『禁忌の眷属・真月』
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(*˘︶˘*).。.:*
緊迫感にそぐわない間の抜けた声が響く。
真月
「いえいえ、お気になさらず!
ですが、
灰燼様はもうどうにもなりませんゆえ、
そちらは諦めていただきます」
真月は琥珀と軽く会話を交わすと、
真白たちに向き直り、
真月
「取引いたしましょう。
そちらの黒曜石を渡していただき、
僕と琥珀様がここを離れるのを
邪魔しないでいただきたい。
そうしていただければ――
これ以上、貴方たちに危害を加えることなく
僕たちはここを去りましょう」
疾風
「取引だと?
信用できるはずがないだろう……」
三国
「疾風の言うとおりだ!
お前たちは現に鬼鹿毛と楓様を、矢で射抜いた!」
真月
「おやおや……
分かっていらっしゃらないようですね。
あれは――
急所をわざと外した結果ですよ?
本気で命を狙っていたのなら、
どうなっていたか……
貴方たちにも、
お分かりですよね?」
義久
「姿も気配も捉えられず、
的は絶対に外さない射手……鳩、ですか」
真月の要求を前に、
義久は険しい表情を浮かべていた。
三国
「ふざけるな!
そんな取引、信用できるわけないだろ!」
真月
「おやおや。
随分と嫌われてしまったものですねぇ」
三国
「当たり前だ!
鬼鹿毛と楓様を射抜いておいて、よくそんなことが言えるな!」
真月
「ですから――
あれは急所を外したと
申し上げているでしょう?」
三国
「そういう問題じゃない!」
声を荒らげる三国に、
真月は困ったように肩をすくめる。
義久
「…………」
黒曜石を渡せば、
琥珀と共にこの場から逃がすことになる。
かといって拒めば、
あの見えない射手が、
いつ再び矢を放つか分からない。
義久
(さて……どうしましょうか)
真月
「困りましたねぇ……
僕としては、
穏便に済ませたいだけなのですが」
三国
「どの口が言ってるんだ!」
義久が答えを出せずにいた、
その時だった。
なおも言い争う真月と三国。
その隙を見計らい、
真白は義久のすぐ傍へと歩み寄った。
真白
「……義久様」
義久の耳にだけ届く、
かすかな声。
義久
「……?」
視線だけを向けると、
真白がすぐ傍に立っていた。
三国
「大体お前は――!」
三国の声に紛れるように、
真白がそっと義久へ顔を寄せる。
そして、
義久にだけ聞こえる声で短く何事かを囁いた。
義久
「…………」
その言葉に、
義久の瞳がわずかに揺れる。
それもほんの一瞬。
すぐに何事もなかったかのように、
表情を戻した。
真月
「ですから、
僕は取引を持ちかけているのですよ」
三国
「信用できないって
言ってるんだ!」
なおも言い合う二人。
その隙に交わされた、
真白と義久の短いやり取り。
真月が、
それに気づいた様子はなかった。
やがて義久は、
静かに息を吐いた。
義久
「……分かりました」
その声に、
真月と三国の視線が義久へ向く。
義久
「交渉成立です」
三国
「義久様!?」
真月
「……ほう」
真月は、
義久をじっと見つめた。
つい先ほどまで、
要求を呑むべきか迷っていたはず。
それが突然――
交渉を受け入れた。
真月
(……さて)
わずかに目を細めながらも、
口元には相変わらず軽い笑みが浮かんでいる。
真月
(何かありそうですねぇ……
ですが……まあ、いいでしょう。
最優先は黒曜石の回収と、琥珀様の奪還)
それさえ果たせれば、
ここに長居する理由はない。
真月
「では――」
真月が、
ゆっくりと歩き出した。
黒曜石を持つ義久との距離が、
少しずつ縮まっていく。
真白たちは、
その様子を警戒しながら静かに見据えていた。
下手に動けば、
どこから矢が飛んでくるか分からない。
そんな緊張が張り詰める中、
真月はゆっくりと義久の前まで歩み寄る。
そして、
黒曜石へと手を伸ばしたその瞬間――
真白
(――今です)
――カッ!!!
真白の全身から、
凄まじい神気が迸った。
視界を埋め尽くすほどの眩い白光。
真白の浄化の神気が、
一瞬にして辺り一帯を白く染め上げる。
紡
「ま、眩しいですぅ……!」
三国
「っ……!」
誰もが反射的に目を閉じた。
だが、狙いは彼らではない。
真白
「今なら――
射手はこちらを狙えません!」
義久
「ええ!」
その言葉を合図に、
張り詰めていた空気が弾けた。
疾風
「なるほど――そういうことですか!」
三国
「なら、今のうちに!」
見えない射手さえ封じれば――
真月を捕らえられる。
黒曜石も渡さずに済む。
琥珀もここから逃がさない。
――誰もが、そう思った。
だが……真月だけは違った。
眩い白光の中――
彼は最初から、
目を閉じていた。
真白
「……っ!?」
その口元に、
わずかな笑みが浮かぶ。
真月
「なるほど」
ゆっくりと伸ばされた手が、
迷うことなく黒曜石へ触れた。
真月
「これが、
貴方の策でしたか」
義久
「なっ……!?」
真月
「いい手だと思いますよ」
そして、
閉じていた瞳をゆっくりと開く。
真月
「――見えていなければ……ですが」
真白
「……! 待ってください!」
真白は咄嗟に手を伸ばしたが、
その手が届くよりも早く――
真月と琥珀の足元から、
神気が一気に広がった。
真月
「では、皆さん」
いつもの軽い笑みを浮かべたまま、
真月が告げる。
真月
「また、いずれ」
――フッ。
真月と琥珀の姿が、
黒曜石と共にその場から消えた。
あとに残されたのは、
真白たちだけだった。
義久
「…………」
三国
「……逃げられた……?」
静寂が訪れる中、
真白は真月が立っていた場所を、
じっと見つめていた。
真白
「……すみません、義久様。
結局、逃げられてしまいました」
義久
「いいえ。
皆さんがご無事なら、それでよいのです」
そう答えた義久は、
負傷した者たちへと視線を向ける。
義久
「澪斗さん。
負傷者の治療を――」
言いかけて、
義久は目を瞬かせた。
すでに澪斗は、
負傷者の治療に取りかかっていた。
義久
「……もう、
始めてくださっていましたか」
その時、
紡が不思議そうに首を傾げる。
紡
「でも……
あの人、どうして真白様の作戦が
分かったのでしょう……?
僕たちだって、
何をするのか分からなかったのに……」
雪兎
「……それはあの者が、
我ら兎の眷属から出た、
禁忌の眷属だからでしょう」
真白たちの視線が、
一斉に雪兎へ向けられる。
いつもの朗らかな笑みは、
その顔から消えていた。
真白
「……え?」
雪兎
「おそらく、
“先見”の権能で見たのでしょう。
真白殿が、
あの光を放つ未来を――」
全員
「…………!」
その場にいた者たちの表情が、
一斉に強張った。
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(人´∀`).☆.。.:*・゜




