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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第一章 はじまりの王国
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第24話 今の実力

「鉄丸っ、左のデスゲイザーを頼む、三枝は麻痺と即死防御の結界を!」


剣聖(ソードマスター)』十六夜タクヤの指示が、暗いダンジョン内に響く。

 旅立ちからすでに2週間以上経ち、王国での訓練期間と同等の冒険者活動を経た彼ら『最強チーム』は、とあるダンジョンの攻略に来ていた。

 彼らはどちらかというと、安全よりも挑戦することに重きを置いているようで、レベルの上昇はすこぶる順調だったが、いま現在ピンチに陥っていた。


 邪眼を持った一つ目怪物デスゲイザーと、迷宮の監視役ダークセンチネル、そして実体を持たないクリーピングシャドウに囲まれてしまったのだった。

 飛翔しながら攻撃してくるデスゲイザーの邪眼は、最悪一撃死もある強烈なモノだ。悪霊ダークセンチネルは闇属性の魔法を使い、クリーピングシャドウには剣の攻撃が効かない。


 大山鉄丸の『悪魔化(デモナイズ)』は状態異常が無効になるため、デスゲイザーを相手した。十六夜タクヤはダークセンチネルとクリーピングシャドウを引き受け、『結界師(リジェクター)』の三枝よう子は多重結界を張りつつある。

 そして『賢者(ワイズマン)』小鳥遊すみれは……


「出来た! 同時魔法(マルチマジック)火炎焼却(ファイア)土針射撃(ニードルショット)剣雨招来(ソードレイン)!」


 3つの魔法の詠唱が終わり、火炎焼却(ファイア)は物理攻撃の効かないクリーピングシャドウへ、闇属性であるダークセンチネルには光属性である剣雨招来(ソードレイン)を、強力な魔法防御(マジックシールド)を持つデスゲイザーには、物理ダメージ系の土針射撃(ニードルショット)をお見舞いする。

 威力を絞ってなお一撃必殺、賢者の凄まじい魔法攻撃であった。



「さすがだな、小鳥遊。三重魔法(トリプル)が出来るのは、世界でも数人だって話だぞ」

「そんな……みんなが時間を稼いでくれたおかげです」

「なんにせよ、一度ここらで撤退だな」

「そうね、これ以上は無理出来ないわ」

「確かにちょっと無理しすぎた。戻るとするか」


 充分とも言える戦果を上げ、彼らは迷宮を後にした。




 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「この討伐やりたーい!」


 冒険者ギルド内。依頼掲示板から、リンがBランク冒険者向けの討伐クエストを見つけて、それを受けたがった。


「いや、それはまだ早いよ。そもそも僕たちDランクじゃ受けられない依頼だしね。もうちょっとランクとレベル上げてから受けよう」


「えーでも、多分これもう楽勝だよ」

「だーめ。安全重視で行くよ」

「充分安全だってば!」


 まあ確かにリンの言う通り、そのモンスターの討伐に関しては、僕も恐らく問題無いと思う。それくらい力を付けている手応えは充分感じている。

 でも、冒険者ランクが低いから受けられないんだってば。



「ぶー。まあしょうが無いわね。じゃあさ、ちょっと迷宮(ダンジョン)入ってみない?」

迷宮(ダンジョン)? どこの?」

「この国の南にあるヤツ。オルドルさんが言ってたじゃない」

「あーその迷宮(ダンジョン)か」


 オルドルさん曰く、エーアストから馬車で南に数時間行ったところに迷宮(ダンジョン)があるらしい。

 その後聞いた話では、出現する敵もあまり強くなく、初めて入るところとしてはなかなかオススメな迷宮(ダンジョン)らしいけど、事情があってすぐには入れないって事だった。


「ね、あそこ敵もあまり強くないって言うし、ちょっとだけでも行ってみたくない?」

「でも、すぐには入れないって言ってなかったっけ?」

「なんか分かんないけど、取り敢えず行ってみればいいじゃない」

「1日掛かりの移動なのに?」

「それよ! ちょっと旅気分も味わえそうだし」

「んーそんな理由ではちょっと……」


 確かに迷宮(ダンジョン)には興味あるし、初心者向けというなら、まずそこから行ってみたいとは思うけど……。


「リンてば、なんでそんなに迷宮(ダンジョン)行きたいの?」

「そうですよ。迷宮(ダンジョン)なんて暗くてじめじめしてそうで、正直あまり良いイメージ無いんですが」


 麗子と友美が疑問をぶつける。



「ロマンよ、宝物よ、聖剣が欲しいのよ!」



「……」

「……」

「……」


 なんか即物的な欲望に、全員が閉口した。いや、言いたいことは分かるんだけどね。


「なんで聖剣欲しいの?」

「えっ? 冒険者なら誰でも聖剣欲しいもんじゃないの?」

「そりゃまあ欲しいだろうけど、滅多に取れるもんじゃないよ。それに、今のところ、聖剣を必要とするような戦いはしてないんだけど」


 そんな会話をしていると、恐らく横で聞いてたんであろう戦士らしき男が、僕らの会話に入ってきた。


「君らあそこの迷宮(ダンジョン)に行きたいみたいだけど、詳細知ってるの?」

「え? いや、どこで調べていいのか分かりませんし……」

「あそこの迷宮(ダンジョン)は予約制だよ。1日2組しか挑戦出来ないんでね。ギルドで申請すれば、整理券くれるよ」


 1日2組? なんでまたそんな……。


「あそこはこの世界唯一の『迷宮内自動生成ダンジョン』で、入る度に中の迷路が変わってるんだよ。迷宮には魔力が掛かっていて、1回に1組、最大6名までしか中には入れないのさ。それで予約した午前と午後の1日2組が入れるってワケ」


 なんじゃそれ!?


「あそこのダンジョン内の魔物は大したことは無いんだけど、とにかく迷路が難しくて、まだ誰も踏破出来てないんだ。とてもやっかいな迷宮だぞ」


「え、じゃあまだ誰も宝取ってないの? これ絶対聖剣だよ! 行こうよ~」


 踏破不能と言ってるのがどうもリンには聞こえていないようだ。

 まあモンスターが強くないというのであれば、行ってみてもいいかなとは思うけど。


「整理券と言ってましたけど、どれくらい順番待ちなんですか?」

「すげー待ち人数いるぞ。多分半年待ちくらいだ」

「ええ~っ!?」


 リンが悲しみの声を上げる。

 なるほど、オルドルさんの言う通り、すぐには入れないな。

 取り敢えず、整理券貰っておいて損は無いので、ギルドで申請した。

 確かに半年待ちだった。気長に待つか。



 ◇◇◇



 少数のオークが出る狩り場へと、みんなで来た。


「なんで今さらこんな所に来るの?」

「ちょっと確認したいことがあって」

「なにを?」


 そこにオーク1匹が現れた。ちょうどいい。


「リン、あのオークと戦ってみて」

「いいけど瞬殺よ?」


 リンが面倒くさそうにオークへと歩み寄る。


「ほ~れ!」


 ガキンッ。


「あれ?」


 リンの攻撃が、あっさりオークに受け止められる。


「んーなんか調子出ないわね」


 リンがぶんぶんと剣を振り回してオークを攻撃するが、全てオークにいなされる。


「コイツめ、コイツめ!」



「ありゃ~酷い戦い方ね。隙も無いのに、無理矢理一撃で殺そうとしてるわね」

「ステータスが低いと、こんなにも雑な斬り方するんですねえ」


 麗子と友美が、リンの素人のような戦いを見てぼつりと感想を洩らす。

 そうなのだ、いま僕は戦闘モードに意識を切り替えてないので、リンのステータスは上がっていない。戦闘スキルも能力スキルも通常のまま、本来のリンの力のみで戦っているのだが……。


「ステータスの上昇と指示が無いと、こんなにも素人なのねえ」


 うーん、思ってた以上に酷かった。

 普通に戦えば問題無く倒せる相手なのに、能力アップ時のステータスや剣術に頼った戦いをするせいで、こんな相手にも苦戦状態となっている。

 能力アップ時は剣術ランク等も上がるため、多少雑に斬り付けても、勝手に補正されて鋭い攻撃となってくれるのだが、今は単なる雑な剣撃だ。


「リン、一度下がって! 右に躱してから斬れるよ」


 ズサッ!

 僕の言う通りに動いて、リンはようやくオークを仕留めたのだった。




「酷いじゃない! どうしてこんな意地悪するのよ~っ!」


 リンが半泣きで抗議してくる。


「いや、これからより厳しいことに挑戦するに当たって、今の課題を浮き彫りにしたかったんだよ。迷宮(ダンジョン)に挑戦したいなら、なおさら確認しておきたかった。よりいっそう気を引き締めていくためにもね」


 リンも、自分自身の油断や慢心がよく分かってくれたと思う。


「リン、あなたヒロ君が居なかったら、とっくに死んでたかも知れないわね」

「うっ……反省します」


 これで迷宮(ダンジョン)に行っても、油断することは無いだろう。

 この日は僕の能力アップ無しで戦闘をして、みんなそれぞれ自分の動きや役割を再確認したのだった。



 ◇◇◇



 宮殿への帰り道、ふと女性の声が聞こえて、その声のする薄暗い脇道へみんなで行ってみると、ギルドの受付嬢パルレ・ロクアースさんが数人の男達に絡まれていた。

 どうやら絡んでいるのは、ガオナー達4人組のようだ。


「勇木、あいつらぶっ飛ばすから戦闘モードになって!」

「いや待って、あいつらと事を構えると面倒だよ。まずは話し合いから……」

「え~っ?」


 僕はゆっくりと彼らに近づき、穏やかに話し掛ける。


「あのー、嫌がっはぶっ!」


 問答無用でいきなりぶっ飛ばされました。


「お前この前のカス坊主だな、すっこんでろ!」



「だから言ったじゃない」


 リンが呆れかえる。うう、人はわかり合えるってウソなんだね。

 仕方ない、僕は意識を戦闘モードに切り替える。リンの能力は一気に引き上がり、全身から力があふれ出す。


「よっしゃー! あんたらいい加減にしないと泣かすわよ」

「けっ、お前まだレベル20そこそこのDランクだろ? オレたちゃレベル40以上のBランクだぜ。お前らが束になったってゲフッ……」


 リンが素早く相手の懐に入り、剣の柄でボディを打つ。

 リンは現在レベル25だが、ステータスが倍になってる上、能力アップの効果で戦闘スキルや能力スキルが軒並み高い。ゴロツキのようなレベル40には負けないだろう。


「このやろー」

「リン、左に避けてボディに攻撃」


 軽く相手を躱してボディに剣の柄を叩き込むリン。


「こいつ、ふざけっ……」

「リン、しゃがんでアッパー」


 リンは相手の攻撃をダッキングで躱したあと、剣の柄で相手のあごを殴る。

 あーやり過ぎ、あご砕けちゃうよ……。

 あっという間に3人の男達をのしてしまうリン。


「なんだ、このメスガキが一番強かったのかよ。威勢がイイわけだ」


 ガオナーが首を鳴らしてリンの前に立つ。やばい、大丈夫か?


「おらあああっ!」


 ガオナーが振りかぶった瞬間、


「リン、足のスネだ!」


 リンはガオナーの足のスネを思いっきり蹴る。


「ぐあっ」


 踏み込みに力が入らなくなって腰砕けになったところを、あろう事かリンは剣の柄で金的をした。

 同じ男として、それは勘弁してあげて……。


「ほあうっ」


 思わず前屈みになって腰を引いたガオナーに、最後は掌底でアッパーカットを喰らわす。

 完全な白目KOであった。


 やばいと危惧した通りリンはやり過ぎた。大丈夫かな。




「ありがとう~」


 ロクアースさんが僕に抱きついてきた。


「待って! 助けたのあたしよ! なんで?」

「勇木さん、有り難うございます。あなたは私の命の恩人ですう~」

「絶対納得いかない!」



 僕たちはロクアースさんを安全な場所まで送り届けるのだった。



 ◇◇◇



「あのクソアマ、ゼッテーゆるさねえ……」


 ガオナーは、かつて女にここまでコケにされたことは一度も無かった。



「あの女に地獄を見せてやる……」


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