第43話 セクエストロの逆襲
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すでに日も暮れて、すっかり暗くなったエーアスト王国の正門前。4人の衛兵が、その入場門を厳重に警備している。基本的に夜は他の全ての出入口が堅く封鎖され、通行する場合はこの正門のみに限られている。
王国への入り口を守護する衛兵だ。その実力は、もちろん折り紙付きの強者達である。万が一の場合は、ボタン一つで即時に門を遮断することが出来る上、宮殿や各詰め所に一瞬で連絡可能な、高速通信用魔法アイテムも携帯していた。
いま、夜道を一人で歩いてきたであろう痩せた小柄な男が、フラフラと正門に近づき、その場に居た2人の衛兵に止められる。
「待て、身分を証明出来る物が無ければ、入国させることは出来ないぞ」
「ん? あれ? ……あ、あんたまさか、セクエストロ侯爵じゃ……?」
2人の衛兵の頭が弾け飛んだ。
すぐそばで見ていた他の2人の衛兵には、一体何が起こったのか全く理解出来なかった。瞬きしている間に、屈強な守衛である2人の頭が無くなっていたのである。
「こ、こいつ、セクエストロだ、通信を……」
3人目の頭が弾け飛ぶ。セクエストロはただ歩いているだけだ。
もはやただ事では無いと、最後の1人はすぐさま門を遮断し、連絡のために高速通信のスイッチを入れようとした。
4人目の頭が弾け飛んだ……。
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「なんだコレ……何か大変なことが起こってる!」
迷宮から馬車で帰ってきた僕たちが、王国に着いて最初に見たのは、グシャグシャに破壊された正門と、火の手が上がっている宮殿だった。
辺りはすっかり暗くなっている為、宮殿から上がる炎が遠くからでもよく見えた。町の人もざわざわと騒いでいるのが分かる。
「コレ、門を壊されて宮殿が燃えてるって事は、外から来た誰かに攻められてるって事?」
「恐らくそうだと思う。問題は、相手がどこかの軍隊なのか、それともモンスターなのかというところだ」
「軍隊なら戦争ってことだものね。その場合、私たちはどうすればいいのかしら?」
「国同士の問題ですから、一介の冒険者では、間に入りづらいかも知れません」
「しかし、僕らはエーアスト国において召喚されている。決して他人事じゃ無い!」
「そうね、これはあたし達の問題でもあるかもね」
「取り敢えず、急いで宮殿に行ってみよう」
この場はケットさんと、一緒に馬車に乗ってきたミンクさん達に任せて、僕らは宮殿へと急いだ。
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なんてことだ、一体どうなってるんだ……?
オルドルは床に倒れたまま、いま目の前で国王守護騎士と死闘を繰り広げているセクエストロを注視する。
オルドルはすでに酷い重傷であり、ロクに動くこともままならない状態だ。すぐそばには、先日討伐隊で一緒に行動したユスティーも気を失って倒れている。
「変な男が警備の衛兵を殺して宮殿内に侵入した」という報告を聞き、オルドルが急いで現場に駆けつけてみれば、あの追放されたセクエストロが血まみれでそこに立っていた。
すぐに捕縛しようとしたが、近づいた刹那、凄まじい殺気を感じて思わず身を引く。次の瞬間、やっと視認出来るほどの凄まじいスピードで、元居た場所をセクエストロの手が薙ぎ払う。
武器は見えなかったが、いま瞬時に身を引いていなければ、恐らく命を落としていたに違いない。
セクエストロじゃない……!
すぐに目の前の人物を訂正して、最大の注意を払って対峙する。
こいつはあの討伐時のボルゴス以上の存在だ、間違いない。
あの時は怪我で全力を出せなかったが、今は万全だ。自分の最強の技で、一気に仕留めてやる!
そう決意して、必殺の技をぶつけたが、いつの間にか自分が倒れていた。
生きているのが、むしろ僥倖だ。素手のセクエストロに、何をされたのか何一つ分からないまま、自分は戦闘不能にされていた。
……アレは人間じゃ無い!
騒動を知って駆けつけてきた人間達が、次から次へと戦闘不能にさせられていく。明らかに殺された者も居る。
このままでは全滅だ。
現在4人の国王守護騎士が必死に戦っているが、果たして勝てるかどうか……。
国王守護騎士の実力は、例えるならSSランク冒険者の中でも高位の存在で、剣技だけならSSランクでも敵う者は居ないだろう。
それが4人だ。あの時の人形使いとボルゴスのコンビでも、彼ら国王守護騎士に勝つのは容易では無かっただろう。
「我ら4人の連携秘技を喰らえっ! 『七死煉獄破斬』!!」
4人の国王守護騎士がいっせいにセクエストロに斬り込み、死角から両腕両脚、腹部、心臓、首を同時に斬り裂く。
まさに生存不可能な必殺技だ。が、瞬時に斬り口が修復しているのか、セクエストロはまるで意に介さぬといった風に、平然として反撃する。
無敵だ、コイツを殺す方法が思いつかない……。
またあの少年に全てを託すしか無いのか……?
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夕食後、部屋で適当に過ごしていたら、凄い轟音と共に、宮殿を衝撃が襲った。
何ごとかと思って音のする方に行ってみたら、小柄でひょろい男が、騎士達相手になんだか暴れているようだった。
こんな時間に宮殿に来るなんて、酔っ払いか何かか?
この前の討伐隊での失態を帳消しにしようと、この騒動を収めに、五味虫雄はひょろい男を攻撃しようとする。
さすがにこんなヤツ楽勝だろうと思ったら、目の前で騎士達がまとめてぶっ飛ばされた。一体あんな小柄の男のどこにこんな力が?
ふと五味虫雄に、先日の出来事が蘇る。実はあの時の恐怖がトラウマになっていて、軽い戦闘恐怖症になっていたのだった。
横を見ると、同じように騒動に駆けつけた戸辺留元牙や犬飼福之介、盗坂カズオの姿があった。どうやら彼らも、苦い記憶を思い出したようである。
五味虫雄たち4人は回れ右をして、いっせいにその場から逃げ出したのだった。
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僕たちは宮殿に入り、騒動の元になっているであろう場所に駆け込む。
そこは王様への謁見の間で、広い床のあちこちに人が倒れていて、そして柱や壁が破壊され尽くしていた。
その真ん中には、返り血で真っ赤になっている小柄な男が、国王守護騎士の首を片手で掴んで持ち上げている姿があった。
まさか、これはこの男一人がやったのか?
軍隊でもモンスターでも無く、人間一人がこの惨状を作り上げたっていうのか?
その小柄な男は、掴んでいた国王守護騎士を軽々と壁に投げつけた。ほかの3人の国王守護騎士もすでに倒されていたらしく、床に倒れている姿を見つけることが出来た。
ほかには、オルドルさん、ユスティーさん、アイレさんまでが倒れている。
待てよ、王女の護衛騎士のアイレさんが居るということは……。
部屋の隅に、逃げ遅れたであろうフィーリア王女が居た!
あまりの惨劇に腰でも抜かしてしまっているのか、血の気の引いた顔でしゃがみ込んでいる。
取り敢えず、比較的近くに居たアイレさんを急いで部屋の外に出す。酷い怪我で、恐らくあちこち骨折しているだろうが、命に別状は無さそうだ。
僕らは一体何が起こっているのかサッパリ分からないので、まず何をすればいいのか知るためにも、アイレさんに事の詳細を聞く。
「一体何があったんですか?」
「ヤツが……セクエストロが突然宮殿に入ってきて、手当たり次第に殺戮を始めたのだ」
「セクエストロ? あいつセクエストロ侯爵なんですか?」
あまりの様相に全然気付かなかったが、確かに背格好や雰囲気はセクエストロによく似ている。しかし、あいつにはこんな事をする力など無いはずだ。
「王女様がまだ中に居る……頼む勇木殿、王女様だけでもなんとか逃がしてやってくれ」
「分かってます。あとは僕がなんとかしますので、安心して下さい」
「無茶はするな、ヤツには絶対勝てぬ! 頼む、戦わずに逃げてくれ」
「大丈夫、心配しないで」
救助に駆けつけた人たちにアイレさんを任せ、リン達にもその場に待機しているように言いつける。
急がないと王女が危ない!
僕は再び部屋の中に入って、セクエストロの元へと近づき、能力解放をした。
……おかしい! 能力解放が出来ない!?




