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第8話 中秋の名月編 1  ドン!

お目に留めていただいて光栄です。


今回から中秋の名月編です。


前回とは違い、少しわちゃわちゃな回に

なるかもですが、

よければ読んでもらえると幸せです。

夏休みも、今日が最終日。


勇助は部屋住みの若い衆たちと一緒に

庭で花火をしている。


「坊ちゃん、若頭の分です」


「うん…」


「これは、顧問からのっす」


「うん……」


「こっちは、俺たちからです」


「あ、ありがとう!」


坊ちゃんのためにと、若頭や顧問、組の人たちが、それぞれ花火セットを爆買いしてくれた。


「ね! 線香花火は何本か束でやろうよ!」


「坊ちゃん、それは危ないですよ!」


「……だよね」


と嗜められつつ、風情よりも効率重視で

義理堅い勇助は、次々に花火を消費する。


庭はモクモクと白い煙が立ち込んでいた。


(花火終わったら、もう一回お風呂入らないとケムケムだぁ)


と、呑気なことを考えていると、

ふと庭先に既視感を覚えた。


目を凝らすと、そこには見覚えのある、

数日前に感動の別れをした

ヨーロピアンな天使が立っていた。


勇助は思わず「うぁ!」と声を出した。


「坊ちゃん?」

と、心配そうに若い衆が声をかけてきた。


「……あ! な、なんでもない!

なんか大きい蝶々がいた気がしただけ!」


勇助は慌てて取り繕うと、天使を見ながら、

そっと二階の自室を指差した。


花火をなんとか片付けて部屋へ戻ると、

天使フフフエルは、正座して待っていた。


勇助は慌ててゲーミングチェアを勧め、

何かあったのではと心配して話を聞くと、


「私、先日のミッション成功により、

二千年ぶりの長期休暇を褒賞として頂きました」


小さくパチパチパチパチ〜。


「は、はい?」


勇助の動揺を置き去りに、天使は嬉しそうに話を続ける。


「そして今回、日本へバケーションに参ります」

にこり。


「本日は取り急ぎ、ご挨拶にと伺いました。

また後日、ゆっくりとお話しいたしましょう」

にこり。


「それでは準備がまだありますので、失礼いたしますね」

にこり。


勇助が呆気に取られ、口を半開きにしているのも、おかまいなしに、フフフエルは笑顔と共に、あっという間に姿を消したのだった。


「……え? どういうこと?」


…………………。


始業式。


勇助が通っているSt.キワミ学園は、幼稚舎から大学までの一貫教育で知られる学校で、

始業式は全校合同で各教室のモニタへ配信される。


勇助は教室でモニタをぼんやり眺めていた。


(あの人……穏やかそうに見えて嵐だよね……)

と、小さくため息をついた。


モニタの向こうでは、高等部の校長先生が話を続けている。


「そして〜あと一つ、急ではありますが〜、

ニナ先生が産休に入られたため、

男子高等部一年の化学基礎の、新しい先生にお越しいただきました。

シェラフ・スマイリー先生です。

先生、こちらにどうぞ」


教室が少しざわつく。


勇助はモニタを見つめ、思わずペンケースを床に落とした。


(なんでいるの………)


…………………。



新人の先生は、肩までのグレイヘアで

日本語が流暢なイタリア生まれの人だった。


それでも勇助は、天使だと確信をしていた。


数日経っても、勇助は授業のたびに、

(なんでいるの……)

と思わずにはいられなかった。


廊下で見かけるたびに、食堂で見かけるたびに、

(なんでいるのーーー‼︎)

と、毎回心の中で叫ぶ日々だった。


モヤモヤしながら過ごしていたある放課後、

勇助は園芸委員当番で花壇に水やりをしていると、


「勇助さん」


と、後ろから呼びかけられた。


振り向くと、そこにはスマイリー先生が立っていた。


「あ”ぁ! やっぱり!」


勇助は半ば叫ぶように声を上げた。


スマイリー先生は、しーっと人差し指を口に当て、

「ここでは目立ちますので、お手伝いいたします。」

にこり。


相変わらず、マイペースな天使だった。


勇助は丸めたホースを持ち、スマイリー先生はジョウロを持って倉庫へ向かって歩き出した。


「説明が遅れて申し訳ありません。

なにぶん、バケーション先を急遽決めたもので、いろいろ下準備が大変でした」

にこり。


「なんで日本なの!」


「面白そうなバケーションを過ごせるかと思いまして」

にこり。


「えぇぇぇ!」


「人間の社会に溶け込むのに、いろいろ下準備が大変でした」

にこり。


「で、バケーションはいつまで?」


「特に決めておりません。二千年ぶりですから」

にこり。


「えぇぇぇ!」


倉庫に用具を戻し、鍵を閉めながら、


「で、天界ルールでOKなの?」


と尋ねると、スマイリー先生はフフフと笑った。


その瞬間、


ドン‼︎‼︎


という音とともに、勇助たちの真横に何かが落ちてきた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


"おやしろまん"の世界を少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。


勇助たちの物語は、これから少しずつ広がっていきます。


また次のお話でお会いできたら幸いです。

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