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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第二章 新しき仲間達
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第60話 怪物の目


「狩り、すごく楽しいのです~♪」


 ネルがぴょんぴょん跳ねながら、小型のモンスターを狩っていく。


 僕らは今、獣人国ティーアの近辺で、比較的弱いモンスターの狩りをしている。

 目が見えるようになったネルが、広い所で思う存分に動きたいというので、みんなでピクニックがてら、軽くモンスターハンティングをしてるところだ。

 ティーアにももちろん冒険者ギルドはあるんだけど、今回は特に依頼を受けずに、自由に行動をしている。


 ネルは盲目だったので、刀を使った近接戦闘よりも中距離での投刃を得意としていて、その研ぎ澄まされた感覚から放つ技術は、恐らく世界でもトップクラスじゃないかと思うほどだ。

 さすがに投刃の威力は弱いのだけれど、針の穴を通すようなコントロールで、次々にモンスターを仕留めていく。聴覚と嗅覚だけでなく、視覚も使えるようになったことにより、さらに精密さが上がったんだと思う。


 目が見えるようになってからは、近接戦闘も問題無くなったようで、器用に刀も振り回している。まあとにかくネルは素早いのだ。

 さすがくノ一といったところで、気配を消しながら近づいたり、ちょこまか動いては忍法も使ったりと、なかなか頼もしい力を持っている。戦闘モードを使ってないリンよりも、ひょっとしたらネルの方が強いかも知れない。



「ネルってば凄いのね……驚いちゃった。投げナイフがこんなに強いなんて思わなかったもの。弓よりも速く、剣よりも遠くから攻撃出来るから、もし戦うことになったらなかなか近づけないわ」

「そうね。もちろんネルの技術が凄いからなんだけど、隙の少ない戦術よね。攻撃力がどうしても低くなってしまうのが弱点ってところかしら」

「その幼い外見からは想像付かないほど、熟達した技術ですよね。因みに、ネルさんはレベルいくつなんですか?」

「ネルはレベル40なのです」

「ええっ、そうなの? その歳でもうあたし達と変わらないのね」

「逆にネルが驚きなのです。ティーアでは、ネルと同年代で皆さんのように強い人は居ないのです」


 うーん、同年代で比べてもなあ……明らかに歳が違うからね。

 でも思った通り、やはりネルは強かった。ネルくらいの歳でレベル40は、相当凄いのではなかろうか。

 さすが獣人国の王女といったところなのかも知れない。



 ◇◇◇



「お弁当食べるのですー!」


 持ってきたお弁当にネルが囓り付いた。昨夜同様、凄い大食らいで、どんどんお弁当を平らげていく。

 僕たちは普段、クエストで出掛ける時は、がっつり昼食を取ることはあまりない。昼食を抜いて活動するか、食べるとしても簡単な携帯食のみといった感じだ。


 今日はピクニックも兼ねているので、豪華なお弁当を持ってきていた。まあ作ったのは、王様に仕えている料理人さんなんだけどね。

 僕らは誰もお弁当作れないからねえ……この問題をどう解消していくのかが、僕らの今後の課題です。



「そういえば、ヒロ様は戦わないのですね。どうしてなのですか?」


 みんなで戦闘しているのに、僕だけ戦わないことにネルは疑問を持ったようだ。


「はは、不思議かい? 実は僕は戦うのが苦手なんだ」

「そうなのですか? ヒロ様からは、とても大きな力を感じるのですが?」


 ネルは鋭いな。獣人族にまだ強く残っている野生の本能なのかな?

 フィーリア王女も僕の力を感じ取っていたみたいだし、この世界の人は、鋭い感覚の人が多いのかも知れない。


「もしヒロ様が危なくなったら、ネルが守ってあげるのです。目も見えるようになったし、そう簡単にはネルは負けないですよ!」

「ありがとう。でも危ないことはしなくていいからね」

「大丈夫なのです。ヒロ様に恩返しするのです」


 そう言って、ネルは僕に抱きついてきた。

 ネルの性格的なものなのか、それとも獣人族特有なのか、スキンシップに対してとても積極的だ。無条件で懐いてくる仔猫のように、僕に身体をすり寄せてくる。

 もちろん、警戒心はちゃんとあるんだろうけど、一度信頼すると大胆になるようだ。正直、ちょっと照れちゃうんだけどね。



「リン、いいのアレ? ヒロ君取られちゃうかもよ」

「こ、こんな小さな子なら、ライバルにはならないでしょ。裏忍法教えて貰ったし、これくらいは許すわ」

「あら、リンってば使う気満々なのね。ひょっとして、夜のことに少し自信が出来ちゃったのかしら?」

「や、やめてよ、そういうコト言うの! 恥ずかしいでしょ!」

「別に恥ずかしくないですよリンさん。私たちの歳なら、こういうの普通ですよ。ソロルさんには先を越されちゃったし、今度みんなで勇木君に裏忍法やってみますか?」

「やめて、ほんとやめて、また夢に見ちゃうでしょ!」

「あーそういう夢見ちゃったんですねえ……」

「リンはむっつりスケベタイプだったのね」

「いやーっ、もうホント言わないでーっ!」



 ……なんか後ろが騒がしいな。

 そうだ、ちょっと気になったことをネルに聞いてみよう。


「ネルの目を怪我した原因って、一体なんだったのかな? もし良かったら教えて欲しいんだけど」

「……ネルの目が見えなくなった原因は……」


 あれ? なんかネルの様子がおかしい。

 どんな事故だったのか知りたかっただけなんだけど、何か言いづらいことでもあるんだろうか。


「ごめんネル、言いづらいことがあるなら無理に言わなくてもいいよ。ただ原因が知りたかっただけなんだ」

「……大丈夫です。ヒロ様になら話すのです。……ネルは事故では無くて、誰かに襲われたのです」

「なんだって!?」


 襲われた!? そいつは小さな子供の目を潰したっていうのか?



「ある日の夜、寝ていた時にふと変な音が聞こえたのです。気になったので、音がした方に行ってみたら、館の宝物庫に誰かが侵入したようだったのです。すぐに父さまに知らせようとしたら、大きな怪物がいきなり襲ってきたのです」


「怪物? 人間……いや、獣人とかじゃなくて?」


「全然違ったです。暗かったのでよく分からないですが、人間では無かったのです。ギョロリと光った金色の目だけ憶えているのです」


 怪物が深夜、宝の部屋に?

 それは獣人国で管理している、何か重要な物を盗もうとしたって事なのだろうか?


「ネルは殺されると思ったですが、怪物はネルの目だけ攻撃して、どこかへ行ってしまったです。結局、何も宝は盗まれなかったので、怪物の目的は分からなかったのです」


「このことは王様には話したの?」


「侵入者のことは言ったですが、怪物のことは誰にも話して無いのです。暗闇の中でいきなり攻撃されたので、ネルは何も見てないと言ったのです。もし誰かに言ったら、今度こそ殺されそうで怖かったのです」


 ネルが殺されなかったのは、子供だから見逃してくれたのか、もしくは殺すことに罪悪感があったのか、それとも何か利用価値があったからなのか……。

 どういう理由にせよ、幼い子の目を潰すなんて残酷すぎる。盲目のせいで、ネルがどれほどつらい日々を過ごしてきたことか、今日のはしゃぎ様を見れば痛いほどよく分かる。


 待てよ? まさかこれって……



「ネル、その犯人って、まだティーアに居るのか?」

「……居るかも知れないです。なので、今でもネルを襲ってきたあの怖い目が夢に出てくるのです」


 なんてことだ、この事件はまだ解決していない。

 もしかすると、ネルの目が治ってしまったことにより、次の悲劇が起こる可能性もある。

 ひょっとしたら、ネルを安易に治してしまったのは軽率だったかも知れない。このことを犯人が知れば、何か行動を起こしてくることも充分考えられる。

 事件を解決する方が先だったのかも……。


 いや、現段階では、何が正解かは判断付けられないだろう。1つ分かっているのは、ネルに対する警戒を強めることだ。

 ネルの安全が確保出来るまで、僕はティーアを離れないことを決意した。



 ◇◇◇



「父さま、ただいまーなのです! すごい楽しかったのです」

「おお、狩りを楽しんできたかネルよ」


 夕方、ネルの館に戻ると、王様と共に屈強そうな4人の獣人が僕たちを迎えてくれた。


「ヒロ殿に紹介しよう。この4人が我が国を守る四獣士だ」


 王様の横に居るのは、犬人、兎人、豹人、熊人の4人で、全員からかなりの威圧感を感じる。恐らく、エーアストの国王守護騎士(キングズガード)に匹敵する猛者達なのは間違いない。


「この4人はそれぞれに秀でた力があって、犬人スキロスは剣技、豹人レパードはスピード、兎人ラパンは回避力、熊人オルソはパワーといった風に、その分野においてはこの国一の力を持っているのだ」


 四獣士と紹介された方達が、僕らに向かって頭を下げる。その姿勢一つ取っても隙が無い優秀な戦士達だ。

 それほどの人達が、僕たちみたいな若輩者に温和に微笑んでくれていて、本当に友好的な関係を築こうとしてくれてるのかがよく分かった。


「皆さん凄いですね。とても強い力を感じます」


「ははは、そういうヒロ殿からも、とてつもない力を感じるぞ。君は強いだろ。恐らく、この国の王である私よりも遙かにな」


「いえ、それほどまでは……」


「謙遜しなくても良いぞ。我らは通常人より野生の本能が強い故、強さには敏感だ。君と戦えば自分の命が危ないのは本能で分かる」


「過大な評価をして頂いてありがとうございます」


「過大なものか。むしろ控えめなくらいだ。君は我ら獣人族の英雄、武闘王ペガル以上の存在だろう。ヤツは私の幼馴染みだが、強さには貪欲だ。もしペガルと戦う機会があったら、ヤツに胸を貸してやって欲しい」


「僕なんか……でももしそういう機会がありましたら、僕も全力で応えさせて頂きます」


「ふふ、ネルが君を神様と言ったのもよく分かる。君たちは異世界人だろう。噂には聞いていたが、正直我らはあまり関心を持たなかった。しかし、この世界の救世主というのは、嘘では無かったようだ。異世界人は皆、君たちのように凄いのかね?」


「はい、みんなそれぞれ特殊な力を持っています。彼らもきっと、各々訪れた国で活躍していることと思います」


「そうか。でも我が国に来たのが、ヒロ殿が最初で良かったと思っている。この国に居る間は、是非君たちの面倒を見させて欲しい」




 王様とそんな会話をしていると、ドタドタと館を歩く音が聞こえてきた。

 どうやらこっちへ近づいてきているようだ。


「リオン王よ、何故オレに相談も無しに勝手なことをされた!?」


 現れたのは、殺気と見紛うほどの凄まじい威圧感を持った狼人だった。この人もただ者じゃ無い強さだろう。


「勝手なこととはなんだ? お前に許可を取らなければならないことなど、一切したつもりは無いのだが」

「ネルの目だ、何故勝手に治した!?」


 凄い剣幕だけど、ネルの目を治したことに、何か不都合でもあるのだろうか?

 この人は一体誰なんだろう?


「ヒロ殿、紹介が遅れたな。こやつは我が軍を束ねる将軍で、ヴォルク・リュコスという。戦闘能力はこの私にも匹敵する男で、ネルの許婚だ」


 ネルの許婚? ネルって、こんな幼いのに許嫁が居たのか。

 いや、許婚に年齢は関係ないか。



「お前がネルの目を勝手に治したという男か。許婚のオレに許可も取らず、何故勝手に治した? ネルにもしもの事があったら、どう責任を取るつもりだったのだ!?」


「すみません、ネルに婚約者が居ることを知らなかったのです」


「お前のようなどこの馬の骨とも分からぬヤツに、こんな勝手なことをされて不愉快だ。ネルが無事だったから良かったようなものの、もう二度とネルには近づくな!」


「ヴォルク将軍、さすがに言葉が過ぎますぞ! ヒロ殿はネル様の恩人ではないですか」


「お前たちは黙っていろ! いいか貴様っ、もう二度とネルには会うな! ネル、お前もだ! このオレの許婚として相応しい行動を心掛けろ! いいな!」



 そう言って、ヴォルクという男は館から去って行った。

 どうしてあそこまで激怒しているのか、僕にはいまいちよく分からない。許婚としての矜持に何か障ることを、僕はしてしまったんだろうか。


 ふとネルを見ると、身体を丸めるようにして怯えている。

 今の騒動がそんなに怖かったのかな?


「どうしたの、ネル? あんな許婚を見たのが初めてで、怖くなったのかい?」

「……違うのです……。今のヴォルク様の目が、子供の時に見たあの怪物と同じだったのです。姿は全然違うけど、ネルを襲ったのはあの目なのです」



 なんだってーっ!?



四獣士の誰が犯人なのか、みたいな感じにしようかとも思ったんですが、良い話が思いつきませんでした。

もうどんどん進めます。早くハーレムメンバー揃えたいです(笑


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