第28話 無敵の検証
「リン(さん)ごめんなさい」
麗子と友美がリンに頭を下げる。
「ね、だから言ったでしょ! あたしウソなんか言わないんだから!」
リンは、それはもう身体をこれでもかと仰け反らして、得意気に言い放つ。
まるで天下を取ったようなデカい態度だ。
あのあと、僕は倒れてしまって、みんなで王国まで運んでくれたという。
能力解放を使うと、どうも体力を全て使ってしまうようだ。
これでは無闇と使えないので、しっかり検証をしなければならないだろう。
因みに、倒した暗殺者達はリン達がその場に拘束し、そのことを町で衛兵に報告したらしいが、衛兵達がその場に駆けつけた時には全員殺されていたという。
僕が手加減したことは無駄になってしまった。恐らく、口封じのためだろうが、任務失敗への見せしめも兼ねているのだろう。
……恐ろしい敵だ。
僕らはこれから、こういう奴らを相手にしていかなくてはならないのだ。
綺麗事だけではもうやっていけないかも知れない……。
「それにしても、勇木君の戦闘力は大変なモノでした。間違いなく、Sランク冒険者のユスティーさんよりも遙かに強かったですよ」
「僕が?」
「そうね、尋常じゃ無かったわ。『剣聖』の十六夜君が、今どれだけ強くなっているか知らないけど、それでもヒロ君より強くなっているとは到底思えない」
なんか信じられない。自分がそんな凄い力を出せたなんて……。
「私の推測ですが、勇木君の能力は、相手が人間のとき限定ではないかと思うんです」
「僕の能力は相手が人間の時のみ?」
「そうです。だからモンスター戦では力が出せなかったのです」
「なるほど、さすが友美、イイ分析ね」
「これは確かめなくてはならないわね」
確かにそうかも知れない。
これは絶対に調べなければいけないことだ。
僕らは町に出ることにした。
◇◇◇
「さあ勇木、あの能力を出してみて!」
僕らは町へと出て、能力の検証を始めた。
町を歩く人たちに、勝手ながら戦闘意識を持たせてもらって、僕の能力が発動するのか試してみる。
片っ端からやってみると、すぐに意外なことが分かった。
女性相手には能力解放が出来ない……。
男性相手には普通に発動するのに、女性が対象だと、一切能力解放が出来ないのだ。
そして、発動したり停止したりを続けていると、突然目の前が暗くなって、僕は意識を失ってしまった。
どうやら時間制限があるらしい。
いま狙われては大変だということで、この日は宮殿に戻ることにした。
次の日は、前日の事を踏まえて、一歩進んだ検証をする。
相手が人間種の男なら、エルフでも獣人でも問題無く発動出来るようで、そして発動したあと女性に敵意を向けると、能力は勝手に停止してしまう。
つまり、女性相手にはどうやっても能力が使えないということだ。
五味君との模擬戦で調子が良かったり、アイレさんとの訓練では調子が悪かったりするのは、この辺が原因と思える。
そしてタイムリミットだが、能力解放を使用・停止する度に時間を計っていたところ、合計5分くらいで僕の体力に限界が生じ、意識を失いそうになるほどの疲労を感じてしまった。
先日の暗殺者との戦闘を考えてみても、恐らく5分程度がタイムリミットなのだと思う。そして一度限界を迎えてしまうと、その日はもう能力解放は出来ないようだった。
この日の検証もこれで終了となった。
次の日。
今までは能力解放の検証実験ばかりしていたので、今日はステータスをきっちり確認してみる。
(※習得魔法とスキル技は省略)
【通常時(戦闘モード)】
勇木ヒロ Lv26: 魔法剣士
HP 1045
MP 140
SP 140
STR 122
VIT 123
AGI 119
DEX 118
INT 138
LUK 60
戦闘スキル 剣術D 体術D 魔術D
能力スキル
特殊スキル 超越者の目
【能力解放時】
勇木ヒロ Lv26: 魔法剣士
HP 5225
MP 700
SP 700
STR 610
VIT 615
AGI 595
DEX 590
INT 690
LUK 300
戦闘スキル 剣術SSS 斧術S 槍術S 武術SS 刃術S 体術SS 盾術S
魔術S 神術S
能力スキル 腕力SS 敏捷SS 耐久S 精密SS 魔力操作SSS 異常耐性SSS
看破SSS 隠蔽S 探知能力SS 暗視S
特殊スキル 超越者の目 思考加速 詠唱破棄 完全異常耐性
「スゴいとは思っていたけど、こんなことになってたなんて……」
想像を超える僕のステータスの、そのあまりの凄さに、彼女たちは開いた口が塞がらないといった様相だ。
能力解放時は、全ステータスが5倍になるようだ。
全ての能力が5倍というのは、単純に5倍強くなるのでは無く、能力の相乗作用で10倍以上の効果が出ていると思われる。
さらに、戦闘スキルや能力スキルが凄いことになっているので、恐らく総合的な戦闘力は数十倍に増幅されているだろう。
「このステータス、数値的には多分レベル60そこそこ、Sランク冒険者相当ではないかと思いますが、戦闘スキルと能力スキルが信じられないほど高ランクです。剣術、魔力操作などは最高ランクのSSSですからね。想像を絶する潜在能力ですよ。少なくともSSランク冒険者の強さはあると思います」
「技術スキルSSSランクって、世界に3人しか居ないんでしょ?」
「そうよね、ヒロ君その人達に並んじゃったんだもんね」
どうもイマイチ実感が湧かないんだけどね。そういえば、暗殺者の分身を簡単に見破れたけど、あれは看破SSSのおかげなのかな。
自分の事ながらスキルランクの高さに驚かされるけど、もう一つ気になるのが……。
「新しく習得した特殊スキルのことですね。『思考加速』は、相手の動きがゆっくり見えることに関係していると思います。『完全異常耐性』は、状態異常が無効になるということです。そして『詠唱破棄』が……」
「無詠唱魔法……ってことか」
「そうです。恐らく、神人が持っていたと思われるスキルですね」
「そして神聖魔法も使える、か……」
「勇木、無敵じゃない!」
「いや、モンスターと女性には能力発動出来ないから」
「そうね、モンスターに使えないのは痛いわね」
「まあでも、男相手だけとはいえ充分よ。暗殺とかに変に怯える必要無くなったんだから」
「そうですね、勇木君を倒せる人は、この世界でもそうは居ないでしょうし」
そう言っている間に、タイムリミットの5分が来たようだ。
目の前がクラクラして、油断するとすぐにも意識が飛びそうだ。
「勇木、大丈夫?」
これも僕の能力の大きな弱点だ。
1日たった5分の無敵……今後は使うタイミングにも気を付けなくちゃいけない。いくら無敵だと言ったって、いざという時に使えなかったら意味が無いのだから。
能力解放の全ての検証を終えて、僕らは宮殿へと帰った。
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「ネイバー、フォッラ!」
馬鹿な、オレ達はSSランクのチームだぞ! それがなんで……。
ウルグスはかつて無い恐怖に襲われていた。
冒険者になって20年、ずっと同じチームでやってきた仲間だった。
地道にギルドの依頼をコツコツとこなし、長い時間を掛けて信頼を築き上げ、今では地位も名声も充分な物となっている。
ここまで来るのに越えた死線は1つや2つでは無い。全滅の憂き目にさえ遭ったことはある。
しかし、ここまで窮地に陥ったことは一度も無かった。
いま自分たちは、たった1人の男に壊滅させられそうになっている。
確かに対人戦闘は自分たちの専門外だ。しかし、ここまで一方的にやられるとは思いもしなかった。
「マッセ! ちくしょーっ!」
最後の仲間もやられた。次は自分の番だ。
一か八か自分の最大の技をぶつけるしか無い。そう決意を固めたとき、
ウルグスの首は身体から離れていた……。
「『百手』、ご苦労だったな」
「あの程度なら造作もねーよ」
「連続でスマンが、また始末して欲しいヤツが出来た」
「あー? 『詐欺師』『人形使い』『幻術士』『道具屋』の誰かにやらせろよ」
「奴らは今すぐには呼び戻せない。お前に頼むしか無いのだ」
「仕方ねーな。報酬は倍もらうぜ」
「いいだろう。すぐに頼む」
「了解~!」




