『神様はパン派』
中学生の頃、社会科の先生がこんな話をした。
神様は人間を作るとき、パン生地をこねて窯で焼いたのだという。
最初はうまくいかず、生焼けになった。
白いままの人たち。
次は火を入れすぎた。
黒く焼けた人たち。
そして三度目で、ちょうどいい焼き色になった。
黄色い肌の人たち。
神様はそこで、ようやく成功だと言った——そんな話だった。
教室のあちこちで笑いが起き、誰かが言った。
「じゃあ俺らが成功例ってことか」
先生は少しだけ間を置き、「まあ、そういう“たとえ話”もある」とだけ答えた。
◆
今、私は焼きおにぎりを食べている。
表面はこんがりと焦げ、醤油の香ばしい匂いがする。
私は、このくらいしっかり焼けているほうが好きだ。
ふと、あの話を思い出す。
「なんでパンなんだろう?」
ここでは米が主食だ。
手の中にあるのも、こんがり焼けたおにぎりだ。
もし神様がこの国で人を作ったなら、材料はきっと米だったはずだ。
「共食いになるからか?」
……少し考えて、やめた。
私は焼きおにぎりの、いちばんよく焦げた部分をかじった。
■おわり■
【あとがき】
これは、私が中学生の頃、授業で聞いた話をもとにしています。
なお、本作に人種差別の意図は一切ありません。あくまで当時の記憶と、それに対する個人的な違和感を描いたものです。




