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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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238/258

僕もいるんだけど?

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*

対賢い穢れ人戦――





――ギィンッ!!



甲高い金属音が、

境内に鋭く響き渡る。



疾風と楓の見事な連携に穢れ人は追い詰められていた。




賢い穢れ人

「くっ……!」



氷刀で疾風の太刀を受け止めた、その瞬間。



死角から、

楓の刃が閃いた。



――ザシュッ!



賢い穢れ人

「ぐっ……!」



脇腹を深く斬り裂かれ、

賢い穢れ人の身体が大きく傾く。



賢い穢れ人 

「……っ!」



強引に身体を捻り、

振り向きざまに氷刀を薙ぎ払う。



――ヒュンッ!



楓

「っ!」



楓は素早く後方へ跳び、紙一重で刃をかわした。

楓を遠ざけた穢れ人は、斬られた傷口へ意識を向ける。



本来なら、

瞬く間に塞がるはずの傷が――



ハラ……ハラ……と、



黒い塵となって崩れていく。



さらに、

先ほど疾風に斬られた肩口からも、

黒い粒子が剥がれ落ち――



風に溶けるように消えていった。



賢い穢れ人

(やはり……傷がふさがらない)



今までなら、

どれほど深く斬られようと再生していた。



だが今は違う。斬られた箇所から確実に自分の身体が失われている。



賢い穢れ人

(こいつらの神気ではない……)



賢い穢れ人は疾風と楓二人の得物へ、

素早く視線を走らせる。



賢い穢れ人

「…………!」



そして気づいた。



二人の刃に纏わりつく、微かな白金の輝き。

その神気には覚えがあった。



賢い穢れ人

(あの白狐の神気を、

 こいつらの得物から感じる)



賢い穢れ人はちらりと結界の中の真白を見る。



賢い穢れ人

(そうか……あいつがいる限り――

 我の再生を阻害され続ける。

 ならば、先に消すべきなのは――)



賢い穢れ人

「――あいつだ」



疾風

「よそ見してる暇あんのか?」



疾風が踏み込んだ、次の瞬間。



――ガキィンッ!!



賢い穢れ人

「っ……!」



振り下ろされた太刀を、

氷刀で辛うじて受け止める。



疾風

「さっきまでの威勢はどうした?」



賢い穢れ人

「……黙れ」



互いの刃が、

ぎりぎりと軋む。



その最中――



賢い穢れ人が、

唐突に氷刀を引いた。



疾風

「なっ――!」



拮抗していた力の行き場を失い、疾風の身体が前へ崩れる。疾風は咄嗟に地面へ手をつき、

その勢いのまま身を翻して体勢を立て直した。



その一瞬に生まれた隙を突き、

賢い穢れ人は疾風へ背を向け、駆け出した。



疾風

「おい!

 どこ行くつもりだ!」



疾風の声など、

もはや耳に入っていない。



賢い穢れ人の瞳に映っているのは――



ただ一人真白だけ。

地面を蹴り一直線に結界へと駆ける。



楓

「若様!狙いは真白様です!」



疾風

「行かせるか!!」



疾風と楓が、ほぼ同時に地を蹴った。

左右から迫る二つの刃。



――ヒュンッ!



疾風の横薙ぎを、

賢い穢れ人は身を沈めてかわす。



その頭上を、

刃が風を裂いて通り過ぎた直後――



楓

「逃がさない!」



反対側から楓が斬り込むが、



賢い穢れ人

「――邪魔をするな」



――ガキィンッ!!



氷刀で刃を弾き上げる。



楓

「っ!?」



楓が空中で体勢を崩したその瞬間。



賢い穢れ人の周囲に冷気が渦巻き――

一本の氷槍が形成された。


――ヒュンッ!



楓

「くっ!」



避ける間もなく、

氷槍が楓の脇腹へ深々と突き刺さった。



ドッ!



楓

「ぐっ……!」



身体が大きく仰け反る。



それでも楓は歯を食いしばり、

賢い穢れ人へ刃を向けようとするが――




賢い穢れ人

「しつこい」



――ドゴッ!!



間髪入れず、

強烈な蹴りが腹部へ叩き込まれた。



楓

「がっ……!」



衝撃で氷槍が砕け散り、

楓の身体が地面へ叩きつけられる。



そのまま何度も地面を転がり――



ようやく止まった身体は、

すぐには起き上がらなかった。



疾風

「叔父上!!」




ほんの一瞬、疾風の注意が楓へ向いた。

それを見逃さず――



賢い穢れ人

「お前も邪魔だ」



無数の氷槍が疾風の元へ降り注ぐ。



疾風

「なっ――」



無数の氷槍を弾く疾風の、

がら空きになった胴へ、掌底が叩き込まれた。


――ドンッ!!



疾風

「ぐぁっ!」



疾風の身体も、

後方へ大きく吹き飛ばされる。




紡

「疾風さん!楓さん!」



真白

「っ……!」



結界の中で、

真白が息を呑む。

二人を突破した賢い穢れ人が、

一直線にこちらへ向かってくる。



紡

「ま、真白様!こっちに来ますよ!」



真白

「紡!僕も見えてます!ですが、大丈夫です!

 結界への神気を緩めてはいけません!」



真白たちの結界の前には二人を守る優羽《ゆうは》が立っていた。



優羽《ゆうは》

「紡!大丈夫だから!」




優羽《ゆうは》は振り返らない。



ただ剣を片手に、

迫り来る賢い穢れ人を静かに見据えていた。



優羽《ゆうは》

「ここは通さない!あんたは私が討つ!」



賢い穢れ人

「ならば――お前から消えろ!」



両者が同時に地を蹴った。

次の瞬間――



――ギィンッ!!



刃と刃が激突する。



優羽《ゆうは》

「っ……!」



賢い穢れ人

「ぐっ……!」



お互いに衝撃波で弾かれたようにいったん離れるも、間髪入れずに踏み込み刃が火花を散らす。




――キンッ! ガンッ! ギィンッ!!



目まぐるしく位置を入れ替えながら、

二人の斬撃が交錯する。



優羽《ゆうは》が首筋を狙えば、

賢い穢れ人は紙一重で仰け反る。

そのまま氷刀を下から斬り上げる。



――ヒュッ!



優羽《ゆうは》

「っと……!」



優羽《ゆうは》は半歩退いてかわし、

返す刃で胴を薙ぐ。



賢い穢れ人

「っ!」



――ギィンッ!



間一髪で氷刀が受け止める。

互いに一歩も譲らず、やがて――

二本の刃が真正面から激突した。



――ガァァンッ!!



刀と氷刀が、

ぎりぎりと軋みを上げる。



優羽《ゆうは》

「こんの……っ!」



賢い穢れ人

「っ……しぶとい!」




互いの刃を押し込みながら、

二人の力が真正面からぶつかり合う。




――ピシッ。




優羽《ゆうは》

「――っ!?」



踏みしめていた地面に、一本の亀裂が走る。

その瞬間、氷刀を握る賢い穢れ人の腕に、

さらに力が込められた。



――ズンッ!!



亀裂が一気に広がり、優羽《ゆうは》の足元が崩れ落ちる。

踏ん張りを失ったその一瞬、



賢い穢れ人

「――ふんっ!」



凄まじい腕力が、

氷刀を通して一気に叩き込まれた。



優羽《ゆうは》

「くっ……しまった!」



――ドンッ!!



優羽《ゆうは》は剣ごと押し切られ、

その身体が大きく後方へ弾き飛ばされた。



真白・紡

「「優羽《ゆうは》さん!」」



賢い穢れ人

「…………」



目の前から、

最後の障害が消えた。



疾風、楓、そして優羽《ゆうは》さえも退けた。



その視線が、ゆっくりと真白へ戻る。

結界の向こうにいる白狐まで――

もう、自分を阻む者はいない。



賢い穢れ人

(これで、

 ――終わりだ)



氷刀を握り直し、

真白へ踏み出そうとしたその時だった。



著莪《しゃが》

「僕もいるんだけど。」




最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!

ブクマや評価など頂けたら大変励みになります!

次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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