第45話 新たな旅立ち
今回説明文多いです(汗
「よし、準備は全て整った。あとは出発するだけだ」
あれから一週間。
あの時怪我をした人たちも、無事みんな完治したようで、エーアストはすっかり元の日常に戻っていた。
壊れた建物も、建築用の魔法で、速やかに修理が行われた。
この世界には、戦闘系以外にも色んな魔法が存在していて、それは生活用魔法と呼ばれているもので、その道の職人さんとかが、修行の末に習得するモノらしい。
あんな事件があったけれど、宮殿内も町の様子も平和そのものに戻ってくれて、本当に安心している。
今日は僕らパーティーが、このエーアスト王国を離れて、他の国へと旅立つ日だ。まずは一番近いアマトーレ公国に行こうと思っている。
意外にも、この国を訪れたクラスメイトはまだ居ないらしい。小さな国なので、みんなはあえて敬遠して大きな国に向かったとか。
僕らは最初は近い国から行きたかったし、エーアスト王国とも仲の良い国なので、全員一致でアマトーレ公国に決まった。
昨日までに旅の支度を終えて、今日これからみんなで出発する予定だ。
あの日僕が手に入れた力は、この一週間の間に色々検証してある。
まずは、モンスター相手に出来なかった能力解放が出来るようになり、僕に弱点は無くなった。
そして制限時間も、これまでの5分から10分に延びて、少し余裕が出来た。
因みに、ステータスが5倍になるところは変わってなかった。
新しく覚えた『勝利への騎行』は、リン、麗子、友美たちに僕の力を分け与える能力なようで、能力解放をしていなくても使用することが可能だった。
対象となったメンバーは、大幅に戦闘能力が上がり、状態異常も無効になる。ただし、一度に一人にしか掛けられないようで、二人同時には掛けられない。
能力の持続時間は、僕の新しい能力解放と同じ、10分程度のようだ。
『勝利への騎行』の使用限度は1日5回で、そして、1回使う度に、僕の能力解放の時間が1/5くらい縮まる。つまり、5回『勝利への騎行』を使ったら、その日は能力解放が出来ないということだ。
それでも、僕に近い戦闘力を1日5回も出せるというのは、とても大きかった。実際には、5回使用してしまうと僕が能力解放出来なくなるので、1日3回を制限として決めた。この力のおかげで、今後は戦闘での危険もだいぶ減るだろう。
王女を救った『完全治癒』だけど、神人が使えたかどうかは分からないけど、使ったという記録は残っていないようだった。
でもあの時、僕は確信して『完全治癒』を使った。きっと神人も使えたんじゃないかと思ってる。
あとは、今までに習得していた『超越者の目』『詠唱破棄』『完全異常耐性』『思考加速』のほかに、『危険予知』『敵対者解析』『装備進化・壱』というのを習得した。
新しく得た能力は、どれも能力解放状態じゃ無くても使用出来るので、大変ありがたい。
『危険予知』は、探知能力スキルみたいなモノで、何かの危機に反応するようだ。
『敵対者解析』は、モンスターとかを分析する能力みたいで、使用すると弱点等が分かったりする。ただ、強力なモンスターにはまだ使っていないので、どの程度の精度があるのかは不明だ。
『装備進化・壱』というのがちょっと特殊で、なんと装備品に効果スロットを1つだけ追加して、任意の特殊効果を付与出来る能力だった。
例えばこの能力で、剣に『鋭刃化(+1)』というのを付与すると、切れ味が大幅にアップすることになる。
以前、武器屋で剣磨きした時、切れ味がアップしたりしたのは、この能力の片鱗だったようだ。
早速持ってる装備品を強く進化させようと思ったら、能力の使用回数が1日5回が限度だった。さらに、1回能力を使用する度、『勝利への騎行』の使用と同様、能力解放の時間が1/5ずつ短くなる。つまり、5回『装備進化・壱』を使うと、その日は能力解放が出来ないのであった。
世の中そんなに甘くない……いや、充分ありがたい能力なんだけどね。
『勝利への騎行』はともかくとして、戦闘以外のことで能力解放の時間が短くなるのは非常に危険なので、残念だけど『装備進化・壱』は極力使わないことにした。
取り敢えず、古くなった装備を新たに買い直し、『物理ダメージ減少(+1)』『魔法ダメージ減少(+1)』『異常耐性上昇(+1)』『素早さ(+1)』『回避率(+1)』などを、数日に分けて少しずつ付与していった。
そしてリンのミスリルクレイモアには『軽量化(+1)』を、麗子の飛竜狩りには『命中率(+1)』を付与した。
今のところまだ能力には制限があるみたいで、スロットは1つしか付けられないし、付与効果もそれほど強力なモノは付けられないようだ。
僕の新しい能力は、大体こんなところだ。
アルマさんのお店で装備を新調した時に、色々お世話になったお礼にと、売り物の剣に『鋭刃化(+1)』を付与したら、店主さんに「今すぐアルマの婿に来い」と強制させられてちょっと大変だった。
そんなこと勝手に決められたら、アルマさんだって困るだろうに……。
もちろん、丁重にお断りしました。
因みに、僕が日にちを掛けて装備を強化している間、友美には王国の資料室で、さらに色々な知識を増やして貰った。
これで旅の準備はほぼ万全である。
出発までのこの一週間の間に、ユスティーさんやケットさん、ロクアースさんやケイパーさんほか、お世話になった人たちみんなに挨拶をして回った。
みんな寂しがってくれたが、別にこれが永遠の別れになるわけじゃ無い。
これからもエーアストには何度も帰ってくる予定だ。みんなとはまだまだいくらでも会える。
余談ながら、五味君や戸辺留君のチームは、もうしばらくエーアストにお世話になるようだ。
そして今日、いよいよ出発の時間が来たのだった……。
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王国の正門前には、フィーリア王女とアイレさんが見送りに来てくれた。
アマトーレ公国へは、通常の馬車で3日、早馬車で1日半掛かる。僕らは通常の馬車で行く予定だ。
「王女様、アイレさん、わざわざお見送りに来て頂いてありがとうございます」
「ふむ、勇木殿には本当に世話になったからな。エーアストから旅立つのは物寂しく思うが、また戻って来た時には、いつでも稽古にはお付き合いしてやるぞ」
アイレさんは、セクエストロ事件の顛末をほとんど聞かされていなかった。王女が瀕死の重傷を負ったことも知らない。あの事件の真相を知っている者は、ほんの一部の人間以外、ほとんど居ない状態だ。
あの時のセクエストロは、呪いか何かで一時的に人外の力を得て、限界まで暴走した結果、突然苦しみ始めてそのまま死んだことになっている。
「勇木様、色々と本当に有り難うございました。このご恩は一生忘れません」
「こちらこそ、王女様には感謝してもしきれません」
「勇木様を必要としている国が、ほかにもたくさん有るでしょう。旅先ではどうかお気を付けて……」
「ありがとうございます。……では行ってきます」
僕は馬車に向かって歩き出そうとする。
「あ、勇木様、最後にちょっとお話が……。お耳をお貸し頂いていいですか?」
ん? なんだろう?
僕は腰を屈めて王女に耳を近づける。
……チュッ。
「あっ!(友美)」
「えっ?(麗子)」
「なにをっ!?(アイレ)」
「あ~~~~~~~~~~~~っ!!(リン)」
王女は突然、僕の顔を両手で挟み、強引に王女の方を向かせて、僕の唇にキスをしてきたのだった。
「あの時の続きです。おねだりしても、勇木様はして下さらないでしょう?」
「えっ、その、続きって……えっ? えっ?」
僕はあまりのことに、完全に思考が飛んで、頭がパニックになってしまった。
「おっ、おっ、王女様っ、ナニをしてっ、は、はしっ、はしたないですよっ」
「クスッ、ごめんなさいアイレ、先に頂いてしまったわ」
「なあ~っ、お、王女様っ、一体いまのはなんなのっ!?」
「ずるいっ、こんなの職権乱用ですよっ」
「ふふ、まあヒロ君の初めては私なんだけどね」
「そこの皆さん、そろそろ馬車が出発しますよ!」
最後によく分からないハプニングがあったが、僕らは急いで馬車に乗り込んで、エーアストにしばしの別れを告げて出発した。
王女様、アイレさん、どうかお元気で……。
「ヒロいいの? 王女様と離れちゃって。別にこの国にずっと居てもいいのよ?」
「そんなわけにはいかないよ。少しでもこの世界の力になるために、僕らは喚ばれたんだから。いつまでもエーアストだけに居るわけにはいかないさ」
「あのねヒロ君、リンがいま言ったのは、ただのヤキモチなんだからね。女心勉強しないとダメよ」
「なーっ! バカなコト言ってんじゃないわよっ!」
あの日以来、リンは僕のことを「ヒロ」と呼ぶようになった。
なぜか分からないけど、ちょっと懐かしいような気持ちがした。
さあ、これから僕たちの新たな冒険が始まる……。
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王女はやっぱりヒロが好きだった……。
さっきの突然のキスを見て、とうとうリンは確信した。
最大の強敵出現に、さすがに気持ちが凹む。ただ、王女を認めてはいた。
あの時、王女は身を挺してヒロを救ってくれた。あれは自分を救ってくれたのと同じことだ。
いいわ、正々堂々と戦いましょう。
例え王女にだって、絶対にヒロは譲らないんだから!
……そういえば、小鳥遊さんも強敵だった事を思い出す。
大変な男を好きになっちゃったなあと、ちょっとゲンナリ来たが、少し誇らしい気分になるリンだった。
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わたくしは馬鹿ね。あの方を諦めるなんて、絶対に出来るわけ無いと分かっていたのに……。
王女だとか理由を付けて、無理矢理自分を納得させようとしていました。
あの日、瀕死の重傷から助けて頂いた時、勇木様の一部を貰いました。だから、わたくしの中に、勇木様の力を感じることが出来ます。
わたくしはもう迷いません。
王女だなんて関係ない。あの方と必ず添い遂げてみせます。
クスッ、そのためには、王女の特権だって使っちゃうんだから!
……そこには王女ではなく、恋する一人の少女が居るだけだった。
ふう、それにしても勇木様たち、アマトーレ公国に行かれるとは……。
あの子、勇木様に変なことをしなければ良いのですけれど。
アマトーレ公国に居る、1つ年下の幼なじみに、少々不安を覚えるフィーリアであった。
次から第二章に入ります。
二章もどうぞよろしくお願い致します。




