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第5話 奉仕(後編)

お目に留めていただいて光栄です。


第5話後編です。


ご町内ヒーロー(?)の初仕事です。

最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

閑静な住宅街の公園の茂みに、様子のおかしい少年とバカデカ猫が、人目を避けるようにしゃがみ込んでいた。


(こ、こ、困る! これは無理! なにコレ!? 元に戻れない! ナニモンなんだよ! これで家にも音成さん家にも、どう説明して行けばいいの! ヤバすぎる!)


頭の中は大混乱だった。


とにかく神様に聞くしかない。


(迷ったら来いって言ってたけど……もう今、人生に迷いそうだよ!)


勇助はタマちゃんを抱え直した。


「よしっ!」


そして、例の駐車場へ向かって全力で走り出した。


一本下駄が、カン! カン! カン! カン! と夜の町に響く。


「え、え!? 音デカっ! 音デカっ! 音デカいよ、おじいちゃん!」


勇助の思いとは裏腹に、一本下駄は想像以上に軽く、とんでもない速さで駆けていた。


恥ずかしさのあまり止まりたかったが、この姿でバカデカサイズのタマちゃんを抱えて立ち止まっているところなんて、絶対に誰にも見られたくない。


勇助はタマちゃんで顔を隠すように走るしかなかった。


「はぁー、はぁー、はぁー」


息を切らせながらも、あっという間に例の駐車場へ辿り着いた。


(……神社がない! ……ちょっ、もう!)


思わずタマちゃんを抱えたまま、


「おじいちゃーん!!」


と叫んだ。すると……


「なんじゃ騒がしいのぉ」


聞き慣れた声がした瞬間、目の前がまた歪んだ。


気が付くと勇助は境内に立っていた。


今度は、あの小さな神様が目の前に立っていた。


変化へんげが、出来たか。でかしたな」


悪びれる様子もなく、満足そうに頷いた。


勇助は少し怒ったように言った。


「それどころじゃないよ! 目の前はグニャグニャだし、下駄はうるさいし、髪の毛変だし! 元に戻れないんだよ!」


神様は動じることなく笑う。


「かっかっかっかぁ! それは難儀じゃな」


神様は長い髭を撫でながら続けた。


「その眼鏡がんきょうは千里眼の力を持っとる。遠見が出来る眼鏡でのぉ。気を張らんと視界が歪むんじゃ」


勇助は思わず、「歪みすぎだよ!」と文句を言った。


神様は、「かっかっかっかぁ!」と笑うばかり。


「下駄は千里を駿足で駆けることが出来る。装束はやしろの使いの姿じゃ」


そこまで言うと神様は少し考え、


「……今風に言うなら『おやしろまん』じゃな」


そう言って、また「かっかっかっかぁ!」と豪快に笑った。


勇助は説明を聞いても、それどころではない。


「笑い事じゃないよ! 何マンか知らないけど! 元に戻れないんだよ‼︎」


すると神様は、


「おっ」


と珍しく小さく声を漏らした。


「すまんすまん。戻す言葉を忘れとったわ」


そう言って、また「かっかっかっかぁ!」と笑う。


「ちょっと! それ大事だよ!」


勇助が思わず叫ぶ。


神様は咳払いを一つすると、


「『きよったま』じゃ。言うてみ?」


と、いつもの軽い口調で言った。


呆れながらも、勇助は言われた通りに呟く。


「…き、きよったま…」


その瞬間、身体の周りがキラキラと光り、気が付くと元の姿に戻っていた。


「やった! 戻った〜!」


と、勇助は歓喜の声を上げる。


そして神様を見つめ直し、


「…………こういう大事なことは事前に教えといてよね、おじいちゃん!」


と、念押しをした。


神様はまた、「かっかっかっかぁ!」と笑う。


「これで人生に迷わんで済んだじゃろ」


そう言うと、笑い声と共に、次の瞬間、再び目の前が歪み、気が付くと勇助は駐車場に立っていた。


(この前も思ったけど、石段省略スタイルね……)


「はぁ……」


思わず大きなため息をつく。


腕の中のタマちゃんもつられるように、野太く「ナァー」と鳴いた。


家の人に迎えに来てもらい、音成さん家へタマちゃんを届けた。


音成さんのおじいちゃんもおばあちゃんも涙ながらに喜んでくれた。


いっぱいお礼を言ってくれたので、勇助は少し照れくさかったけど、とても嬉しい気持ちになった。


そして、猫助けでも神通力は発動することを知った。


ヘトヘトな思いで、ようやく家へ戻ると、ホームズがいつものように「にゃー♪」と駆け寄って出迎えてくれた。


しかし、勇助の足元へ来るとクンクンと匂いを嗅ぎ始める。


「ホームズ?」


勇助がホームズを覗き込むと、ホームズは口を半開きにしたままフレーメン反応を始めた。


「え? オレそんなに臭い?」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


"おやしろまん"の世界を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


勇助たちの物語は、これから少しずつ広がっていきます。


また次のお話でお会いできたら幸いです。

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