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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第一章 はじまりの王国
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第43話 セクエストロの逆襲

ブックマーク100になりました。皆様のおかげです。

これからもよろしくお願い致します。


 すでに日も暮れて、すっかり暗くなったエーアスト王国の正門前。4人の衛兵が、その入場門を厳重に警備している。基本的に夜は他の全ての出入口が堅く封鎖され、通行する場合はこの正門のみに限られている。

 王国への入り口を守護する衛兵だ。その実力は、もちろん折り紙付きの強者達である。万が一の場合は、ボタン一つで即時に門を遮断することが出来る上、宮殿や各詰め所に一瞬で連絡可能な、高速通信用魔法アイテムも携帯していた。


 いま、夜道を一人で歩いてきたであろう痩せた小柄な男が、フラフラと正門に近づき、その場に居た2人の衛兵に止められる。


「待て、身分を証明出来る物が無ければ、入国させることは出来ないぞ」

「ん? あれ? ……あ、あんたまさか、セクエストロ侯爵じゃ……?」



 2人の衛兵の頭が弾け飛んだ。



 すぐそばで見ていた他の2人の衛兵には、一体何が起こったのか全く理解出来なかった。瞬きしている間に、屈強な守衛である2人の頭が無くなっていたのである。


「こ、こいつ、セクエストロだ、通信を……」


 3人目の頭が弾け飛ぶ。セクエストロはただ歩いているだけだ。

 もはやただ事では無いと、最後の1人はすぐさま門を遮断し、連絡のために高速通信のスイッチを入れようとした。

 4人目の頭が弾け飛んだ……。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「なんだコレ……何か大変なことが起こってる!」


 迷宮(ダンジョン)から馬車で帰ってきた僕たちが、王国に着いて最初に見たのは、グシャグシャに破壊された正門と、火の手が上がっている宮殿だった。

 辺りはすっかり暗くなっている為、宮殿から上がる炎が遠くからでもよく見えた。町の人もざわざわと騒いでいるのが分かる。


「コレ、門を壊されて宮殿が燃えてるって事は、外から来た誰かに攻められてるって事?」

「恐らくそうだと思う。問題は、相手がどこかの軍隊なのか、それともモンスターなのかというところだ」

「軍隊なら戦争ってことだものね。その場合、私たちはどうすればいいのかしら?」

「国同士の問題ですから、一介の冒険者では、間に入りづらいかも知れません」

「しかし、僕らはエーアスト国において召喚されている。決して他人事じゃ無い!」

「そうね、これはあたし達の問題でもあるかもね」

「取り敢えず、急いで宮殿に行ってみよう」


 この場はケットさんと、一緒に馬車に乗ってきたミンクさん達に任せて、僕らは宮殿へと急いだ。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 なんてことだ、一体どうなってるんだ……?


 オルドルは床に倒れたまま、いま目の前で国王守護騎士(キングズガード)と死闘を繰り広げているセクエストロを注視する。

 オルドルはすでに酷い重傷であり、ロクに動くこともままならない状態だ。すぐそばには、先日討伐隊で一緒に行動したユスティーも気を失って倒れている。


「変な男が警備の衛兵を殺して宮殿内に侵入した」という報告を聞き、オルドルが急いで現場に駆けつけてみれば、あの追放されたセクエストロが血まみれでそこに立っていた。

 すぐに捕縛しようとしたが、近づいた刹那、凄まじい殺気を感じて思わず身を引く。次の瞬間、やっと視認出来るほどの凄まじいスピードで、元居た場所をセクエストロの手が薙ぎ払う。

 武器は見えなかったが、いま瞬時に身を引いていなければ、恐らく命を落としていたに違いない。


 セクエストロじゃない……!

 すぐに目の前の人物を訂正して、最大の注意を払って対峙する。


 こいつはあの討伐時のボルゴス以上の存在だ、間違いない。

 あの時は怪我で全力を出せなかったが、今は万全だ。自分の最強の技で、一気に仕留めてやる!


 そう決意して、必殺の技をぶつけたが、いつの間にか自分が倒れていた。

 生きているのが、むしろ僥倖だ。素手のセクエストロに、何をされたのか何一つ分からないまま、自分は戦闘不能にされていた。



 ……アレは人間じゃ無い!



 騒動を知って駆けつけてきた人間達が、次から次へと戦闘不能にさせられていく。明らかに殺された者も居る。

 このままでは全滅だ。

 現在4人の国王守護騎士(キングズガード)が必死に戦っているが、果たして勝てるかどうか……。


 国王守護騎士(キングズガード)の実力は、例えるならSSランク冒険者の中でも高位の存在で、剣技だけならSSランクでも敵う者は居ないだろう。

 それが4人だ。あの時の人形使い(パペットマスター)とボルゴスのコンビでも、彼ら国王守護騎士(キングズガード)に勝つのは容易では無かっただろう。



「我ら4人の連携秘技を喰らえっ! 『七死煉獄破斬セブン・デス・レクイエム』!!」



 4人の国王守護騎士(キングズガード)がいっせいにセクエストロに斬り込み、死角から両腕両脚、腹部、心臓、首を同時に斬り裂く。

 まさに生存不可能な必殺技だ。が、瞬時に斬り口が修復しているのか、セクエストロはまるで意に介さぬといった風に、平然として反撃する。


 無敵だ、コイツ(セクエストロ)を殺す方法が思いつかない……。

 またあの少年に全てを託すしか無いのか……?



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 夕食後、部屋で適当に過ごしていたら、凄い轟音と共に、宮殿を衝撃が襲った。

 何ごとかと思って音のする方に行ってみたら、小柄でひょろい男が、騎士達相手になんだか暴れているようだった。

 こんな時間に宮殿に来るなんて、酔っ払いか何かか?


 この前の討伐隊での失態を帳消しにしようと、この騒動を収めに、五味虫雄はひょろい男を攻撃しようとする。

 さすがにこんなヤツ楽勝だろうと思ったら、目の前で騎士達がまとめてぶっ飛ばされた。一体あんな小柄の男のどこにこんな力が?


 ふと五味虫雄に、先日の出来事が蘇る。実はあの時の恐怖がトラウマになっていて、軽い戦闘恐怖症になっていたのだった。

 横を見ると、同じように騒動に駆けつけた戸辺留元牙や犬飼福之介、盗坂カズオの姿があった。どうやら彼らも、苦い記憶を思い出したようである。


 五味虫雄たち4人は回れ右をして、いっせいにその場から逃げ出したのだった。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 僕たちは宮殿に入り、騒動の元になっているであろう場所に駆け込む。

 そこは王様への謁見の間で、広い床のあちこちに人が倒れていて、そして柱や壁が破壊され尽くしていた。

 その真ん中には、返り血で真っ赤になっている小柄な男が、国王守護騎士(キングズガード)の首を片手で掴んで持ち上げている姿があった。


 まさか、これはこの男一人がやったのか?

 軍隊でもモンスターでも無く、人間一人がこの惨状を作り上げたっていうのか?


 その小柄な男は、掴んでいた国王守護騎士(キングズガード)を軽々と壁に投げつけた。ほかの3人の国王守護騎士(キングズガード)もすでに倒されていたらしく、床に倒れている姿を見つけることが出来た。

 ほかには、オルドルさん、ユスティーさん、アイレさんまでが倒れている。

 待てよ、王女の護衛騎士のアイレさんが居るということは……。



 部屋の隅に、逃げ遅れたであろうフィーリア王女が居た!



 あまりの惨劇に腰でも抜かしてしまっているのか、血の気の引いた顔でしゃがみ込んでいる。

 取り敢えず、比較的近くに居たアイレさんを急いで部屋の外に出す。酷い怪我で、恐らくあちこち骨折しているだろうが、命に別状は無さそうだ。

 僕らは一体何が起こっているのかサッパリ分からないので、まず何をすればいいのか知るためにも、アイレさんに事の詳細を聞く。


「一体何があったんですか?」

「ヤツが……セクエストロが突然宮殿に入ってきて、手当たり次第に殺戮を始めたのだ」

「セクエストロ? あいつセクエストロ侯爵なんですか?」


 あまりの様相に全然気付かなかったが、確かに背格好や雰囲気はセクエストロによく似ている。しかし、あいつにはこんな事をする力など無いはずだ。


「王女様がまだ中に居る……頼む勇木殿、王女様だけでもなんとか逃がしてやってくれ」

「分かってます。あとは僕がなんとかしますので、安心して下さい」

「無茶はするな、ヤツには絶対勝てぬ! 頼む、戦わずに逃げてくれ」

「大丈夫、心配しないで」



 救助に駆けつけた人たちにアイレさんを任せ、リン達にもその場に待機しているように言いつける。

 急がないと王女が危ない!

 僕は再び部屋の中に入って、セクエストロの元へと近づき、能力解放(リベレーション)をした。



 ……おかしい! 能力解放(リベレーション)が出来ない!?


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