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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第二章 新しき仲間達
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第50話 狙われるヒロ


「ねえヒロ、あたしにアレやってアレ、ギューンって強くなるヤツ!」


 リンが『勝利への騎行(アポストルグローリー)』を掛けて欲しいとせがむ。

 リンはすっかりあの強化モードが気に入ってしまったようで、ことあるごとに、『戦乙女(ブリュンヒルデ)』になりたがるのだ。

 当たり前だけど、無駄に使っていい能力では無いので、本当に必要な時以外には『勝利への騎行(アポストルグローリー)』は掛けていない。何せ、1日最大5回しか使えないのだから。


 因みに、麗子と友美の『勝利への騎行(アポストルグローリー)』も確認済みで、麗子は『神弓者(ゲルヒルデ)』、友美は『聖使徒(オルトリンデ)』へと転身する。どちらもリンに負けず劣らずの強さになってくれるが、ただ戦術の都合上、どうしてもリンの転身が多くなる。

 まあ、コレを必要とする戦闘なんて、滅多に無いんだけどね。


 アマトーレ公国の近辺を適当に散策してみたが、出現するのはエーアスト王国とほぼ変わらないモンスターだった。

 お馴染みのホーンラビット、ポイズントードほか、コボルト、ゴブリン、オーク、キラービーなどだ。多少違うのは、スライムが多く居たことくらいか。

 馬車を襲ってきたモンスターが少し特殊だったので、かなり警戒して歩いてみたけど、この辺には特におかしな様子は無さそうだ。油断は禁物だけどね。



「あ、見てヒロ、トロールよ! これは変身モード必要じゃ無いかしら!?」


 変身じゃ無くて転身だけどね。まあ同じようなモノだけど。


「僕たちはもうトロールなんて楽勝でしょ。ああでも、ちゃんと油断しないでね」


 リンの一撃でぶっ飛ばし、麗子の弓が首を貫き、友美の火炎焼却(ファイア)で焼き尽くす。あっという間の撃退だ。友美はもう火炎焼却(ファイア)くらいなら、すぐに完成させられるほど熟達している。

 因みに『賢者(ワイズマン)』ほどになると、『高速詠唱(ショートカット)』というスキルを覚えて、詠唱を短縮出来るらしい。きっと小鳥遊さんなら、そろそろそれも覚えていることだろう。




 もうしばらく歩いていると、草木の茂みから大きな植物がはみ出て、綺麗な花を咲かせていた。一見なんでも無さそうな植物であるが、コレは有名なモンスターであった。

『マンイーター』である。


「あーコレがマンイーターってヤツなのね。近づくと危険って話だったけど、あたし女だから平気よね!」

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


 リンが無造作にマンイーターに近づいていく。


「リン危ないっ!」

「ちょ、リンっ何考えてっ……」

「リンさん離れて下さいっ!」

「へっ……?」


 リンが花のそばまで寄ると、リンの足元の地面から突然巨大な葉っぱが4枚現れて、リンをパックリと飲み込んでしまった。


「ああああリンっ、『勝利への騎行(アポストルグローリー)』~っ!」



 ◇◇◇



「ううっ……、男しか喰わないんじゃ無いの? あたし女なのに~っ」


 リンが腰を抜かしたように、地面にへたり込んで泣いている。よほど怖かったらしい。

 食人植物であるマンイーターの葉は強靱で、一度喰われるとなかなか助けることが大変なのだが、『勝利への騎行(アポストルグローリー)』のおかげでリンは自力で脱出できた。

 ほんの短い間だったのに、リンの服や装備の一部は溶かされていた。

 何とも恐ろしいモンスターだ。リンが無事で何よりだった。


「リン、マンイーターは男性だけじゃ無くて、女性も襲うのよ。知らなかったの?」

「じゃあなんでマンイーターって言うのよ!」

「マンイーターが出すフェロモンで、主に男性が引き付けられやすいからという説がありますけど、真偽は分かりません」


 やれやれ、リンの無鉄砲さにも困ったものだけど、コレは結構イイ薬になったかも。今後は怪しげなモノには無闇に近づかないだろう。



 僕らは散策を終えて、アマトーレに戻った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 町に戻り、冒険者ギルドに一応顔を出す。クエスト等を受けていないので、特にギルドに報告することも無いんだけど、なんとなく夕方の様子も窺っておきたかったのだ。

 全体の雰囲気は、エーアストの冒険者ギルドと変わらない感じだ。ボルゴスのように目立った荒くれ者は居ないけれど、それなりに粗暴そうな人は居る。まあ冒険者には、暴れん坊な人は多いみたいだから、特に珍しくない光景だ。


 一通りギルド内を眺めてから、そろそろ外に出ようかと移動すると、女性の声で呼び止められる。


「ねえねえ、エーアストから来た異世界人って君のことでしょ?」


 それは赤髪でスラッと背の高い女性だった。セミロングの髪をふわふわとカールさせた、もの凄い美人な方で、後ろに同じような綺麗な女性を3人連れている。

 彼女は恐らく戦士職で、剣や盾など一式を身に付けているが、装備を着けた上からでも、そのスタイルの良さがよく分かった。


「アタシはリエゾン・アムルーズ。女性4人の冒険者チームのリーダーで、戦士をやってる。後ろに居るのは、チームのメンバーで……」

「メイレンでーす」

「ムリエルよ」

「プルクラでぇす」


「あ、僕は勇木ヒロと言います。仰る通り、異世界から呼ばれました……」


「やだー本物だー! 君、ヒロって言うんだ?」

「うそ、こんなに可愛いのー?」

「ヒロ君て救世主なんでしょ? すごーい!」

「あーアンタ達うるさい! ゴメンね、この世界に異世界人が来たって噂は聞いてたんだけど、アマトーレにはまだ誰も来てくれなかったからさ。今朝ギルドに噂の異世界人が来たって話を聞いて、アタシら会いたくて待ってたんだ」


 ううっ、なんかメンバーの女性さんがいっせいに僕に抱きついてきて、あちこち身体を触ってくる。年上の女性の甘い香りが、ふわっと僕の鼻腔をくすぐって、まるでのぼせるように顔が熱くなってしまう。



「ちょっと、ウチのリーダーに抱きつくのやめていただけますか!? あと、あたし達も異世界人なんですけど?」

「あれ? ヒロ君てリーダーだったの?」

「私もいま初めて知りました」

「麗子と友美は黙ってて!」


「あら、あなた達、ヒロ君の従者さん?」

「なっ……、パーティーのメンバーです!」

「ただのメンバー?」

「たっ……ただのメンバーです」

「なんだ、彼女じゃ無いのね。良かったー!」


「あ~リンはそこで強く出ないとダメよね」

「つけこまれますよねー」



「あのー、異世界人の男なら、エーアストに行けばまだ居ますよ。行ってきたらどうですか? ヒロなんか大したこと無いですよ」

「私ヒロ君がいい!」

「私もー!」

「私もー!」

「こ、こんなヘナチョコのどこがいいのよ?」

「え~ヒロ君可愛いよ。真面目で優しそう。この辺じゃなかなか見掛けないタイプだよねー」

「……そのヒロ君て呼び方、やめてもらえます?」

「えーヒロ君って呼んじゃダメ?」

「ああいや、ダメって事は無いですけど……」

「ヒロっ、ダメって断りなさいよっ!」

「ええっ? 別にそれくらいはいいんじゃない?」

「よくないっ! アンタがそれだから……」

「なんかこの子怖い……あの、あなたヒロ君のなんなの?」

「ヒ、ヒロの……ただのメンバーよ!」


「ふぅー、ダメな子ね、リンは」

「この調子じゃ、当分二人の関係は進みませんね」




「アンタ達、それくらいにしな! すまないね、ウチのメンバーがはしゃいじゃって。アタシ達はこれでもAランクチームなんだ。何かあったら力になるよ……ねえヒロ、今日このあと二人だけで飲みに行かない?」


 リエゾンさんが仲間をピシャリと制止したあと、僕の両手をギュッと握って、そっと耳元に顔を近づけてきて囁いた。


「あっ、リーダーずるいっ、また自分だけ抜け駆けする気でしょっ!」

「今度はみんなで一緒にする(・・)って言ったじゃん!」

「ヒロ君の初めては、私が奪っちゃおうと思ってるのにぃーっ」


「あ、あ、あなた達、もうヒロには近づかないでっ!」

「これはさすがに悪い虫ね。ヒロ君を守らないと」

「リンさんだけに任せるわけには行かなくなりましたねー」


 なんかリン達3人が、僕の前に立ちはだかって、彼女たちを牽制する。そんなに悪い人たちじゃ無さそうだけどなあ。

 エーアスト王国以外では、救世主の伝承はあまり重宝されてないと聞いていたんで、他国で変に絡まれたりしたら嫌だなあと思ってたんだけど、そんなこと無さそうでホッとした。



「それでは、僕たちはこれで」


 僕らはリエゾンさん達に挨拶をして、ギルドから出ようとすると……



「おう、待てよ! お前なにリエゾンに絡んでやがるんだよ!」



 ああっ、無事ギルド内で揉め事を起こさずに立ち去ろうとしたのに、最後の最後でトラブルに巻き込まれそうな気が……。

 僕を呼び止めたのは、背の高いガッシリとした男で、茶色の短髪を綺麗に整えたイケメンだ。恐らく戦士で、後ろにはチーム仲間らしき男を3人連れている。


「あの、僕はただリエゾンさんとお話しさせて貰っただけで……」

「そうだよ。別にアタシは絡まれてなんか居ないよ。そもそも最初に話し掛けたのはアタシだよ」

「そんなの関係ねー! リエゾンと勝手に話したのが許せねえ」


 うわ、なんか酷い理不尽な言い掛かり……まるでボルゴスみたいな人だ。凄いイケメンなのに。


「お前おもてに出ろ! タイマンで決着付けようぜ」


 一体なんの決着ですか?

 僕は普通に行動しているだけなのに、何故いつもこんなに絡まれるの?


「フェーブルやめな! アンタいい加減にアタシを諦めなよ」

「んなこと言ったって、お前がオレをフッてこんなダサガキとイチャ付いてるなんて、許せねーよ」



「ねえ面倒くさいからタイマンしてぶっ飛ばしちゃえば?」


 リンがまた物騒なことを発言する。

 僕はケンカとかイヤなんだって。絶対そのあと面倒なことになるんだから。

 あー戦いのあと友情が芽生えるようなパターンもあるか。でもこの人とは絶対に友情は生まれない気がする……。


「すみません、僕たちはこれで失礼します」

「おい待て小僧っ!」



 僕は制止を無視して、素早くギルドの外に出た。

 あーせっかく新しいところでは、穏便に冒険者活動したかったのに……。


 彼とは二度と会わないことを祈るだけだった。


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