表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショートショート  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/25

『無色の詩人』

 駅前の喫茶店で、たまたま隣に座った男は、なんというか変な人だった。


 ポンチョのような服を着て、髪は長く、コーヒーを飲むたびに遠くを見ている。


 失恋でもしたのかなと思った。


 オレがスマホで求人を見ながら「うわ、時給900円かぁ……」と唸っていると、その男がぽつりと言った。


「私は今まで、無色の世界を歩んできました」


 オレは思わず聞き返した。


「無職だったんスか?」


 男はゆっくり頷いた。


「はい。それはとても虚無なもので、先の見えない世界でした」


「うわぁ……」


 なんか重かった。


「どうすればいいのか、途方に暮れる毎日でした」


「キツいっスねぇ……。労働とかなかったんスか?」


「確かにロード(道)はありました」


 男は窓の外を見た。


「しかし私は、誰かの作ったロードを歩むつもりはありませんでした」


「うわ、カッケぇ……」


 オレは素直に感心した。


「オレなんか、だいたい時給で決めてるっスわ」


 すると男は、少しだけ微笑んだ。


「持久(力)で自分のロードを選ぶことは、恥ずかしいことではありません」


「優しい……」


「私は幼い頃から持久(力)がありませんでしたから、選ぶことすらできませんでした」


 オレは顔をしかめた。


「え、ヤバ。超ブラックじゃないスか」


 男は静かに首を振る。


「他人には暗く見えたでしょう。しかし私にとっては、まだそこは無色の世界だったのです」


「はぇ〜……」


 よく分かんなかったけど、とりあえず大変だったんだろうなと思った。


 男は続ける。


「そんな私でも、努力を続けた結果、みるみる持久(力)がついていったのです」


 オレは思わず笑顔になった。


「無職じゃなくなったんスね!」


「はい」


 男は頷いた。


「今では、自分のロードを歩いています」


「すげぇ。何の仕事してるんスか?」


 男はコーヒーカップを置いて、静かに答えた。


「詩人です」


「えっ」


 オレは少し考えた。


「……まだ無職じゃないスか?」



■おわり■

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ