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『完璧な備え』
災害の多いJ国に生まれたせいで、私は未来に対して異様なまでの不安を抱えていた。
だから働いた。ひたすら働いた。
すべては「その日」に備えるために。
大地震が来ても崩れない家を建てた。
大嵐にも、大洪水にも耐える構造にした。
窓は割れず、基礎は沈まず、停電しても三重の予備発電機が動く。
防災グッズは網羅した。保存食は数年分。
水は濾過装置付きで、外に出る必要はない。
仕事はテレワークに切り替えた。
配達はドローンが空から届ける。
玄関を開ける理由は、もうない。
運動不足対策にトレーニングルームを作り、孤独対策にSNSで理解ある恋人もできた。
世界がどうなろうと、ここは揺るがない。
――完璧だ。
私は満足して、恋人と少し高級な缶詰を一つ開けた。
◆
20xx年8月8日 午後8時頃。
都内の住宅から119番通報。男女二人が救急搬送された。
原因は食中毒とみられる。
◆
20xx年8月8日 午後9時頃。
歴史的大災害がJ国を襲った。
■おわり■




