところとかね」


 ダイヤが少し照れたように眉をしかめる。

「……褒めてる?」


「ええ、かなり」

 アクアは静かに頷いた。

「だから私は、若かったあなたをルミナス号の船長候補に推したのよ」


 一瞬、空気が止まる。

 レオがわずかに目を細める。

「……あの推薦、お前だったのか」


 サイモンも驚いたように声を上げた。

「は? ちょっと待て。あれ、上層部の判断じゃなかったのか?」


 アクアが続ける。

「もちろん正式決定は上層部。でも、かなり強く推薦したわ」 「“年齢で判断するな”って、だいぶ揉めたもの」


 ダイヤがぽかんとした顔になる。

「……初耳なんだけど」


 アクアは少し悪戯っぽく笑う。

「言ってなかったもの」

「でもね、ダイヤ」

「あなた、ライラと同じ目をしてるのよ」

 静かな声だった。

「“まだ誰も見たことない景色を見に行く人”の目」


 ダイヤは、一瞬だけ言葉を失う。


 サイモンが小さく笑った。

「なるほどなぁ」


 レオも静かに頷く。

「ライラ……確かにダイヤみたいだったな」


 ダイヤは照れ隠しみたいに頭をかき、そっぽを向く。

「やめてよ、なんか恥ずかしいじゃん……」

(ライラ・オルセン……会ってみたかったな)


 しばらく、静かな空気が流れる。


 だが、その空気に飲まれるようなアクアではなかった。

 ふっと息を吐き、気持ちを切り替えるように顔を上げる。

そして――視線が、ゆっくりとアストラへ向いた。

「……で」

 アクアが眉をひそめる。

「そのアンドロイド、アストラ君だっけ?、凄くない?」

 やはり、一番気になるのはそこらしい。


 未来人だのタイムマシーンだのも十分異常だが、目の前にいるアストラは、それ以上に“常識の外側”にいた。

 アストラは静かに視線を返す。  その無機質な瞳に、淡い光が揺れた。


 アクアが、静かにアストラを見つめる。

「ORX−七八……」

 小さく、どこか懐かしそうに笑った。

「あなた、“七八”なのね」

「……なんだか、運命を感じるわ」


 レオが腕を組みながら頷く。 「だろ?」

「俺も、ORX−七八に初めて会った時、不思議とそう感じた」


 結依が首を傾げる。

「七八って……何か意味があるんですか?」


 アクアは少しだけ目を細める。 「私が小さい頃ね」

「オルセン家に、一体の執事アンドロイドがいたの」

 一拍。


「その子の型番が――MRX−七八だった」


 結依が目を丸くする。 「えっ……偶然?」


 アクアは静かに首を横へ振った。

「分からないわ」

「でも、あの子は……ずっと私たち姉妹のそばにいた」

「私たち姉妹もだけど、レオも一緒になって、七八って呼んでたわ」

 その声は、どこか遠い記憶を撫でるように優しかった。


 結依が納得した顔で言う。

「だから、レオさんはアストラを七八って呼ぶんですね」


 すると、ダイヤが軽く笑いながら口を開いた。

「私たちが乗ってきたルミナール号、きっとアクアなら興味あると思うよ」


 その一言で、空気が少し変わる。

 科学者としてのアクアの目が、明らかに変化した。

「……詳しく聞かせて」


 そこから話題は、一気に科学方面へ傾いていった。

 未来技術。設計思想。現代理論との差異。新型ワープ機関。自己修復素材。量子同期制御。そして、アストラの演算構造。


 アクアとアリエスの目の色が、みるみる変わっていく。

「待って、その推進理論どうなってるの!?」

「エネルギー損失の計算、おかしくない!?」


『理論上は正常です』


「正常じゃないから驚いてるのよ!」


 さっきまでの重苦しい空気が嘘みたいに、部屋に熱が戻っていく。


 サイモンが呆れたように笑った。

「始まったな、科学オタク姉妹」


 レオも小さく息を吐く。

「止まらなくなるぞ、こいつらは」

 実際、その通りだった。


 アクアはすでに椅子から立ち上がり、ホログラムへ身を乗り出している。

アリエスも横から次々と質問を投げていた。


 そんな二人を見ながら、ルビィが小さく苦笑し――軽く咳払いをする。


「……そろそろ、本題に入りましょう」

 一瞬、科学者姉妹の動きが止まる。


 レオが静かに頷いた。

「ああ」

 その一言で、空気が切り替わる。


 全員が自然とテーブルの周囲へ集まり、中央に立つアストラへ視線を向けた。

 淡いホログラム光が、部屋を照らす。

 未来を変えるための――  本当の作戦会議が、始まろうとしていた。


 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


 この物語が少しでも気に入っていただけましたら、ページ下部の星【☆☆☆☆☆】をタップして、あなたの評価を教えてください!


「全然面白くなかった」なら星1つ【★☆☆☆☆】、


「続きが気になる!」なら星5つ【★★★★★】。

 どんな評価でも、反応をいただけることが一番の喜びです。

これからも彼らの物語を届けていきますので、**【ブックマーク】**での応援もぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。