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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第一章 はじまりの王国
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第38話 幸運の石?


 3日ほど色々あったけど、今日から冒険者活動を再開しようと、みんなでギルドへと向かう。

 活動に少し間が開いてしまったし、今日はとてもイイ天気なので、近場の簡単な依頼でも受けて、のんびり狩りをする予定だ。


 もう少しでギルドに到着というところで、裏道に抜ける細い通りから、女性の声が聞こえてきた。どうも何か揉めているような感じだったので、僕ら全員で声のする方へ行ってみることに。

 そこには男3人と、僕らと同い年くらいの女の子が居て、女の子が必死に何かをお願いしているようだった。



「返済は一週間後って約束だったじゃないですか」

「おっとスマンなあ。事情によってもう待てなくなったのさ」

「お願いします、必ずお金は用意しますから、あとちょっとだけ待って下さい」

「なら今日の夕方まで待ってやる。ダメならお前の身体を貰うからな。いいな?」

「……分かりました」

「ぐっひっひ。ではまた夕方過ぎに来るぞ」



 そう言って、少し頭髪の薄い小太りの男と、その付き人らしき大柄な男2人は去って行った。

 どうやら女の子は男から借金をしているようで、その返済を迫られていたようだった。女の子は身体で何かを約束したようだったけど、大丈夫なのか?


「あのう……今そこでお話を聞いてしまったんですけど、僕で良かったら何かお力になりますが……?」

「言うと思った」

「ヒロ君てば、困ってる人を放っておけないもんね」

「勇木君らしいじゃないですか」


「よその人に言うのも恥ずかしいことですが、半年ほど前に私の母が病気になってしまって、治療のためにお金を借りたのです。無事母は良くなったのですが、その時の借金が返せない状態でして……」

「おいくらくらい借りているのですか?」

「金貨300枚です」


 なっ……金貨300枚? そんな大金はさすがに僕らでも……。


「いいんです、おかげで母は助かりましたし、私があの男に自由にされるくらいは我慢すれば良いのですから」


 それがこの世界のルールなのかも知れないけど……なんとかしてあげたい。

 困っている人全員助けようとは思ってはいないのだけれど、知ってしまったからには、やはり無視は出来ない。

 前にテイミッドから貰った金貨と、それから今まで冒険者活動で貯めてきた金貨と魔石を合わせれば、全部で金貨100枚くらいにはなるはずだ。

 それを足しにして貰えば、なんとかもうちょっと待って貰えるかも知れない。


「チームのお金、あの子にあげるんでしょ。いいわよ好きに使って」


 リンが察してくれたようで、僕が口に出す前に了承してくれた。僕のわがままで、みんなで貯めたお金を使ってしまうのは、本当に申し訳ないと思う。


「いいんですよ、勇木君。困ってる人を見過ごせないのが勇木君の良いところなんだし」


 本当に良い仲間を持ったなと、僕は嬉しくてちょっと泣きそうになった。

 みんなの了承を得て、アイテムボックスから金貨等が入った貴重品袋を出して、それを女の子に渡そうとする。


 ……ん? なんか軽いんだけど……?



「あ、そうだ、みんなに言うの忘れてた。一昨日みんなで町を歩いた時、私買い物したんだった」


 麗子が突然告白する。そういやちょっとだけ各自で自由行動したっけ。

 なんか猛烈にイヤな予感がする……。


「最近何かと不運が続いたから、運が良くなるっていう『幸運の宝石(ラッキーストーン)』を買ったの。えーとコレよ、綺麗でしょ。コレでチーム全体の運気が上がるんだって!」


 なん……だと? 僕は全身から汗が噴き出し、動悸が止まらなくなった。


「そ、それで麗子さん、いくら使ったのかな……?」

「んーお値段よく分からなかったから、金貨とか入ってる袋ごと渡したよ。いくらだったんだろうねえ」



 僕はガックリと膝を折り、両手を地面に付けた。終わった……。



「誰よっ、麗子にお金渡したのは!?」

「えーと、そうだ、僕がリンにちょっとアイテムボックスを預けて……」

「リンからそのアイテムボックス渡されたんだけど」

「あたしかあああああああああああっ!」


 なんだこのコントは。



「麗子っ、あんたなんでそんな無駄に使っちゃうの?」

「無駄じゃないわ、コレでチームに幸運が訪れるのよ」

「あーしかもダマされてるううう~っ」

「あのう……その『幸運の宝石(ラッキーストーン)』を貸し金の人にあげてみては如何でしょう。金貨100枚くらいの価値があるんだし、喜んでくれるかも」


 んー友美もちょっとずれてるな。


「分かったわよ、私が責任を取って、身体で稼いでくればいいのね。ああ初めてはヒロ君にあげようと思っていたのに……」

「あんた今さりげなくとんでもないコト言ったわね。……殺すわよ」

「はわわ、リンさんも麗子さんも冗談に聞こえないから怖い……」


 僕らのおかしなやりとりを、女の子は不思議そうな表情で見つめている。


「あの、お金は僕らがなんとかしますから、夕方まで待っていて下さい!」


 このままだと、どんどん収拾不可能な方向に行きそうなので、僕らは一度ここを離れることにした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 現在無一文。女の子には、僕らがなんとかするなんて大きなことを言ってしまったが、夕方までに金貨300枚なんて、普通の方法では無理だ。

 甚だ体裁が悪いが、王国にお金の無心を頼んでみた。



「あー君たちには出来るだけ支援をすると言いましたが、それは無制限というわけではありません。全員に際限なく支援していたら、王国の財はすぐに枯渇してしまいます。金貨300枚などとても無理です。それと、あまり言いたくはありませんが、剣聖様のパーティーならいざ知らず、勇木様のパーティーとなりますと、そこまで手厚い支援は出来かねます」


 ですよねー。

 財政を担当している大臣に、キッパリと断られてしまった。

人形使い(パペットマスター)』を僕が倒したことは、王国にも伝えてないしね。


「すみません勇木様、わたくしとしてはお力になりたいのですけれど、わたくしの一存では決められないことでして……」

「いえ、いいんです王女様、こちらが無理を言っているだけですので」


 僕らは王国には、毎日寝泊まりも食事もお世話になっているし、金貨1枚だけでもいいから欲しいとはちょっと言い出せず、そのまま宮殿をあとにした。



 ◇◇◇



 今カジノに来ている。なんとか銀貨10枚だけ種銭を作ったので、これから勝負して増やすつもりだ。

 因みに、1金貨=10銀貨=100銅貨 となっている。その上は、10金貨=1白金貨、10白金貨=1ミスリル貨だ。


「ヒロ君て、ギャンブルで身を崩すタイプかしらねえ」

「あんたが言える立場じゃないでしょ!」


 あまり賭け事はしたこと無いが、やり方はなんとなく知っている。

 僕はルーレットで勝負することにした。



 ……



 あっという間にあと銀貨1枚になってしまった……。

 僕には賭け事の才能は全く無いらしい。そもそも、こんな方法でお金を増やそうとするのが間違いだったのだ。

 やはりちゃんと働かなくてはダメなんだな。


「ヒロ君、最後は私が賭けていい?」

「いいよ、麗子の好きなところに賭けなよ」

「んーじゃあ『ラッキー7』の7!」


 ルーレットが回る。さすがに1点勝負じゃなあ……当たるわけ無いと思うけど、まあ今さらどこに賭けても同じだろう。



 ……と思ったら、なんとドンピシャで当たった!



 そういや麗子って『幸運体質(ラッキーガール)』じゃないか、すっかり忘れてた。

 僕は麗子に全てを預け、ルーレットを続けさせた。


 ……コイツ伝説作れるぞ。


 連戦連勝、もりもりとお金が増えていく。

 こんな簡単に稼げてしまうと、人生狂ってしまうレベルだ。


「次はどうしようかしら……赤にしようっと!」


 ルーレットのディーラーが、額に汗をにじませて、麗子の賭け目に注意を向ける。途中でディーラーが変わったり、どうもイカサマらしきモノを仕掛けているのではなかろうかという雰囲気だが、それでも麗子が当たってしまうようだ。


 そしてまた当たる。これで金貨100枚だ!

 ここまで行けばあと少し……!



「お客様、申し訳ないのですが、ここらでお引き取り願えませんか?」



 ……あれ?


「何をされてるのか知りませんが、こんな事は異常だ。これ以上無茶されるようなら、こっちにも考えがありますよ」


 なんか怖そうな支配人に、ゲームの中止を言い渡された。ひょっとして、僕らがイカサマしてると思われているんじゃ……?

 いきなり勝ち過ぎちゃったか。何せ、麗子ってば全戦全勝だったもんね。

 もちろん、純粋な運だけで勝っているんだけど、簡単には信じて貰えないだろうし、ここで揉め事を起こすのはさすがにまずい。


 僕らは金貨100枚を手にして、カジノをあとにした。



 ◇◇◇



「麗子すごいわね」

「ディーラーの人、玉を操作してるような投げ方でしたけど、まるで関係なく全部当たってましたもんねえ」

「適当に思いついた数字とか色で賭けてただけなんだけどね」


 なんか麗子って人生チョロそうな生き方しそうで怖いな。



 さて、金貨100枚まで行ったけど、まだ200枚も足らない。

 もうカジノは行けないし、一体どうすればいいのか……。



「勇木君、モンスターで一攫千金を狙ってみてはどうでしょう」


 友美が提案する。


「モンスターで一攫千金?」

「そうです。図鑑で見ましたが、金貨数百枚になる価値のモンスターが、いくつか存在しています」

「でも、僕らで倒せるレベルのモンスターじゃないと……」

「大丈夫です。『アダマンスネイル』というモンスターは弱い上に、全世界に棲息が確認されています。もちろん、エーアストの近くでも発見された記録があります。ただし、超超レアモンスターなので、滅多に見つかるわけでは無いのですが……」

「そのアダマンスネイルの魔石は、金貨200枚くらいにはなるの?」

「恐らく……。ただ、このモンスターは魔石ではなく、含有しているアダマンタイトが凄く高く売れるため、価値が高いとのことです。問題は、アダマンスネイルの狩猟報告が、去年1年間で3件しかないこと。しかも全世界でです。果たして見つかるかどうか……」


 なるほど……しかし、もうそれしか手は無いかもな。



「よし、もう時間が無い。すぐにアダマンスネイルを探しに行こう!」



 ◇◇◇



 僕らはエーアスト近辺で、アダマンスネイルが一番見つかる可能性が高そうな所に移動した。それは10年ほど前に一度だけ発見された記録があるところで、岩場が点在するジメッとした湿原だ。ほかは、夕方までには戻って来れない場所ばかりなので、ここに賭けるしか無い。

 友美の『知識の書(ラジエール)』は見たモノ聞いたモノを全て記憶しているので、こういう時は本当に心強い。以前、友美は自分の能力に失望していたが、とんでもない、素晴らしい能力だと思う。


 取り敢えず、危険にならない程度に各自散らばって、みんなで手分けして探す。

 お互いが離れすぎないように少しずつ移動しながら、湿原を手当たり次第探していくが、やはりなかなか見つからない。

 それも当然で、何せ幻中の幻で、まずお目に掛からない超ド級のレアモンスターだ。そんな簡単に見つかるわけが無い。


 しかし、分かってはいるけど、気持ちは焦る一方で……。

 時間だけが無情に過ぎていく。



 ◇◇◇



 夕方、そろそろ約束の時間に合わせて戻らなくてはいけなくなり、さすがに諦めの色が強くなった。

 こうなったら、貸し金の人になんとか待って貰えるよう頼み込むしかない。

 一応、金貨100枚は用意出来たので、取り敢えず今回はこれで許して貰えるようにお願いしてみるしかないな。

 万が一の場合、王女からもお願いして貰えば、なんとか待って貰えるだろうか? いや、王女をこんなコトに巻き込むわけには……。



「だめ、居なかったわ」

「こちらも見つかりませんでした」


 リンも友美も見つけられなかったようだ。


「うーん、残念ながらこっちもだめ。でもこんな変な子居たよ」


 麗子が貝の大きさ50センチ程もある、大きなカタツムリを抱えて持ってくる。




 ………………そいつだあああーっ!!!




「こ……コレ本物ですよ!」

「ほ、本当に捕まえた! 麗子えらいぞ!」

「え? 探してたのってこの子なの?」

「なんで分からなかったんですか! というより一体何を探してたんですか!?」

「んー『アダマンス・ネイル』だと思って、アダマンタイトの爪を持ったモンスター探してた」

「私言いました! カタツムリ型のモンスターってちゃんと言いました!」


 あーうん、スネイルってカタツムリのことなんだよね……。

 日本語って難しいね。日本語じゃないけど。



「それにしても麗子さん、生きたまま捕獲って……。アダマンスネイルって強力な睡眠効果を掛けてきますよ。慌てて倒そうとしてアダマンスネイルに近づきすぎて、眠らされて失敗ということがよくあるみたいですし。なので、素手で触っていて無事なはずは……」

「え、ホントに? どれどれ?」


 リンがアダマンスネイルを触った瞬間爆睡した。なんで触るかなこの子……。


「え、じゃあひょっとして、麗子はずっと睡眠効果を抵抗成功(レジスト)してるってこと?」

「だと思います。さすが運10000、ハンパないですね」

「コレ、このまま持って行ったら、価値上がるかな?」

「と思いますよ。生きたまま捕獲なんて記録はありませんしね」



 アダマンスネイルを麗子に持たせたまま、僕たちは王国へと帰ることにした。



 ◇◇◇



 なんとかアダマンスネイルを持ち帰って、買い取り屋に持って行くと、金貨300枚の価値が付いた。

 含有しているアダマンタイトの量からは、金貨200枚程度の価値らしいけど、何より生きたままというのが大きかったらしい。きっとこの子はしばらく見世物にされたあと、最終的にはアダマンタイトを取り出されてしまうのだろう。


 アダマンスネイルの運命に少しの同情と、我が元に来てくれたことに多大なる感謝をして、買い取り屋をあとにした。

 これであの女の子は救われるはずだ。



◇◇◇



「ぬぐぐ、お前ら余計なことしおって……分かった、これで完済じゃ、あとは好きにせい」


 貸し金の人は、素直に女の子を諦めてくれたようだ。

 無事一件落着で、一同胸を撫で下ろした。



「本当に皆さんのおかげです。有り難うございました」

「いえ、お役に立てて何よりです」

「あのう……お礼と言ってはなんですが、いま私にはこんな物しか……」


 女の子は、何かチケットらしき物を僕に渡してきた。


「これはエーアストの南にある迷宮(ダンジョン)の入場チケットで、万が一返済に困ったとき、一か八かで挑戦しようと、半年前に整理券を貰っていたのです」

「ええっ、コレくれるの? あたしすごい欲しかったの!」


 ああ、リンが挑戦したがっていた、世界唯一の迷宮内自動生成ダンジョンか!


「チケットの予定日が3日後なのですが、借金返済が早まってしまって、どうにもならなくなってたところでした。もう私には必要の無いモノなので、宜しかったらお使い下さい」

「いや、すごい嬉しいです。ありがたくお受け取り致します」



 いろいろ紆余曲折あったけど、結局最初に麗子が使ってしまった金貨100枚もルーレットで戻ってきたし、全て結果オーライだ。

 これも『幸運体質(ラッキーガール)』の麗子のおかげなのか?



「ね! 『幸運の宝石(ラッキーストーン)』買って良かったでしょ」



 それは絶対関係ないと思う……。


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