第3話 反芻
お目に留めていただいて光栄です。
やっと第3話です。
ゆっくり話が進むので気長にお付き合いください。
勇助は夕餉を済ませ、湯船に浸かりながら今日一日の出来事を思い返していた。
担任との進路相談、謎の神社……。
そして、不思議な神様との出会い。
「あれは……本当だったのかなぁ」
夢だったのか、それとも現実だったのか……。
何度考えても答えは出ない。
けれど、ホームズは本当にいる。
ホームズだけは夢では説明がつかない。
同じことを何度も反芻していると、居間から珍しく楽しそうな父親の声が聞こえてきた。
考えても埒があかない。
勇助は風呂から上がり、濡れた髪をタオルでガシガシと拭きながら居間へ向かった。
「よし! ホームズ!」
玄関で「元いた場所へ返してきなさい」と言っていた其道が、猫じゃらしを片手に本気で遊んでいた。
居間には、若い衆がホームセンターで急遽買い揃えた猫用ベッド、爪とぎ、食器、おもちゃが並び、開封された段ボールが部屋の隅に積まれている。
ホームズは猫じゃらしを追いかけ、
ぴょん!
くるり!
「にゃあ♪」
其道は満足そうに頷く。
若い衆が廊下から声を掛けた。
「オヤジ、ネット注文したキャットタワー、明日の午前中に届きやす」
「わかった」
其道はホームズから目を離さないまま短く答えた。
そのやり取りを見ていた勇助は思わず吹き出しそうになる。
(……パードレ(父さん)、完全に飼う気じゃん)
ホームズは其道の膝へひょいっと飛び乗った。
スリ〜スリ〜
グルルゥ〜ン♪
其道は自然とホームズの頭を優しく撫でていた。
その姿は組を束ねる親分ではなく、一人の猫好きだった。
イボンヌはその様子を見て嬉しそうに笑う。
「フフッ。ヤッパリ猫ニハ勝テテナイネ、アモーレ」
通いの家政婦のカヨさんも、お盆を持ったまま微笑んでいた。
其道は照れ隠しのように咳払いをひとつする。
しかし、その手はホームズの背中を撫でるのをやめようとはしなかった。
勇助は苦笑いを浮かべる。
(ホームズって、本当にすごいな。今日来たばかりなのに、誰に甘えればいいのかちゃんと分かってる。……これが処世術ってやつなのかな)
そう思いながら眺めていると、ホームズが勇助の足元へやって来た。
ホームズは勇助の左膝に前足を掛け、ぐーっと伸びをしながら、
「なぅぉん♪」
勇助はホームズをそっと抱き上げた。
温かいなぁ。毛並みもツルツルだ。
ゴロゴロと喉を鳴らす音。
その温もりを感じながら、夕暮れの神社が脳裏によみがえった。
考えれば考えるほど、答えは出ない。
「……どうしたもんかなぁ」
腕の中のホームズは、勇助を見上げて小さく
「にゃあ」
と鳴く。
勇助は思わず笑った。
「……もう一度、あの神社に行って確かめてみようかな」
ホームズは返事をするように、また
「にゃあ♪」
と鳴いた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
"おやしろまん"の世界を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
勇助たちの物語は、これから少しずつ広がっていきます。
また次のお話でお会いできたら幸いです。




