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宝石(星)の系譜 〜50年前に遭難した伝説の探査船を救助したら、17歳の祖母が船長として居座っていた件。未知の惑星を巡る異世界航海録~【御礼15万PV達成】【平日月曜の朝6時更新】  作者: 準
【第八章】宝石(星)の系譜/因果の果て

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☆決断




◆ジュラシックアース宙域

 巨大な惑星を背に、ルミナール号はゆっくりと減速し、ルミナス号の隣へと滑り込むように宙停した。

 二隻の船は、ほぼ並走する形で静止する。長い時間を隔ててきた二つの船。ルミナール号により自動で連結される。


 ルミナール号のブリッジに集まった六人の間に、短い沈黙が落ちていた。


 結依が腕を組み直し、迷いを振り切るように顔を上げる。

「……正直に言うわ」

 視線を前に据えたまま続ける。

「ここまで来て、あと二つ残ってる惑星を調べずに帰るのは、やっぱりもったいない」


 ダイヤがゆっくりと頷き、静かに言葉を重ねる。

「うん、少なくとも、あと二つの惑星を探索してからでも遅くはない。私もそう思う」


 その流れを断ち切るように、レオがわずかに首を振る。

 視線はスクリーンの彼方、遠い銀河を見据えている。

「リトス銀河に帰還するべき、七八のデータで空白の五〇年は把握はしているが、実際に戻る事が優先と考える」


 サイモンは視線を床へ落としたまま、指先をわずかに握りしめる。

 声は低く、押し殺すようだった。

「……五〇年未来に来たって事実を、まだ受け止めきれてない。向こうに戻れば、全部突きつけられる」

 その言葉が、空気をさらに重くする。

 誰もすぐに続けられない。


 沈黙が続く中、ルビィがゆっくりと一歩前に出た。

 静かだが、揺るがない声で切り出す。

「ひとつ、はっきりさせます」

 全員の視線が集まる。


 ルビィは一人ひとりを見渡し、言葉を置くように続ける。

「探索を続けるにしても、リトス銀河に戻るにしても、別行動はしません。六人一緒です」

 きっぱりとした断言だった。

 そして、更に続ける。

「“救援された”三人――あなたたちは、救助された時点で、私の指揮下です」

 一瞬、空気が止まる。


 ルビィは背筋を伸ばし、まっすぐに前を見据える。

「私は、この船――ルミナール号の船長です」

 足元で、白い毛玉がぴたりと動きを止めた。

 フェザーはルビィを見上げるように一度だけ瞬きし、そのまま静かに座り込む。


 その宣言に、誰も異を唱えなかった。


 ダイヤが一歩だけ距離を詰め、静かに問いかける。

「それで……ルビィ船長は、どちらを選ぶ?」


 ルビィはわずかに目を伏せる。

 短い沈黙のあと、顔を上げた。

「私は、二人のルミナールのクルーの結依とアストラを信頼しています」

 結依へ視線を向ける。

「結依は、探索を続けたい」

 そして、ルミナス号の三人へ視線を移す。

「私は……リトス銀河に帰りたい。本部の判断を聞く義務がある……でも何より、母サファイアにおばあちゃんを会わせたい」

 小さく息を吸う。

「意見は割れました。だから、三人目の意見で決めます」


 最後に、ルビィはアストラを見据える。

「アストラ。あなたは、どうするべきだと思いますか?」


 アストラは動かない。

 だが、その視線だけがわずかに揺れる。

 数秒の沈黙。


『私の結論を述べます』

 淡々とした声が、空間に落ちる。

『この状況において、最優先すべきは不確定要素の解消です』

 五人へ視線を巡らせる。


『五〇年の時間差は、単なる理論問題ではありません』

『社会構造、勢力図、技術倫理――いずれも、未知のまま行動を続けるリスクが高すぎます』

 一拍。


『予定していた二つの未探索惑星は、待てます。しかし、私たちの不確定要素の解消の方が急務と判断します』

 アストラは、ルビィへ視線を向ける。

『よって、最適解は――』

 わずかな間。

『リトス銀河の宇宙ステーションへ帰還することです』

 そして、ほんの少しだけ間を空ける。

『……船長の判断と一致しています』


 静寂。


 やがてルビィが、深く頷く。

 その動きには、迷いはなかった。

「決まりですね」

 ルビィは正面を見据える。


「ルミナール号、進路をリトス銀河へ。ルミナス号と連携し、帰還準備に入ります」

 その声が、確定した未来を告げる。

 レオは目を細め、次に待つ現実を思い描く。

 サイモンは一度だけ目を閉じ、ゆっくりと開いた。

 結依は小さく肩を回し、気持ちを切り替える。

 アストラは静かにログを更新する。

 ルビィは、まっすぐ前を見続けた。

 そして、ダイヤは静かに息を吐き、遠くの星を見つめる。


 アデーロス第三銀河から、リトス銀河へ。

 ダイヤはルナストン市で、ルミナール式ワープの制御理論をルミナス号に組み込んでいた。


 ワープをする為に、二隻は連結を解除する。

 ダイヤだけがルミナス号へ戻り、単艦でワープを敢行した。


 光が引き裂かれ、空間の感覚が一瞬、失われる。


 次の瞬間。

 そこは、見慣れた星配置。

 リトス銀河。


 ほどなくして、ルミナール号と再合流し、二隻は静かに連結された。


◆ルミナール艦内・メインラウンジ

 エアロックが開き、ダイヤが戻ってくる。

「ただいま」

 それだけだった。


 ルビィが小さく息を吐く。

「……おかえりなさい」


 結依がぱっと表情を明るくする。

「無事でよかった。単体ワープとか、正直ヒヤヒヤでしたよ」


 ダイヤが軽く口元を緩める。

「私もヒヤヒヤだったよ」

 その足元で、白い毛玉がころりと転がった。

「きゅ」フェザーは体を揺らしながら、ダイヤのブーツに頭をこすりつけた。


 ダイヤが小さく声を漏らす。

「おっと」

 しゃがみ込み、そのまま抱き上げる。

「お前も心配してくれたの?」

 フェザーは返事の代わりに、満足そうに見つめている。


 そのとき、アストラが淡々と報告する。

『リトス銀河座標、完全一致。通信帯域、回復を確認しました』


 ルビィが一度だけ頷く。

「じゃあ……」

 すぐに端末へ向き直る。

「本部に帰還連絡を入れます」

 ルビィは通信のスイッチを入れる。

「こちらルミナール号、応答……」


 そのとき。

 ダイヤの腕の中で、フェザーがぴくりと耳を動かした。

「……?」

 小さく鳴き、落ち着きなく身をよじる。まるで、何かを感じ取ったかのように。


 次の瞬間――警告音が鳴り響いた。

 ピピピッ、と鋭い電子音が艦内を貫く。


 結依が反射的に声を張る。

「え?ちょ、何!?敵!?」


 レオの視線が鋭くなる。

「重力異常か?」


 そのすべてを、アストラの声が断ち切った。

『違います』

 警告音が止まる。


 アストラが、ゆっくりと顔を上げる。

『これは……私自身に対する、最優先レベルの内部警告です』

 一同が固まる。

『未開封データの解凍条件が、今、満たされました』


 ダイヤがわずかに眉を寄せる。

「未開封……?」


 アストラは間を置かずに続ける。

『出航前、オリオン博士よりインストールされた超極秘データです』

『開封条件はひとつ。ルミナール号が、アデーロス第三銀河からリトス銀河へ帰還した時』


 沈黙。


 ルビィが喉を鳴らす。

「……内容は?」


 ――六人は、失われた五〇年の真実と向き合うため、リトス銀河へ向かった。

 鋭い警告音が鳴り響き、静かに動き始めていた運命が、ついに次の段階へ踏み込もうとしていた。



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