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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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『誰か、親バカな兎の眷属を止めてください』

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*





――玉繭《たままゆ》の里本殿にて。



三国《みくに》

(これいつまで続くんだ……)



玉繭《たままゆ》の本殿に戻って来た一行だったが、

その後も雪兎《ゆきと》の親バカは炸裂し、

月糸《つくし》の話は一向に終わる気配がなかった。



何度か義久や著莪、

さらには楓までもが話題を変えようとするも、

誰も雪兎《ゆきと》を止めることができず、

すっかり途方に暮れていた。




そんな中、

一向に話が進まないことに苛立ちを募らせ、

次第に貧乏揺すりまで激しくなっていく三国《みくに》。


その様子を見ていた鬼鹿毛《おにかげ》と月影《つきかげ》は、

焦り始めていた。





紡

「真白様。

 雪兎《ゆきと》様って、本当に月糸《つくし》様のことが

 可愛くて仕方ないんですね!」



隣にいた紡が、

真白へ小さく耳打ちする。



真白は、

その言葉にくすりと笑った。



真白

「えぇ。

 ですが雪兎《ゆきと》様のお話の通り、

 月糸《つくし》様は素晴らしい方ですからね」



少し離れたところで、

その様子を見ていた澪斗《みなと》。



澪斗《みなと》

(……えっ?

 距離、近くない?

 えっ……羨ましい……)



思わず二人をじっと見つめる。



当然、

真白と紡は気づいていなかった。






鬼鹿毛《おにかげ》

(うわぁ!

 もう勘弁してください……)



月影《つきかげ》

「み、三国《みくに》様!

 とりあえずお茶をお召しになって、

 落ち着いて――」



三国《みくに》

「いらねぇ……

 もう我慢できねぇ……」



月影《つきかげ》

(この目は本気だ……!)



三国《みくに》が痺れを切らし、

雪兎《ゆきと》に文句を言おうとした、その時だった。



三国《みくに》

「雪兎《ゆきと》様! いい加減に――」



――ズンッ!



その瞬間、

穏やかだった本殿の空気が一変した。



重く、神聖な神気が

本殿いっぱいに満ちていく。



三国《みくに》

「……っ!」



三国《みくに》の声が止まる。



先ほどまで笑みを浮かべていた真白も、

月糸《つくし》の話が止まらなかった雪兎《ゆきと》も、

すぐさま表情を引き締めた。



誰に言われるまでもなく、

その場にいた眷属たちが一斉に居住まいを正し、

頭を垂れる。




疾風

(この神気……

 一柱様じゃない……!?)



真白

(お一柱様は、

 玉繭《たままゆ》の神様のようですが……


 もうお一柱様の気配は……)



義久

(二柱もの神が、

 同時に現世へ……?


 一体、何事でしょうか)


  


それぞれが胸の内で戸惑いを抱いた、その時、

静まり返った本殿に柔らかな声が響いた。



玉繭《たままゆ》の神

「よいよい……

 皆の者、面を上げよ」




全員

「御意」




静かな返事とともに真白たちが顔を上げると、

そこには優しい笑みを浮かべた玉繭《たままゆ》の神と、

その隣に、冷ややかな表情を浮かべた

もう一柱の神の姿があった。




???

「……雪兎《ゆきと》や」



雪兎《ゆきと》

「……っ!」



名を呼ばれた瞬間、

雪兎《ゆきと》の肩がぴくりと揺れた。



その額には、

いつの間にか冷や汗まで浮かんでいる。




???

「娘の話になると己を見失うゆえ、

 ほどほどにするようにと……

 以前にも忠告したはずですが?」




雪兎《ゆきと》

「…………」



つい先ほどまで楽しそうに話していた雪兎《ゆきと》が、

すっかり黙り込んでしまう。



火の童子《かのこどうじ》

(……あの雪兎《ゆきと》様の口を、

 一言で封じとる……)




雪兎《ゆきと》

「……申し訳ございません! 有明様!」



雪兎《ゆきと》は頭を下げたまま、

間髪入れずに続ける。



雪兎《ゆきと》

「ですが……

 義久殿があまりにも親身になって

 月糸《つくし》の話を聞いてくださるもので、

 つい夢中になってしまいました!」



火の童子《かのこどうじ》

(なんでやねん!!

 義久様、

 何回も話切り上げようとしてたやん!!)



著莪

(義久君、可哀想に……

 雪兎《ゆきと》君って昔から、

 怒られると誰かを巻き込む癖があったけど……

 今も変わってないんだね……)




澪斗《みなと》

(うわぁ……

 なんかこの感じ、

 雫様を思い出すなぁ……)




疾風

(義久様……南無。

 雪兎《ゆきと》様とは、

 なるべく関わらないようにしよう……)



蒼《あお》

(……理不尽)



四方から向けられる同情の視線に、

義久の笑顔がわずかに引きつる。




義久

「…………」




義久

(……なぜでしょう。

 何もしていないはずの私が、

 一番被害を受けている気がします……)




玉繭《たままゆ》の神

「ほっほっほ。

 確かに義久は聞き上手じゃからのぅ」




義久

「玉繭《たままゆ》様まで……」




雪兎《ゆきと》

「はい!

 義久殿があまりにも聞き上手なもので、

 つい調子に乗ってしまいまして……!

 大変申し訳ございませんでした、有明様……」




玉繭《たままゆ》の神

「有明様。

 雪兎《ゆきと》も落ち着いたようですし、

 この辺りでよろしいのではないかのぅ」




月の神・有明

「……雪兎《ゆきと》や。

 そなたが謝罪すべきは、

 そなたの話に付き合わせてしまった

 皆の者に対してではありませんか?」



そう言われて雪兎《ゆきと》は慌てて真白たちに謝罪する。



雪兎《ゆきと》

「ごもっともにございます!

 皆様申し訳ございませんでした!」



真白

「いえ。

 雪兎《ゆきと》様のお話は、

 とても興味深いものでした」



紡

「はい!僕も聞いていて楽しかったです!」



三国《みくに》

「いや、俺は中盤から飽き――」



鬼鹿毛《おにかげ》・月影《つきかげ》

「「三国《みくに》様!!!」」




三国《みくに》

「むぐっ!?」



言い終わるよりも早く、

鬼鹿毛《おにかげ》と月影《つきかげ》の手が三国《みくに》の口を塞いだ。



鬼鹿毛《おにかげ》

「有明様! 玉繭《たままゆ》様!

 大変申し訳ございません!」



月影《つきかげ》

「少々、三国《みくに》様をお借りいたします!

 し、失礼いたします!」



三国《みくに》

「んんんっ!?」



そのまま二人に引きずられるように、

三国《みくに》は広間の奥へ消えていった。




紡

「…………?」




澪斗《みなと》

(……あっちも大変そうだなぁ……)



紡

「連れていかれちゃいましたね……」




澪斗《みなと》

(……天馬を率いる人が脳筋だと、

 周りも大変なんだなぁ……)





広間の奥まで来たところで、

ようやく三国《みくに》の口が解放された。




三国《みくに》

「お前ら、何すん――」



――バンッ!



壁際へ追いやられ、

抗議の声を上げようとした三国《みくに》の顔のすぐ横に、

月影《つきかげ》が勢いよく手をついた。



三国《みくに》

「……っ!?」



月影《つきかげ》

「三国《みくに》様……」



いつもとは違う、

低く真剣な声。




普段のおどおどとした様子からは想像もつかない

月影《つきかげ》の迫力に、

三国《みくに》も思わず口を閉じる。




三国《みくに》

「……なんだよ」


 

月影《つきかげ》

「いい加減になさってください」



隣で見ていた鬼鹿毛《おにかげ》が、

思わず一歩後ずさる。




月影《つきかげ》

「三国《みくに》様はいずれ、

 天馬を率いる立場になられるお方です。


 思ったことを、

 そのまま口にしてよい立場ではありません」




月影《つきかげ》の声は落ち着いていたが、

三国《みくに》を見据えるその目だけは、

まったく笑っていなかった。



鬼鹿毛《おにかげ》

(こ、怖っ……!!


 目が本気だ……!

 月影《つきかげ》、久しぶりに本気で怒ってる……!!)



鬼鹿毛《おにかげ》は、

巻き込まれないようにそっと距離を取った。




月影《つきかげ》

「その一言で、

 兎の眷属との関係に亀裂が入ったとして……


 その責任を、

 どうお取りになるおつもりですか?」




三国《みくに》

「…………」




月影《つきかげ》

「このくらい、

 我慢できなくてどうするんですか?」



三国《みくに》はしばらく黙っていたが、

やがて小さく息を吐いた。




三国《みくに》

「……悪かった」




月影《つきかげ》

「ご理解いただけたのなら、

 それでいいのです。

 では、戻りましょう」




そんな三国《みくに》たちの様子を、

少し離れたところから眺めている者がいた。



火の童子《かのこどうじ》だ。



火の童子《かのこどうじ》

(ほんまにアタイみたいなやっちゃなぁ……


 アタイも雫に、

 よう怒られとったわ……)



その視線が、

三国《みくに》から月影《つきかげ》へと移る。



火の童子《かのこどうじ》

(あの小僧、

 月影《つきかげ》言うたかいな?


 静音みたいなやっちゃな……)



やがて三国《みくに》たちが、

「失礼しました」と広間へ戻ってくる。



三国《みくに》

「…………」



火の童子《かのこどうじ》

「…………」



なぜか、

無言で見つめ合う二人。



三国《みくに》

「……?」



火の童子《かのこどうじ》は三国《みくに》を見つめたまま、

何度か力強く頷いた。



三国《みくに》

「……?」



何を伝えられているのか、

まったく分からない。



それでも三国《みくに》は、

とりあえず小さく会釈を返した。



すると火の童子《かのこどうじ》は、

満足そうにニカッと笑う。



火の童子《かのこどうじ》

(分かるで、三国《みくに》……)



三国《みくに》

(……何だ?)



三国《みくに》が首を傾げている間にも、

広間では話が進んでいた。



話題は、

なぜ玉繭《たままゆ》の神だけでなく、

月の神・有明まで現世へ降りてきたのかということへ移っていた。



月の神・有明

「そなたたちが、真白と紡ですね。

 会えるのを楽しみにしていました。


 それで……

 どちらが真白ですか?」




真白

「有明様、

 お初にお目にかかります。


 僕が真白でございます。

 そして、隣におりますこちらが紡です」




紡は緊張した面持ちで、

慌てて有明へ頭を下げる。




紡

「は、はい!

 ぼ、僕は狐の眷属です!

 紡と申します!」




月の神・有明

「ふふっ。

 そのように緊張せずともよいのですよ。


 それから皆の者、

 雪兎《ゆきと》が迷惑をかけましたね」




真白

「ですが、有明様まで

 現世へ降りてこられたということは……

 何か、

 重大な事態が起きたのでしょうか?」



その言葉に、

本殿の空気がわずかに張りつめた。



禁忌の眷属・真月。

そして、持ち去られた黒曜石。



皆がそのどちらかに関わる話だと思った時――



月糸《つくし》

「違います」



一斉に視線が集まる。



有明の後ろから、

月糸《つくし》がひょこりと顔を出した。



紡

「月糸《つくし》さん!?」



月糸《つくし》

「父様がこうなってしまうと、

 私たちでは止めることができませんので……


 有明様を、

 私がお呼びしてきました」



雪兎《ゆきと》

「…………」



真白

「…………」



三国《みくに》

「…………」



なんとも言えない沈黙が、

本殿に広がっていく。



雪兎《ゆきと》

「……月糸《つくし》。

 私を止めるために、

 有明様をお呼びしたのですか?」



月糸《つくし》

「はい」



雪兎《ゆきと》

「…………」



著莪

「……なるほど」



著莪は、

感心したように月糸《つくし》へ視線を向けた。



著莪

「素晴らしい判断ですね。

 優秀なのは確かなようです」



義久

「えぇ。

 実に的確な判断かと」



雪兎《ゆきと》

「義久殿まで!?」


最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!


次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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