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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

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☆ふたりの子供(前編)



◆ルミナール艦内・メインラウンジ

警告音が止んだあとも、ブリッジには重苦しい静寂が残っていた。

 赤い警告灯だけが、ゆっくりと艦内を照らしている。


 アストラは、はっきりと告げた。

『第一項。ルミナール号には、タイムマシーン機能が存在します』

 空気が、完全に止まった。


『設計者は、サファイア博士。この機能は、正式な設計図には一切記載されていません』


 結依の声が抜ける。

「……は?」


 アストラはそのまま続ける。

『第二項。ルミナール号は、アデーロス第三銀河への最初のワープ時、タイムマシーン機能が自動起動するよう設定されていました』


 レオの視線が鋭くなる。

「……自動だと?」

 わずかに低く言葉を落とす。

「タイムマシーンは再突入時に、衝撃があるだろう。気が付かなかったのか?」


 ルビィが息を詰まらせる。

「あっ……確かに、かなりの衝撃が……」


 結依がすぐに続く。

「第三型のワープは、私たちは初めてだったので、そういうものだと……」


 アストラが告げる。

『時間設定は、五〇年前の過去』

 その数字に、全員の呼吸が止まる。

『正確には。ルミナス号が出航した六〇日後』


 ダイヤが一歩だけ後ずさる。

「……待って……」


 レオが低く差し込む。

「何が目的だ?」


 アストラは、ためらいなく続けた。

『目的は明確です。五〇年前、行方不明となり、死亡認定となったルミナス号の三名を救出すること』

『作戦名、タイムジャンプ・レスキューミッション』


 視線が、ルミナス号の三人へ向く。

『オリオン博士の父――レオ・ミラノ』

 レオの目が見開かれる。


『サファイア博士の母――ダイヤ・デズモンド』

 ダイヤは言葉を失った。


『そして――』

 アストラが最後の事実を告げる。

『サファイア博士は、ダイヤさんの細胞から生成された人工子宮により誕生しました』

『父親の遺伝情報は――』

『レオ・ミラノ』


 完全な沈黙。


 その中で、フェザーが「きゅ」と小さく鳴いた。

 誰も動かない。

 ただ、その声だけが空間に残る。


『つまり、サファイア博士は、ダイヤさんとレオさんの娘です』


 ルビィの呼吸が止まる。


『加えて、オリオン博士とサファイア博士は、兄妹になります』


 結依が、かすれた声を絞る。

「……じゃあ」


 アストラはさらに告げる。

『清水結依さん。あなたの母方の祖父は、サイモン・マクレーンさんです』


 サイモンが思わず手をつく。

「え?……俺が?」


『記録上、間違いありません』

 アストラが全員を見渡す。

『結論を述べます。ルミナール号のクルーの人選は、偶然ではありません』


『レオさんとダイヤさんの孫――ルビィさん』

『サイモンさんの孫――結依さん』

『レオさんの息子オリオン博士により設計された私、アンドロイド――アストラ』

『レオさんとダイヤさんの娘――サファイア博士により作られたルミナール号』

『すべては、ルミナス号を救うために、計画されました』


 理解が追いつかない。


 ルビィが震える声で漏らす。

「じゃあ、私たちは……」


 アストラが静かに答える。

『はい、ルミナス号が未来に来たのではありません』

『ルミナール号が、五〇年前の過去へ来たのです』


 世界が反転する。

 誰も言葉を発せなかった。


 重苦しい沈黙の中。

 ダイヤが、ゆっくりと息を吐いた。

「……タイムマシーンだったのか」

 少しだけ目を伏せる。

「私は、第二世代型ワープの事故だと思っていた」


 アストラの声が静かに響く。

『申し訳ありません』

『ルミナール号が、ここアデーロス第三銀河へ到達した際、“外部空間に微弱な位相ズレ”を検知していました』

『ですが、数値は誤差範囲内と判断。異常判定には至りませんでした』


 結依がすぐに首を振る。

「アストラは悪くないよ」

 苦笑のように息を漏らす。

「私たちだって、全然気づかなかったし……」


 ルビィも小さく頷いた。

「うん……。第三型ワープ特有の揺れだって、みんな思ってた」


 ダイヤは静かにモニターへ視線を向ける。そこには、オリオンとサファイアが残した記録データが映っていた。

「……かなり念入りに仕込まれた計画だね」

 感嘆にも似た声だった。

「ルビィと結依だけじゃない。アンドロイドのアストラまで騙すなんて……」

 一瞬だけ、口元がわずかに緩む。

「オリオンも、サファイアも。本当に、とんでもない兄妹だわ」


 レオは腕を組んだまま、黙り込んでいる。


 ――五〇年前に消えたはずのルミナス号。

 それを救うために作られた船と選ばれた乗組員。

 すべてが、最初から決められていた。


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