表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショートショート  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/25

『優しい虐殺』

「さて、人間どもを殺戮しよう」


 地球に到着して早々、リーダーはそう言った。


 船内にいた仲間たちは、誰一人として異を唱えなかった。

 

 ただ、重苦しい沈黙のまま頷く。


「今回は、この薬をこの星に散布する」


 リーダーは懐から、小指ほどの透明な小瓶を取り出した。

 

 内部で、淡い青色の液体が静かに揺れている。


 それを見た瞬間、仲間たちの顔色が変わった。


「そ、それは……!」

 

「あまりにも残酷です!」

 

「分かっている」


 リーダーは目を伏せた。


「しかし、急がねばならん任務だ。致し方ない」


 やがて宇宙船は地球上空を旋回し、薬剤を散布した。


 青い惑星を覆うように、目に見えない霧が広がっていく。


 任務を終えた船は、そのまま静かに宇宙の彼方へ去っていった。


 帰路の船内で、僕は隣にいた先輩へ尋ねた。


「あの薬って、どんな効果があるんですか?」


 先輩は少しだけ沈黙してから答えた。


「人間を、強制的に五百年ほどしか生きられない身体にする薬だ」


 僕は息を呑んだ。


「ご、五百年……!?」

 

「そんな……」


 信じられなかった。


 僕たちヨクイキール人の平均寿命は、およそ五億年。

 

 五百年など、ヨクイキール蝉と大差ない。


 生まれ。老い。死ぬ。


 そのすべてが、一瞬で終わってしまう。


 窓の向こうには、青く輝く地球が見えていた。


 あの星ではこれから、愛する者との別れが日常になり、命は簡単に終わり、文明ですら、瞬きほどの時間で移り変わっていくのだろう。


 僕は、自分たちの残虐さに吐き気を覚えた。


 

■おわり■

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ