表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

第十一話 派遣事務処理

現地で即席メンバーと別れを交わしそれぞれ帰路に着く。

私は年齢のせいか、直ぐには身体が追い付かずホテルで一泊してから帰路となった。

寝る前、ニュースを見たら地元出身の力士が被災地訪問や各センターに全国から炊き出しの支援者が映っていた。温かい食べ物はありがたいだろうなあ…。

皆、何かしら力になりたいのだ。

私もそんな一人になれたかなあ…。などと思いながら眠りについていた。


翌朝、小松空港を離れたがすぐに日常感覚にへ戻れなかった。

身体はまだ夜勤のリズムのままで、どこか覚醒した状態が続いていた。

眠ろうとしても眠れない。現場にいるときの感覚が、そのまま残っている。

飛行機の中で、ようやく少しだけ眠った。

地元の空港に着いたとき、不思議とあの数日が遠く感じられた。


無数に並んでいた避難テント。

即席で集まったメンバー。

避難者との会話。

どれも確かに自分がいた場所のはずなのに、少し現実味が薄れていた。

自分がどれだけ役に立てたのかは分からない。


ただ、一つの大きな経験として、確実に自分の中に残った。

翌日からは通常業務に戻った。


仕事の合間に、派遣報告の手続きを進めていく。

報酬の申請もその一つだった。

滞在は五日間。

その日数で申請を出したが、数日後、修正の連絡が入った。

夜勤が三回だから、支払いは三回分になるという説明だった。

現地では、日勤か夜勤かを自分で選ぶことはできなかった。

結果として、日勤よりも報酬は下がる形になるらしい。

金額そのものに興味はない、がこの仕組みのまま次の後任派遣者が同じ状況になることには、違和感が残った。

現地では感染症が広がっていたが、その情報は事前に十分共有されていなかった。

宿泊についても、「ホテルはない」とされていた一方で、県職員がホテルを利用している場面もあった。

いくつかの点が、うまく噛み合っていないように感じた。


その後、報酬は時給計算に変更され、情報共有についても見直しが行われると説明を受けた。

派遣が続く以上、現場に合わせて調整していく必要があるのだと思う。

非常時の中で、すべてを整えるのが難しいことも理解はできる。

それでも、現場に入る人間にとって、事前の情報と条件は少ないほど不安になる。

日常に戻ってしばらく経っても、あの場所の感覚だけが、少し遅れてついてくるようだった。


足元が揺れないということに、何度か違和感を覚えた。

帰ってきたはずなのに、自分の感覚だけが、まだ能登に置き去りのままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ