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女神たちには敵わない -The goddess's march-  作者: まるずし
第一章 はじまりの王国
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第22話 雲の上の冒険者達

「あれ? ボク~こんな場所に何しに来たのかな?」


 冒険者ギルドの前で、僕たちは少年と出会った。場違いなところに子供が居たので、不思議に思ったリンが声を掛けたんだけど、迷子にでもなったのかな。

 あれ、まて、この子は……?


「お姉ちゃーん、ボク迷子になっちゃったよう」

「あらやっぱり。どこから来たのか分かる?」

「分かんない。ママに置いて行かれちゃったよー」


 そう言って、少年はリンの胸元へと飛び込む。そしてブレストプレートの隙間から手を突っ込み、何やらリンの胸あたりをまさぐっているように見える。


「ちょっ、ボク、そんなところ触っちゃダメ……」

「どこ居ちゃったんだよー、ママー」

「やだやめてっ……あんっ」


 ひとしきりリンの胸を触った後、次はジロリと品定めするような淫猥な目つきで麗子を見つめ、少年は同じように麗子の胸元に飛び込もうとした。


「んがっ……!」


 麗子は飛び込んでくる少年の頭を片手で押さえつけ、鬼も殺せるような殺気を出しながら、少年にピシャリと警告する。


「……殺すわよ」


 少年は青い顔をして逃げていった。



「麗子~、迷子なんだからそこまでしなくてもいいんじゃない?」

「だめよ、男が女の胸を揉むときは命懸けになるということを、あの年でも知っておいて欲しいわ」


 この前、麗子の胸に顔を押しつけられたけど、アレは僕の命が懸かってましたか……。


「あのー、今の人、小柄だけど子供じゃなくて大人ですよ」

「えっ?」


 リンが驚く。


「小人族の冒険者ですよ。多分装備からすると盗賊でしたね」

「小人族? でも髭生えてなかったわよ」

「それはドワーフ。ホビットですよ、講義でもやりましたよ」


 だと思った。子供にしては、しっかりした冒険者の装備してたもんね。

 リンの顔がみるみると赤くなる……。


「おっぱいただ揉みされたーっ!」


「クスッ、揉まれるほどのおっぱい無いクセに……」


「なんだとおーっ!」


 この2人、相性いいのか悪いのか分からないな。



 ◇◇◇



 まだ気の収まらないリンをなだめて、僕らはギルドに入る。

 今日は初めて依頼を受けようと思っていた。目的無くただ狩りをするのでは無く、何かの狩猟クエストを受けたかったのだ。


 いつまでも安全だけを気にしていたら、冒険者は成り立たない。

 安全度が高い狩り場と違って、狩猟クエストでは何が起こるか分からないが、彼女たちはもう充分強くなった。少しずつ活動範囲を広げても大丈夫だろう。


 ギルドの掲示板で依頼を探していると、ちょうど手頃な狩猟クエストを見つけることが出来た。王国周辺のオーガ10匹の狩猟で、これらは定期的に間引いておかないと、モンスターが増えすぎてしまうのだ。


 依頼の書かれた羊皮紙を持って、受付に申請に行こうとすると、すぐそばに居た4人組のパーティーから声を掛けられた。


「君たちがこの前ボルゴスに絡まれた救世主なんだって? 災難だったね」


 どうもこういう場所で声を掛けられると警戒してしまうけど、とても爽やかで、そしてかなり実力も高そうな冒険者達だった。

 リン達3人も、同じような印象を受けているようだ。


「オレはユスティー・コンフィアンサ。Sランクチームのリーダーをやっている。彼らは仲間のドルークとキャマラードとソキウスだ」


 この人があの正義の味方のユスティーさんか!

 本当にやさしくて頼りになりそうな人だ。

 僕たちもユスティーさん達に自己紹介をした。


「ケイパーから将来有望そうな新人が居ると聞いて、一度会ってみたかったんだ」

「ええっ、僕らが有望だなんてそんな……」

「依頼を受けるのかい? お邪魔で無ければ、オレ達も一緒にその依頼を受けさせて貰ってもいいかな?」

「えっ、いいんですか?」


 願ってもいない申し出だった。

 僕らはだいぶ強くなったとは言え、初めてのことばかりで不安だらけだ。

 オーガもまだ戦ったことが無く、依頼を1ランク下げようかと悩んだほどだった。


「こちらこそ是非宜しくお願い致します」


 僕らは一緒に、オーガの狩猟ポイントへと向かった。



 ◇◇◇



「いやーすごいねー」

「かっこいいわね」

「さすがSランクパーティーです」


 僕らはまず、ユスティーさん達が戦っているところを見学させて貰うことにした。


「アレが理想の魔法剣士なのね」


 リンが感嘆の声を洩らしている。

 ユスティーさんのチームメンバーであるドルークさんは、Aランクの魔法剣士だ。剣に魔法を魔法付与(エンチャント)させて、華麗にオーガを葬り去っている。

 それは僕が目指す戦い方であった。


 もちろん、ユスティーさんも凄い。『剣聖(ソードマスター)』の十六夜君も凄かったけど、さすがに現時点ではユスティーさんの方が上だろう。

 力強い斬撃で、軽々とオーガを斬り捨てている。

 オーガはオークよりもさらに1ランク上のモンスターだけど、まるで相手にならなかった。

 そりゃSランク冒険者だから当たり前か。


 ほか、キャマラードさんはSランクの神官で、ソキウスさんはAランクの魔道士だけど、オーガ相手では出番は無いようだった。


「では次は君たちが戦ってみるかい?」



 コボルトよりもゴブリンは一回り大きく、ゴブリンよりもオークは一回り大きく、そしてオークよりもオーガは一回り大きい。

 オーガはランクとしては下の部類のモンスターとは言え、まだまだ油断出来ない相手だ。気を引き締めて戦いに挑もう。


 と思ったんだけど……。


「そりゃあっ大斬り!」

精密射撃(エイミングショット)!」


 なんかあっさり倒してるな。

 自分の持ってる力を完全に理解した2人は、なかなか頼もしい強さになっていた。

 このレベルのモンスターでは、もう友美の出番は無いようだった。


「君たち凄いねえ……まだレベル17なんでしょ?」

「確かに、ケイパーが将来有望というのも頷ける」


 いや、ケイパーさんと出会った時点では、とても将来有望とは言えない状態だったんですけどね。


「ところで、魔法剣士なのに君は戦わないの?」


 グサアッ。

 やはり気付かれてしまったか……。


「ああいいんです、彼はヒモなんで」


 ニヤニヤしながらリンが口を挟んでくる。

 もはや完全に僕で遊んでるようだ。く、くやじい……。


「いや、君たちチーム内のことだから、オレからは何も言うことは無いよ。今後も頑張ってくれたまえ」



 ◇◇◇



「そういえば、ユスティーさんはボルゴスと対決したと聞いたんですが」


 僕は前にケイパーさんから聞いたことに興味があったので、ユスティーさんに直接聞いてみた。


「ああ、彼の横暴さは目に余るモノがあったからね。もちろん、規約違反にはギルドからのペナルティというのもあるんだけど、彼には力で分からせた方がイイと思ってね」


 かっこいー!


「でもボルゴスも強かったよ。勝ったとは言え、恐ろしい相手だった。これで彼は少し大人しくなったんだが、どうも最近ガオナーというよそ者の冒険者がエーアストに来たらしくてね。4人組のチームなんだが、この男たちも相当タチが悪いらしくて困ってる」


「まだ会ってないんですか?」


「どうやら上手く避けられちゃってるらしくてね。会ったらひとこと言ってやりたいんだが」


「ユスティーさんがエーアスト最高ランクの冒険者ですもんね」


「ははは、オレが最高ランクじゃないよ、ケットが居るよ」


「ケット……さん?」


「『探求者(エクスプローラー)』と呼ばれるほどの探険のスペシャリストだよ。どんな厳しいダンジョンからも無事生還してるSSランクの盗賊さ。まあ戦闘にはあまり向いていないだろうけどね」


「そんな方が居たんですね」


「そもそもSランクのオレなんて、大した冒険者じゃ無いさ。SSランクには、あの七聖剣の1つを取ったミーティスも居るし、『一矢殺し(ワンショットキラー)』と呼ばれてるミーラ・ツイールも居る。『慈愛の女神』リーべ・ファルシュは、エーアスト近辺でも活動してるみたいだし、魔戦斧持った凶悪なのもSSランクには居たな」


「SSSランクにはどんな方が居るんですか?」


「有名なのが、『蜃気楼(ミラージュ)』と呼ばれる程の超絶剣技の天才剣士クラールス・ノア。その剣術は最高を極め、世界に3人しか居ない技術スキルSSSランク保持者のうちの1人となってる。ただ冒険者は引退して、剣神に弟子入りしたって話だけどな」


「剣神?」


「ああ、剣の神様みたいに凄い人が居るんだ。剣神十弟と言って、10人の弟子を持ってる。あの有名なディフェーザ王国の『王国神命十二騎士ファナティック・ガーディアンナイツ』のうち、4人は

剣神の弟子だって話だ」


 なんかスゴイ人居るんだな。


「あとは『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』のフォルス・ヴィグールとか、『武闘王』のペガル・フティパオ。ペガルは帝国の武闘大会3連覇中で獣人の英雄だ。『氷霧の淑女(アイス・レディ)』のフロワ・グラソンは、帝国の大魔道士にも匹敵すると言われてる。精霊魔法も使えるしな」


 精霊魔法は属性魔法とはちょっと違って、精霊そのものと直接契約して、精霊を喚び出して魔法を行使して貰うモノで、人間種が使えない強力な魔法も多かったりする。精霊が直接魔法を使うので、無詠唱なのも特徴らしい。


「以上がSSSランク冒険者の4人だけど、どうも噂では、エーアストに5人目のSSSランクが居るという話なんだよなあ。全くお目に掛かったことは無いんだが」


 こんなに強いユスティーさんよりも、さらに上の冒険者達がそんなに居るなんて、なんかワクワクするな。


「まあオレから言えるのはただ1つ、必ず生きて帰ること。それさえ守っていれば、君たちならすぐにオレを追い越せるさ」


 必ず生きて帰る……それは絶対に守っていきたい。



 ユスティーさんの助力もあって、オーガは軽々10匹以上倒すことが出来た。

 まあ依頼は10匹なんで、それ以上倒しても報酬は変わらないんだけどね。


 オーガを倒した証拠の魔石を持って、僕らは王国へと帰った。


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