第7話 お盆編 2 一言だけ
お目に留めていただき、光栄です。
今回は、お盆編第2話です。
勇助の部屋で、ひいおばあちゃんからイボンヌの昔話を聞く、少しのんびりしたお話になります。
よろしければ、お茶でも飲みながらお楽しみください。
夕餉の片付けを手伝い終えると、勇助は、
「友達とネットゲームの約束してるから!
あとホームズも見せたいし!」
と言い残し、ホームズを抱えてそそくさと自分の部屋へ向かう。
イボンヌは笑いながら、
「夜更カシハ、ダメヨ!」
と声を掛ける。
「はーい!」
勇助は返事をすると、階段を駆け上がった。
部屋に入ると、ひいおばあちゃんが
ゲーミングチェアに腰を掛け、
その横では天使がミケを抱えたまま、
フローリングの上で正座をしている。
(え? 正座……)
勇助はホームズを床に下ろすと、
「お待たせしてごめんね。
フフフエルさん、正座は痛いでしょ。
ベッドに腰掛けてよ」
と促した。
フフフエルは、
「勝手に人の部屋では、さすがに厚かましいかと。フフフ」
と笑い、「では」と言うと、ベッドに腰を掛けた。
ホームズはミケとベッドの上で楽しそうにゴロゴロと喉を鳴らし、お互いを舐め合っている。
勇助はその光景を微笑ましく見つめたあと、ふぅっと息を吐いて本題に入った。
「初めまして、ビスノンナ(ひいおばあちゃん)。
勇助です」
マルゲリータは嬉しそうに、
「ブォナセーラ、勇助」
と挨拶をしてくれた。
勇助は挨拶をすると、床にあぐらをかいて座った。
「あの……単刀直入に聞くけど、ビスノンナはどうして日本に来たの?」
天使とマルゲリータは顔を見合わせると、
天使が「どうぞ」と手で促した。
マルゲリータは小さくうなずく。
「その前に、少しイボンヌの話をするわね。
イボンヌは、長男とフランス人の嫁との間に生まれた初孫なんだけどね、孫の中でも一際変わった子でねぇ。
思い立ったら、誰にも止められない子だったの。
11歳の誕生日に、日本刀が欲しいと言ったりしてね、
ずいぶん困らせられた子なの」
と、楽しそうに笑いながら思い出を話してくれた。
「ある日、家に帰るとイボンヌが日本の正座をしててね。『何してるの?』と聞くと、『将来、武士の妻になる練習をしてる』とか言ったりしてねぇ」
(まぁ、今は極の妻してるけどね……)
と、勇助は心の中で突っ込んだ。
「孫の中でも一番手を焼いた子だったの。
でも、私のお葬式には日本から来てくれたのよ。
その後、うちの家業と同じ日本人と結婚してからは、
一度もお墓に来てくれないの」
「あぁ、確かにそんなところはあるかな(笑)」
「こんな可愛いひ孫までいるのに薄情よねぇ」
勇助は恥ずかしさを隠すように
「で、ビスノンナはマンマに会えたから帰るの?」
と尋ねた。
「ノン!」
「え? ノンって、他に何?」
マルゲリータが言いにくそうにしていると、
フフフエルが、
「シニョーラは、イボンヌさんに『ノンナ(おばあちゃん)』って呼んでほしいそうです」
にこり。
勇助は思わず声を上げた。
「えぇっ! それは無理ゲーじゃない?」
「そうなんですよ」
フフフエルとマルゲリータは顔を見合わせ、微笑んでいる。
「笑ってる場合じゃなくて! 何か考えはあるの?」
と尋ねると、フフフエルは、
「ノープランです」
にこり。
勇助は呆れて天井を見上げた。
「何年に一度は日本に来てチャレンジしてるんですけど、毎回気がついてもらえないのです」
「え! 何回か来てたの?」
天使とひいおばあちゃんは顔を見合わせて、
「フフフ」
そして天使は少し真剣な口調で言った。
「マルゲリータさんは、あちらで優秀な成績を収められたので、来年転生される予定です。
ですから、今回がラストチャンスなのです」
「えぇぇ! 来年は来てくれないの!?」
と、勇助は慌てて言うと、マルゲリータは、
「そうなの。主人のジョバンニとはしばらく会えないから、その間に男性に転生して、今の人生でできなかった大冒険でもしようかと思ってるの」
と、楽しそうに笑った。
(マンマに負けず劣らずぶっ飛んでる……)
「って、優秀な成績って何してたの?」
と、勇助が聞くと天使は、
「行ったら分かります」
と、にこり。
「まだしばらくは行きたくないかな……(苦笑)。
あ、ひいおじいちゃんは何してるの?」
天使はフフフと笑いながら、
「ジョバンニさんは生前、かなりオイタをされてたので、あと五百年ぐらいは転生は難しいでしょうね」
にこり。
(ひいおじいちゃん……何したんだろ……)
「とりあえず、イボンヌさんに気づいてもらえるよう、アピールでもしようかと。フフフ」
と笑う。
「アピールねぇ……」
勇助は、どんなことをするのだろうと考えていると、
「あのぉ、そろそろ……申し訳ありませんが、まだ本日は引率業務がありますので、お暇させていただきますね」
「そっか、ごめん。引率だったね!」
「いえいえ。天使使いが荒くて、一人で全国を受け持っておりますので」
にこり。
「ではまた、失礼します」
そう言うと、ひいおばあちゃんも、天使も、ミケも、ふわっと消えていった。
勇助はホームズを抱きながら、深くため息をついた。
(アピールって……何か嫌な予感しかしないなぁ
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
"おやしろまん"の世界を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
勇助たちの物語は、これから少しずつ広がっていきます。
次回『アピール編』でお会いできたら幸いです。




