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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第二章 新しき仲間達
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第47話 少女たちは肉食です


 アマトーレ公国は、自然に囲まれた豊かな国で、西に行くと獣人族の国、そして南には大きな海が広がっている。

 北西には1年ほど前に新しくダンジョンが生成されて、そのおかげか、冒険者も日に日に増えて、町も賑わっているようだ。


 因みに、大抵のダンジョンは自然発生するが、今回ダンジョンが生成されたのは約200年ぶりで、まだほとんど探索は進んでいない状態らしい。

 後日、準備を整えて、僕らも行ってみたいと思っている。ただ、初ダンジョンでは大変な目に遭ったんで、今度は安全マージンをしっかり取った状態でチャレンジしたいところだ。


 夕方に到着した僕らは、正門のすぐ近くにあったレストランで食事を取った後、ある理由で、人通りの無いような静かな場所を探しに出歩く。

 まだ来たばかりで公国のことがよく分からないので、入場する時に貰ったマップを見ながら、適当にその辺を歩き回っていく。


 だんだんと周りが静かになってきたところに、とても色彩豊富できらびやかな館を見つける。……娼館だった。


「ヒロ、アンタこっそりこんな所なんかに来たら殺すからね」

「い、行かないよっ!」


 僕らの目的は、もちろん娼館では無い。




 ぐるぐると歩き回り、ようやくちょうど良さそうな静かな場所を見つけたと思ったら、何故か僕の『危険予知(リスクセンサー)』に反応が……人の気配だ。どうも2人居るようだ。

 1人は道に倒れていて、もう1人はそれを見下ろすように立っている。がっしりとした体格の若い男だった。そして、その手には不気味な剣を持っている。

 男が僕らに気付き、振り返りざまにニヤリと笑う。


「……お前ら見たな?……仕方ねえ。『囚牢縛鎖(イービルバイン)』!」


 男は剣を逆さにし、地面に突き立てるように構え、何かの技を発動する。と同時に、僕ら4人の足元にタイルのような格子状の光の線が現れ、そこから魔力で出来た蔓が伸びて僕らに巻き付く。

 どうやら動きを封じる術のようだ。

 僕はとっさに能力解放(リベレーション)をして、絡みつく蔓を解除した。この手の魔力などで動きを封じる技は、僕には全て無効だ。


「なにっ? 今お前ナニをした?」


 麗子も抵抗(レジスト)に成功したようで、蔓は消えている。

 コイツ、いきなり攻撃してくるというのは、もはや普通じゃ無いな。もう1人の倒れている人をよく見てみると、どうも襲われて怪我をしているようだ。

 襲ったのは、恐らくコイツだろう。



 どういう状況か分からないが、取り敢えず、この男を捕縛しよう。詳しく調べるのはそのあとだ。


「勇木君、気を付けてっ、相手が持っているのは魔剣です!」


 えっ? 確かに異様な形をしてるけど、これが魔剣……?

 魔剣持ちとは初めて戦うが、確か、聖剣と同等以上の強力な力を持っているとのことだったはず。

 僕は慎重に相手との距離を詰めていく……。



「ちっ……」

「あっ、待てっ!」



 魔剣の攻撃を警戒しているうちに、一瞬の隙を突かれて、相手に逃げられてしまった。追っていくのは可能だけど、リン達をこの場に残しては行けない。

 今まで戦ってきた中で、逃げたヤツは居なかったから、ついうっかりしてしまった……。


 僕は相手を追わずに、倒れている人を救助しようとした。が、残念ながら少し遅かったようだ。

 倒れていたのは30歳くらいの男性で、冒険者らしい格好をしていた。恐らく、魔法職だろう。胸を貫かれていて、すでに事切れていた。

 逃げた男は、一体何をしていたんだろうか? ただの辻斬り?


 これ以上僕らに出来ることは無いので、衛兵を探して呼んできて、事情を詳しく説明した。



「お前ら怪しいな……お前らのような冒険者など見たこと無いぞ」

「僕らは今日の夕方、アマトーレ公国に着いたばかりなんです」

「着いたばかりで、なんでこんな人気の無い場所なんかに来たんだ?」

「えーと、ちょっと散歩していただけなんです」

「うそつけ、お前ら全員詰め所まで来い!」



 僕らは衛兵の詰め所まで連れて行かれ、完全に犯人扱いされてしまう。

 どうやら、ちょっと前から無差別に殺される事件が起きており、その目撃者は、なんと僕らが初めてのことらしい。アマトーレ公国に来て、怪しげな場所でいきなり初目撃者になってしまったのだから、これは疑われても仕方ないかも知れない。


 僕らは散々弁明し、冒険者ギルドの身分証明書(ギルドカード)を見せて、3日前にエーアストを通常馬車で出発したことが確認されてから、ようやく疑いが晴れた。

 これはギルドカードに、活動場所等が全て記録されているため、行動を照会して貰えれば分かるのであった。

 因みに、カード所持者の情報は、各国の冒険者ギルドでデータ共有管理されているので、他国に行ってもすぐに問題無く活動出来る。

 恐るべし魔法テクノロジー。


 僕らは無事釈放されて、また静かな場所を探すのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 さっきとは別の人気の無い場所を見つけ、僕はあるアイテムを取り出す。迷宮(ダンジョン)で得た『空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)』だ。

 僕らはアマトーレ公国の宿屋には泊まらずに、空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)で夜を過ごすつもりだった。このアイテムを誰にも見つからずにこっそり使うため、静かな場所を探していたのだった。


 周りに人が居ないことを確認して、そっと空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)を発動させる。すると、空間に黒い裂け目が出来、その間に扉が浮き上がる。

 僕らはその扉を開けて中へ入った。全員が入ったあと扉を閉めると、黒い裂け目も扉も消える。空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)はそういうアイテムだった。




「ん~相変わらずイイお家ねー」


 リンが満足げな声を洩らす。このアイテムよりも良い設備の宿屋はなかなか無いはずで、元々旅先ではこれを使う予定だった。

 すでに僕らは何度も中には入っていて、色々検証も確認もしている。


 この空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)は、閉鎖空間に巨大な邸宅を出現させるアイテムで、中には10畳ほどの部屋が12部屋と、20畳ほどの部屋が1つ、そしてキッチンも兼ねた広い食堂と、大きなお風呂まで完備されている。

 部屋は、中央の廊下に沿って片側に6部屋、両側合わせて12部屋あり、その奥に、20畳の部屋と食堂とお風呂が並んでいる状態だ。

 キッチンにはアイテムボックスがあり、食材はそこで新鮮なまま保存出来る。

 料理は自分たちでなんとかしなくてはならないが、そんなのは些細な問題だ。


 部屋割りもすでに決まっていて、リン達は廊下に並んだ12部屋の真ん中当たりを、適当に使うらしい。

 僕は奥の20畳の部屋で、なんか自分だけ大きな部屋で気が引けるから、リン達と同じ10畳の部屋にするよって言ったんだけど、いいから奥の部屋を使えと勝手に決められてしまった。

 せっかくなので、ありがたく使わせて貰おうと思っている。


 各部屋は本当に素晴らしい造りで、まるで高級ホテルのようだった。ベッドも、もちろんふかふかだ。

 馬車の移動では、空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)は使わなかったので、あまり熟睡出来なかった。なので、今日はもうクタクタだ。

 みんなそれぞれお風呂に入ったあと、自分の部屋に行って就寝した。



 それにしても魔剣使いか……着いて早々、イヤな事件に遭ってしまったな。

 僕たちは男の顔も見たし、なんとか早めに解決してあげたいところだけど、そう素直に事が運んでくれるかどうか……。

 ヤツの目的もよく分からないし、とにかく、慎重に行動をしていきたいところだ。


 もう誰も危険な目には遭わせない……そう誓ったのだから。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 深夜、ふとリンは目が覚めてしまう。やはり、ヒロがすぐそばで寝ているということで、少し神経過敏になっているようだ。

 迷宮(ダンジョン)の前の簡易宿泊所では、変な女に一晩中邪魔されて、一つ屋根の下というドキドキ感をまるで楽しめなかった。馬車の移動では、夜は別々のテントだったし。


 ということで、ヒロとまともに近くで寝るのは初めてなのである。年頃の娘が、恋する男の間近で寝ていて、普通で居られるわけが無い。

 一度そういうコトを考え出すと、もはやなかなか寝付けなくなってしまった。



 ちょっとだけ……ヒロの様子が見たい。



 実はどういうわけか、空間裂狭邸館(コモド・アルベルゴ)にある全ての部屋に、カギが付いていない。

 昔使っていたという神人が、そういうコト(・・・・・・)に無頓着だったのか、それとも、千年前はカギを付けないのが普通だったのかは分からない。

 とにかく、ドアは無施錠なのである。


 いけないコトと思いつつ、リンは自分の欲求を抑えきれずに、ヒロの部屋へとこっそり移動した。



 ◇◇◇



 リンは静かに廊下を歩き、ヒロの部屋の前に来る。

 自分の心臓の音がこれでもかというほど大きく耳に届き、顔は沸騰したヤカンのように上気し、頭から湯気が出そうな勢いだった。

 夜中に男子の部屋をこっそり開けるなど、考えてみたことも無かった。

 しかし、愛するヒロの寝姿を一目見てみたい、その純粋な欲求には逆らえなかった……いや、不純な欲求か。

 ふぅーふぅーと深呼吸して、必死に心を落ち着かせる。



 ようやく覚悟を決めて、そっとドアを開けようとすると……







「あれ? リンも夜這いに来たの?」




 口から心臓が出た。本気でそう思うくらいビックリして、後ろを振り返ってみると、麗子が居た。……下着姿で。しかも相当色っぽいデザインのヤツだ。

 単純に言うと、超エロい格好で麗子が居たのだ。


「あ、あ、あんたねえ、ナニ考えてそんな格好で……!」

「え~リンと考えてるコトは同じだと思うんだけど」

「あああああたしはただ、ヒロが風邪引かないように様子見に来ただけよ」

「あなたこの状況でよくそれ言えるわね」

「ほ、本当のコトよっ! あんたは何しに来たのよ!?」

「こっそり添い寝しちゃおうかな~って」

「添い寝!? そんな格好で!?」

「一線越えちゃってもいいかなって思ったから」

「いいいいいいわけないでしょっ!」


「あれ? 2人とも来たんですか?」

「と、友美っ!? あんたまでどうしたの?」

「えっ、だってカギ無いんですよ? 夜這いしますよね、普通」

「普通じゃ無いわよっ! どういう結論よそれっ」

「前から思ってたけど、友美って意外に積極的よね」

「2人とも夜這いじゃ無いんですか?」

「もちろん夜這いよ。ヒロ君と結ばれてもいいわ」

「あたしは違う、本当に違うんだったら!」



 リンは、ただ好きな人の寝顔を見たいと思うだけの自分が、とてつもなく純粋に思えてきた。

 なんなのこの子達は!?

 ちょっと一つ屋根の下で寝るってだけで、どうしてこんなに積極的になれるの?

 というか、2人ともヒロのこと好きなの? からかってるわけじゃ無くて?



「ねえ、こうなったらみんなで一緒にやろうよ。1人だと、ホントはちょっと怖いと思ってたの」

「そうですね、抜け駆けすると、お互い気まずくなりますしね」



 まって、なんかどんどん変な方向に話が進んでいく。

 あたしの、ただ寝顔を見たいっていう純粋な思いは、一体どこに飛ばされたの?



「リンてば、ホント素直じゃ無いんだから。みんなで一緒にしたら(・・・)、これまで以上にチームの団結力上がるよ?」

「そうですよ、これも冒険者活動に必要なことですよ。モタモタしてると、王女様に負けちゃいますよ」


 あれ? そうなのかな? コレってチームのためなのかな?

 確かに、みんなで仲良くなるのは、悪いことじゃないよね?



 だんだんリンの思考がよく分からない状態になっていく。



 ウブな女子達が、やいやいサカっている間に、リンの『超感覚(スーパーセンシティブ)』が妙な音を捉える。それはヒロの部屋から聞こえてきた。

 麗子と友美もそれに気付いて、3人ともじっと耳を澄ます。



「はっ、はあ、はあ……」



 ちょ、これって……え、まさか……男の子のアレ?


「う~ん、やっぱりヒロ君も男の子だからねえ」

「それは、私たちみたいな女子3人と一緒に旅をしてたら、性欲を持て余すということでしょうか?」

「これはいよいよ持って、私たちでヒロ君の欲求不満を解消してあげなくちゃダメなんじゃない?」

「ですね、私、初めてだけど勇木君のために頑張ります!! リンさんも、コレは勇木君のためなんですから、頑張りましょう」



 そっか……コレってヒロのためなんだね?

 男の子はコレでみんな元気になるんだよね?

 そしてチームの団結力も上がるんだよね?

 なんだ、いいこと尽くめじゃないの。悩む必要ないのね?


 リンの洗脳が完了した。



「じゃあ開けるわよ」



 若い男子の部屋をノック無しで開けるなんて、エチケット違反にも程があるが、処女(お子様)な3人はそんなことも気にしないで、ゆっくりとドアを開けていく。

 そして、そのドアの隙間から見たモノは……?




 一生懸命、剣の練習をしているヒロの姿だった。

 ヒロは模擬戦で負けたこと、そして魔剣使いに逃げられたことを気にしていて、夜中起きてしまったのである。

 そのまま目が冴えてしまったので、反省も含めて、身体を動かしていたのだった。


 3人はそっとドアを閉め、自分たちの不純な思いを深く反省し、それぞれの部屋に戻るのだった……。


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