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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第二章 新しき仲間達
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第58話 姫様の涙


 ヴァクラースの正体は、とんでもない悪魔だった!

 グラシャラボラスだと!? 僕も名前だけなら知っている。その大悪魔相手に、姫様とソロルが立ち向かっているが、まるで敵わないようだ。

 このままではまずいっ! みんなが危険だというのに、拘束されていて動けない! あとちょっとグラシャラボラスが近づいてきてくれれば、能力解放(リベレーション)出来るのに……!


 そう思っていると、グラシャラボラスが右手を振り上げて僕に突進してくる。

 コレを待っていたっ!!

 ようやく発動可能範囲にグラシャラボラスが入り、僕は能力解放(リベレーション)を発動する。

 そして、一瞬で拘束を引きちぎり、そばに居たソロルの剣でグラシャラボラスを吹き飛ばす。

 奴隷の首輪は、もちろん『完全異常耐性(グッド・ステータス)』で無効だ。



「ぬおおっ! 貴様、動けないんじゃ無かったのか!?」



 僕はシーツを剣で切って、サッと腰に巻く。さすがに裸じゃ体裁が悪い。


「ヴァクラース……いやグラシャラボラス、お前の悪事もこれまでだ。僕がお前を倒す!」


 僕はグラシャラボラスに飛び掛かり、一気に剣を打ち込んでいく。

 今まで色々鬱憤が溜まっていた分、今回の能力解放(リベレーション)はひと味違うぞ!

 相手は悪魔だ。遠慮はしない。超本気モードで僕の全力を出す!


「このっ、人間風情がっ!」


 グラシャラボラスが、その鋭い爪で僕を攻撃しようとする。しかし、予測でそれを見た僕は、動き出そうとする先から先制して攻撃を潰す。

 この反撃を許さない攻撃は、模擬戦で負けたときに勉強したモノだ。



「ぐううっ、バカなっ、なんという剣の鋭さだ、これはあのドラコスに匹敵する……このオレが手も足も出ぬっ!」


「ヒ、ヒロっ、こ、これは……剣がまるで見えぬ!」

「す……すごい……こんな激しい剣技は見たことが無い。兄上どころか、帝国将軍より上だ」



 僕はセクエストロ戦の時より、通常状態で数レベル上がっている。

 能力解放(リベレーション)は、スキルランクが全て大幅に上がる上、通常時のステータスが5倍になる。つまり、通常で数レベル上がれば、能力解放(リベレーション)時にはさらに大きく能力が上がる。

 凶獄君の『超成長(ザ・ミラクル)』ほどじゃないけど、僕の成長もみんなよりは早いということだ。セクエストロ戦よりも、僕は一段強いぞ!



「ぐおおっ、貴様っ、ただの人間じゃないな? このオレの不死身の身体が再生しない! ドラコス以外にも貴様のようなヤツが居たとは……!」


 僕の剣技にどういう力が働いているのか分からないけど、グラシャラボラスの傷が修復しない。このまま一気に倒す!



「貴様、これほどの力を持っているなら、ソロルにむざむざ攫われるわけが無い。わざと攫われてこの館に入ったな!? しかも、隙を見せて、このオレの正体まで晒させた。我が策略をことごとく破ったことといい、なんという知恵者だ」


 う~ん、ホントは違うんだけど、そういうことにしておこう。



 僕はグラシャラボラスを圧倒し、ヤツの左腕を斬り落として、右目に剣を突き刺す。

 そしてあと一押し、もう一撃というところで、見えない壁のようなモノで吹き飛ばされた。



「ぐぬううっ、今のオレの力では、貴様には敵わぬ。口惜しいが、今回は退散させて貰うぞ」

「待て、逃がすわけ……」


 凄い突風と共に館の屋根は破壊され、気付くと一瞬でグラシャラボラスは上空に居た。僕が斬り落とした左腕も拾っているようだ。きっとアレはまた元通りにくっつくのだろう。

 くそっ、ここでとどめを刺しておきたかった……。



「グラシャラボラス、各国の誘拐事件もお前が犯人だな!?」


 僕は今回の事件の全貌を知るために、グラシャラボラスに問いかける。まともに答えるとは思わないが、聞かずにはいられなかった。


「誘拐? 何のことだ? よく分からんが、それはオレじゃ無いぜ。まあオレのせいにしてもいいけどな」



 そう言って、グラシャラボラスは飛び去っていった。

 しょせん悪魔の戯言だが、僕にはヤツがウソを言っているとは思えなかった。

 何故なら、今回アイツが起こした事件は全て殺人で、誘拐はやっていない。とすると、誘拐事件の犯人は、まだ別に居るということか……。


 今回の戦闘では、僕がグラシャラボラスを圧倒出来たけど、どうやらヤツは本来の力を出せていないようだった。

 次からは僕は完全に狙われる立場だ。ヤツが力を取り戻す前に、なんとか倒さないとまずいかも知れない……。



「ヒロっ!」

「ヒロ殿……!」


 姫様とソロルが僕の元に駆け寄ってくる。


「ヒロ……こんなに強かったのに、どうしてわらわに負けてくれたのじゃ?」

「姫君、ヒロ殿はグラシャラボラスの正体を暴くために、一芝居打ったのですよ。我々はすっかり騙されてしまったということです」

「屋敷でヴァクラースを襲ったのも、ヒロには全て分かっていたからじゃったのか」

「すみませぬ、ヒロ殿。あの時ワタシが邪魔してしまったため、ヒロ殿の計画が狂ってしまわれたのでしょう。このような事態になってしまうとは……」


 う~ん全然違うんだけど、まあそういうことにしておこう。



 部屋の入り口でリン達3人が、僕のことを見つめながらもじもじしている。

 久々に会って、お互い少し照れくさい感じだ。



「ただいま、リン、麗子、友美」

「おかえりなさい、ヒロ」






「チッ……アイツ(ドラコス)に借りを返す前に、倒さなくちゃいけないヤツが出来ちまった。剣の腕だけでは無く、頭も回るとはな。勇木ヒロか……絶対に忘れんぞ」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 その後、魔剣の詳しい調査により、被害者の生体エネルギーを吸収していたような跡が見つかった。恐らくそれを、グラシャラボラスは自分の回復のために使っていたのではないかと思われる。

 アマトーレ公国は近くに迷宮(ダンジョン)が出来たことで、突然他所からの冒険者が多く来るようになっていた。そういう者達は狙いやすかったので、グラシャラボラスはこの国を根城にしたのかも知れない。

 取り敢えず、グラシャラボラスは浅くは無い傷を負ったはずだ。しばらくは、この国に戻ってくることは無いだろう。


 僕らはアマトーレを出て、獣人国ティーアに行こうと思っている。

 実は獣人国へは馬車が出ていなくて、徒歩で行くしか無いのだけれど、獣人国の近くにはエルフの里という所もあり、そちらもついでに寄ってみたくて行くことに決めた。


 因みに、獣人国まで徒歩で4日掛かる。なので、食料をたっぷり買いこんで、気長に行こうと思っている。

 僕らは準備を整えて、出立のため、昼前に入場門に赴いた。



 ◇◇◇



「皆さん、お見送りありがとうございます」


 出発には、姫様、ソロルさん、薔薇の騎士(ローズナイト)さん、リエゾンさん達が来てくれて、みんなにお別れの挨拶をした。

 短い間だったけど、なかなか経験すること無いような濃厚な時間を過ごせて、みんなには大変お世話になったと思っている。色々あったけど、無事全部解決出来て本当に良かった。



「ヒロ……本当に行っちゃうのか?」

「姫様、またアマトーレには戻ってきますから、その時またお会いしましょう」

「うっ、うっ、ひぐっ……」


「やだ、ヒロ君てば、大公女様オトしちゃったの?」

「さすがヒロ、アタシが見込んだ男だね」



 姫様は大粒の涙をボロボロこぼして泣く。



「ヒロ、いじわるしてごべんなざい……わらわはヒロが好きじゃ」

「姫様、僕も姫様が好きですよ」

「ヒロ、一つだけおねがいしてもいいか?」

「なんでしょう姫様?」

「ヒロと……キスがしたい」


 ええっ!? キスするだけでもハードル高いのに、こんなみんなの前で?

 まいったな、どうしようと思ってリン達を見たら、ほっぺにしてあげればというジェスチャーをしてくれた。

 なるほど、ほっぺならまあ恥ずかしくないか。



「じゃあ姫様、ちょっと横を向いて下さい」

 僕は姫様を横に向かせて、ほっぺにチューをしてあげようとする。


「ヒロ、そのまま動くな!」


 ふえっ? 奴隷状態の時のクセで、つい僕は固まってしまう。



 ちゅっ!



 うがっ……! 不意をつかれて、唇でキスしちゃった。

 みんなの前で、これは恥ずかしい……まあいいか。姫様がやっと笑顔になってくれたし。


「あーヒロ君より大公女様の方が一枚上手だね。どうするリン?」

「リンさん、どんどん先越されちゃってますね。このまま行くと、私の方がリンさんより先にキスしそうな気がします」

「う る さ い っ」



「ふふん、これでフィーリアとも五分なのじゃ!」


 涙をゴシゴシ拭いて笑う姫様。


「でも姫君、ワタシはヒロ殿と20回くらいキスしましたよ」


 ああっソロルさん、このタイミングでそれ言うんですか?

 姫様の方を見て、ソロルさんは意地悪な笑みを浮かべる。


「ヒロっ、あと19回キスするのじゃっ!」

「姫様、それはご勘弁を~っ」




 みんなが手を振ってくれる中、僕らはゆっくりと公国を去って行った。



 ◇◇◇



「さあてヒロ、さっきの20回キスってヤツの説明を聞こうじゃないの」


 リンはこめかみに血管を浮かせながら、腕を組んでヒロに問いただす。その静かなる剣幕を見て、ヒロは自然と正座になってしまった。


「縛られて抵抗出来なかったので、たくさんキスされました」

「それだけ?」

「へ?」

「あのソロルとした(・・)のは、それだけかと聞いてるの!」


 何せ、リン達が到着したときには、素っ裸で抱き合っていたのだ。

 キスだけで済んでいるとは到底思えない。


「キ……ス……だけですよ?」


 ヒロの様子がおかしい。リン達3人とも、コレはウソだと見抜く。


「ねえヒロ……大公女様とは一緒に寝ていたのよね?」

「ええっ、寝……て……ないですよ?」

「ん~? 大公女様は、毎晩一緒に寝てるって叫んでたわよ?」

「あ、あ、あれは、姫様がその場の勢いで言ったんだと思いますね、うん」

「ヒロく~ん、ウソ言っても、私たちには分かるんだからね~」

「そうですよ~勇木君。シャワーも一緒に入っていたの知ってるんですから」

「ええええっ、ごっ、ごめんなさい、一緒に寝ていました」

「アンタ、本当に一緒に寝てたのねっ!」

「ええっ、それは知っていたんでしょ?」

「聞いてはいたけど、本当だとは思ってなかったのよっ!」

「ずるいっ、誘導尋問だっ」

「ヒロく~ん、悪いのはウソ付いたヒロ君なんだからねえ?」

「そうですよ~。ウソ付くと、さらに立場は悪くなるんですからね。……で、本当に寝ただけなんですか? 何かほかにはしませんでしたか?」

「ひ、姫様とは本当にナニもしてないです」

「姫様とは(・・)してない? ということは、ソロルとは(・・)ナニかした(・・)って事よね?」

「えっ? えっ? ちょっとまって、なんで……?」

「ヒロ君てウソ付けない子ね。私たちがなんで分かるか不思議?」

「ふふふ、勇木君、わたしたち3人の能力を侮ってはいけませんよ」

「……で、ヒロ、やさしくしてあげるのはここまでよ。正直に言わないと、本当に酷いからね。ソロルとはナニ(・・)をしたの?」




「……○△□&@℃%$☆♂♂♂されましたーっ」







 リン達3人は、ガックリと崩れて両手を付いた……。

 因みに、一応ヒロはまだ童貞である。




 余談ではあるが、しばらくお互いが離れて寂しい思いをしたということで、この夜みんなで一緒に寝ることになった。

 それに際し、誰がヒロの両隣に寝るか、リン達3人でこっそりジャンケンをしたところ、リンが負けて麗子と友美がヒロの両隣に決定した。


 すると、リンがボロボロと大泣きしたのである。ずるい行為ではあるが、リンは涙を我慢できなかったらしい。

 それを見て、仕方なく麗子がヒロの隣を譲ったのであった。


 リンは一生恩に着ると麗子にお礼を言い、心臓が爆発しそうなほど胸を高鳴らせながら、ヒロと一緒のベッドに入る。もちろん、麗子と友美も一緒である。

 リンは初の添い寝を満喫し、良い夢を見たのであった。


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