第四話 避難場所入り
出発の日は、普段と変わらない朝だった。
特別な気持ちになるわけでもなく、
いつも通り家を出て、空港へ向かった。
搭乗手続きを済ませ、保安検査を通る。
周りには旅行や出張と思われる人たちが多く、普段と変わらない雰囲気だった。
自分もその中に混ざっているが、行き先だけが違う。
そう思いながら搭乗した。
機内では、特に変わったことはなかった。
スマホを見ている人や、寝ている人もいる。
客室乗務員の案内もいつも通りだった。
離陸してしばらくすると、窓の外は雲だけになった。
移動しているはずだが、近づいている実感はあまりなかった。
小松空港に到着すると、外の空気は冷たかった。
雪が残っており、足元は滑りやすくなっていた。
小松空港からはタクシーで金沢市へ向かう。
道路の端には雪が積み重なっていて、除雪された跡が残っていた。
気温も低く、車内との温度差がはっきりしていた。
道中、運転手から地震当日の話を聞いた。
揺れの大きさや停電、しばらく続いた混乱のことを、淡々と話していた。
その話を聞いて、少し緊張が出てきた。
……被災地に来ている。
それまではどこか遠い出来事のように感じていたが、
実際に体験した人の話を聞くと、現実として受け取らざるを得なかった。
金沢市内に入ると、街は普段通りの様子だった。
店も開いており、人通りもある。
ニュースで見た光景とは違い、チェーン店やコンビニも並んでいる。
地元と変わらない日常に見えて、少し安心した。
その一方でこの場所に自分が来る意味はあるのか? とも思った。
ホテルに到着し、荷物を置いたあと、避難場所へ向かった。
受付で名前を伝え、登録を行う。
簡単な説明を受け、その場でシフトが決まった。
夜勤が続く予定だった。
日程が具体的に決まったことで、
ようやく自分がここで働くことになるのだと実感した。
……身体がもつだろうか。
そんな不安が、遅れて出てきた。




