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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第二章 新しき仲間達
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第59話 神様なのですね


 アマトーレ公国を出て、僕らはひたすら西へ歩く。

 道中、ちょっとしたモンスターと戦ったりもしたけど、今の僕らの敵では無く、問題無く進んで行けた。

 慌てず急がずのんびり歩き、夜は空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)で僕らは過ごす。


「ねえヒロ、見て見てっ、あそこに咲いてるの星砂花じゃないの? 滅多に見られないってヤツ! すごーい綺麗ね!」

「リン気を付けて、それ以上行くと落ちるわよ」

「あ、でも、確かに凄い綺麗ですね。花が咲いてるところが見られるなんて、運がいいです」


 とにかく安全にだけは気を付けて、僕らは歩き旅を楽しんだ。特に、リンは本当に楽しそうだった。こんなに機嫌の良いリンを久しぶりに見た気がする。

 短い期間ながら、アマトーレでは本当に色々あったけど、かえって結束が固まったような感じだ。



 旅を始めて4日目、そろそろ獣人国ティーアも近いはずだという所で、リンが誰かに見張られている気配を感じる。

 アマトーレ公国に行く時、異常なモンスター群に襲われたこともあり、リンには『超感覚(スーパーセンシティブ)』を全開にして貰っていたのだ。悠々と歩き旅を満喫しているように見えても、しっかりと気配探知を怠らずにいたところは、さすがリンだ。


「そこに隠れているのは誰なの? 出てきなさい!」


 僕らは何が出てくるのか、警戒を強めて戦いに備える。


「ひゃああっ、ゴメンナサイ、気付かれたのは初めてなのですうっ」


 道沿いの木の上から、ピョンと少女が飛び降りてきた。

 え? こんな少女がどうして?

 と思ったら、頭部にネコ耳が付いている。恐らく、獣人族の子だろう。

 こんな所に居るということは、まさか見張り役なのかな?



「私はネル・ブルートという者なのです。ネルはここで、ティーアに来る人たちを監視する役をしてるのですが、気付かれたのは初めてなのです」


 やっぱりそうだった。危険予知(リスクセンサー)も反応していなかったし、恐らく敵じゃないとは思っていたけど、念のために油断はしなかった。

 出てきたのが無害そうな少女だったので、僕らはホッとして警戒を解く。


「僕は勇木ヒロ。エーアストからアマトーレを経て、獣人国を目指してる」

「あたしは猪熊リン。さっきは脅かしちゃってゴメンね」

「私は華城麗子よ」

「私は倉橋友美です」


 獣人族の少女は12、3歳くらいで、身長は友美よりも低い150㎝くらい。

 人懐っこそうな目をしていて、ふわふわした薄茶色の髪が首元くらいまで伸びている。

 ……ん? あれ?


「キミ、ひょっとして……目が見えないんじゃないの?」

「はいです。その代わり、耳と鼻は獣人族一番にイイですよ」


 クリクリした目が微妙に焦点が合っていないのを見て、ひょっとしてとは思ったけれど、やっぱり盲目だったのか……。

 きっと、その代わりに聴覚と嗅覚が発達して、それで見張り係をやってるんだと思う。さすがに、特殊スキル『超感覚(スーパーセンシティブ)』のリンには敵わないようだけど。


「あのう、ひょっとしてあなたは神様なのですか?」

「えっ、僕が? なんで?」

「今まで感じたことの無い、暖かくてとても神聖な力を感じるです」

「そう言って貰えるのは嬉しいけど、僕は神様じゃないよ」

「そうなのですか……」


 ネルがちょっと寂しそうにうつむく。と、すぐに元気になって、また話し掛けてきた。

 その屈託の無い笑顔には、どこまでも澄んだ無邪気さがあって、本当に可愛い子だ。


「ネルはこう見えてくノ一なのです。なので、隠密行動は得意なのです」


「えっ、くノ一!?」

「あなた、ひょっとして『裏忍法』を受け継いでるの?」

「まさか、こんな少女が『必殺テク』を使えるというんですか?」


 なんだ? リン達3人が異常に動揺してるんだけど、この子がくノ一で何か問題でもあるんだろうか?


「皆さん、どうして『裏忍法』の事を知っているのですか?」

「ちょっとまって、あなた本当にその歳で『必殺テク』を使えるの?」

「ふっふっふっ、それは当然なのです」


 そう言って、このネルという子が不敵な笑みを浮かべる。

 リン達がゴクリとつばを飲み込んで、何かこのネルという少女に気圧されているような雰囲気になっているんだけど、一体この子にはどんな秘密があるんだ?



「皆さんイイ人ですね。ネルには分かるのです。だから、獣人国ティーアは皆さんを歓迎するのです。ネルがティーアまで案内するですね」



 僕らはネルに案内されながら、獣人国へと歩いて行く。

 リン達3人は、すぐにネルと仲良くなったようで、突発的な女子会に花を咲かせている。女の子はこういうところが羨ましいね。

 そういえばと思って、僕はふと気になったことをネルに聞いてみる。


「ネルちゃん、キミは生まれた時から目が見えなかったのかい?」

「ネル、でいいですよ。ネルは生まれた時は目が見えたですが、子供の時に両目を怪我してしまって、それで見えなくなったのです」


 生まれつきの盲目ではないということは、ボクの『完全治癒(リ・ゲイン)』で治すことが出来るのではないだろうか。

 もう何年も時間が経ってしまっているから、やってみないことには分からないけど、取り敢えず試す価値はある気がする。ただ、ネルの親御さんに相談も無しに、行きずりの僕がいきなりそんなことをしては問題がありそうなので、ちゃんと親御さんに相談してから試してみよう。



 ◇◇◇



 ほどなく僕らは獣人国ティーアに着いた。行き交う人々がほとんど獣人なので、町は独特な雰囲気だ。猫人、犬人、兎人、豹人、熊人、みんなそれぞれ種族の特徴がよく出ている。

 獣人と言っても、全身顔まで毛むくじゃらの人間というわけじゃ無くて、少し毛の濃い人間と言った方が近い。半獣人という表現の方が正しいのかも知れない。


「昔は、獣の本能を強く受け継いだ『先祖返り』も居たらしいのです。そういう人たちは、通常を遙かに超えた力を持っていたと言われているのです」


 ネルが説明してくれる。

 獣人族も、時代が進んで行くに連れて少しずつ野生の本能を失っていき、緩やかに人間へと近づいているのだろう。

 因みに、道行く人々の中に竜人もちらほら見掛けるが、竜人族のみが集まった村が別にあるらしい。獣人の中でも竜の血が混じる竜人族は特別で、一段強い存在となっているとのこと。



「せっかくなので、皆さんにはネルの父さまに会って欲しいのです」

「僕からも、是非紹介して欲しいと思っていたんだ」


 ネルのご両親に、目の治療のことを相談しようと思っていたので、ちょうど良かった。

 僕らはネルに付いて歩いて行くと、どんどん町の奥へ進み、ひときわ大きな屋敷の前へと案内される。

 え、ちょっとまって、ここって……。


「すごい家ね……」

「ねえヒロ君、ひょっとしてここって」

「そうですね、まさかと思いましたが……」


 リン、麗子、友美も驚いている。

 そうなのだ、エーアストの宮殿とは違うけれど、どう見てもここは王様の住む館でして……。



「どうしたネル、お客さんを連れてきたのか?」



 凄い大きな身体をした猫人……じゃない、この人は虎人だ。そして着ている衣装から察するに、この獣人国の王様だろう。

 ということは、ネルって猫人かと思っていたら、虎人だったの? しかも、獣人国の王女様? 王女が見張りなんてやってたの?


「我が国ティーアへようこそ、客人よ」


 もの凄い筋骨隆々とした身体で、静かな口調ながらも野獣のような迫力を感じる。間違いなく、この王様は無茶苦茶強い人だ。

 獣人国を統べるだけに、やはり強い者が選ばれるのかも知れない。


「ネルが客人を連れてくるとは珍しいな。よほど気に入ったとみられる。客人よ、楽にしてくつろいでくれたまえ」


 僕らは貴賓室のような部屋に案内される。

 ネルのご両親に会うというイベントが、いきなり王様との謁見に変わってしまって、さすがに僕も少々浮き足立ってしまった。

 失礼が無いように、精一杯心を落ち着かせてから、目的の話を王様にする。



「なんと、客人はネルの目が治せるというのか!?」

「いえ、確実に治るとは言えないのですが、試してみる価値はあると思っています。許可を頂ければ、すぐにそれを行いますが……」

「うーむ……ネル、お前はどうする? 怖いならやらなくてもいいぞ」

「ネルは全然怖くないのです。ヒロ様を信じています。是非やってください」



 王様もネルも心を決めたようで、僕に全てを預けてくれるみたいだ。

 二人の期待を裏切りたくない。特にネルは、やっぱりダメだったとなれば、きっとその落胆は大きいだろう。

 頼む、成功してくれ……いや、絶対に成功させてみせる。



「目を閉じて、ネル。いいかい、行くよ……『完全治癒(リ・ゲイン)』っ!」



 フィーリア王女に使った時は、一刻を争う状況で暴走気味に使ってしまったけど、今回は落ち着いて魔力を調整する。

 ネルの瞳に意識を集中させ、ネルの失った細胞、破壊された神経などを修復していく……。



「……終わったよ、ネル。目を開けてごらん」


 ネルがゆっくりと目を開ける……。



「み、見えるですっ! 父さまっ、父さまの顔も見えるですっ! まぶしいっ……こんなに光って明るかったのですね」

「ネルっ! おおっ、これは奇跡だ、客人は一体何者なのか!?」

「やっぱりヒロ様は神様だったです! ネルの思った通りでした!」


 ネル達親子は抱き合って喜んでいる。

 成功して本当に良かった。きっとこれでもうネルの目は大丈夫だろう。


「ヒロ殿、今夜はネルの目の礼に、精一杯のおもてなしをさせて頂きたい」

「それでは、遠慮無くご馳走になります」



 ◇◇◇



「わ~すごーい!」


 夕食のテーブルにはとんでもなく豪華な食材が並び、僕らはその美味しい料理に舌鼓を打つ。


「お料理がすごい綺麗で美味しそうなのです。見えない時は、ネルが何を食べているかよく分からなかったのです。見えるのすごい楽しいのです!」


 ネルも目で料理を楽しめて、とても満足しているようだ。

 そしてネルはとんでもない大食いだった!

 端からもりもりと料理を平らげ、次々に皿を空にしていく。その小さな身体の、一体どこにたくさんの料理が入っていくのか、不思議でたまらない。

 リン達も、その様子を目を丸くして見ていた。


「ヒロ様も遠慮無く食べるですよ!」


 ネルが元気にはしゃぐ姿を見て、ティーアに来て本当に良かったと思う。

 食事中には、色々華やかなショーまで見せてもらって、王様は僕らを心から歓待してくれた。



 楽しい宴が終わったあとには、湯浴みの用意もされていて、今夜はそのまま宿泊を勧められた。せっかくのご厚意なので、僕らは有り難く甘えさせて貰うことにした。


 アマトーレでは、いきなり事件に巻き込まれたりと散々だったけど、この獣人国ティーアでは、良いスタートから始めることが出来て安心している。

 このまま良い思い出だけ作って、ティーアを去って行きたいものだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 この日の深夜。

 女子達だけで泊まった部屋では、これまで過ごしてきた中で最高潮に重要な会議が行われていた。

 リン、麗子、友美の3人が、真剣な面持ちでネルの前に並び、深々と頭を下げて土下座をする。






「ネル様、『裏忍法』の『必殺テク』というのを、どうか私たちに御指南下さいまし……」


 本来は門外不出とも言える、男必殺のくノ一技だが、目のお礼もあり、ネルは快くリン達に技を伝授する。




「ええっ、そ、そんなことするの!?」

「やだ、そんなやり方があるなんて……」

「すごいっ、それはすごいです! 勉強になります!」



 その夜、女の子達の謎の講習会は、明け方まで行われるのであった。



 獣人国に着くまでにちょっとしたイベントがあったのですが、カットしました。

 本編ぶんぶん進めます。ただ、今後なかなか更新出来なくなりそうです。


 それと、ネルは『裏忍法』を知ってはいるけど、まだ実戦では使ったことはありません。もちろん男性経験も無い子です。一応補足です(笑

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