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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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消えた穢れ人と、異形の気配

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*







緊迫した静寂が支配する玉繭の里――




辺りには、

重苦しい穢れの気配が立ち込めていた。

黒く淀んだ気配が結界へとまとわりつく。



真白《ましろ》はそれを押し返すように、

全身から神気を放ち続けていた。



淡い光を放つ結界が、

穢れに軋むように僅かに揺らぐ。




真白《ましろ》は結界を維持したまま、静かに息を整えた。




真白《ましろ》

「紡《つむぎ》、僕たちがこの玉繭の里へ来たのは――

 封印されていた穢れ人を祓うためです」



激しい戦闘音が響く中でも、

その声だけは不思議なほど紡《つむぎ》の耳に響いた。




真白《ましろ》

「僕たちが今やるべきことは、一つです。」




真白《ましろ》は、

激しい戦いが続く戦場を見渡した。




真白《ましろ》

「あの二体の穢れ人を――

 僕たちの手で祓います。」




紡《つむぎ》

「……はい!」



紡《つむぎ》は力強く頷いた。




真白《ましろ》

「…………」




真白《ましろ》は周囲へ意識を巡らせた。




疾風《はやて》たちと琥珀《こはく》。

火の童子《かのこどうじ》たちと灰燼《かいじん》。




いくつもの神気がぶつかり合い、

大気そのものが震えている。




結界の揺らめく光の向こう、琥珀《こはく》と疾風《はやて》が激しい死闘を繰り広げるそのさらに奥――




そこにあるはずの『存在』を注視した真白《ましろ》は、

息をのんだ。





真白《ましろ》

(もう一体はどこへ?)




確かに二体いたはずだった。




一体は知性を持った穢れ人。




そしてもう一体は、

身体の半分を失った幼い姿の穢れ人。




その真白《ましろ》の視線を追い、紡《つむぎ》も気づく。



紡《つむぎ》

「真白《ましろ》様! あそこに穢れ人がいます!」





だが、すぐに声から勢いが消えた。





紡《つむぎ》

「けど……あれ?

 一体しかいない?

 確か半身だけになった、

 幼い穢れ人がいたはずですけど……」




真白《ましろ》

「ええ。

 僕も、もう一体を探していました」


 


真白《ましろ》は眉を寄せ、

もう一度辺りへ視線を巡らせる。





戦いによって巻き上げられた土煙の向こう。

確かめるように目を凝らしていく。




真白《ましろ》

(おかしい……)



胸の奥に、

冷たいものがじわりと広がった。



紡《つむぎ》

「もしかして、浄化されたのでしょうか?」





否――




浄化されたのなら、

僅かでも穢れの気配が薄くなるはず。




だが、この場を満たす穢れは薄れるどころか――

先ほどよりも、重く濃くなっている。




真白《ましろ》

「…………」




真白《ましろ》はゆっくりと視線を戻した。




そこにいるのは、

たった一体の穢れ人。



俯いたまま、

微動だにしない。



紡《つむぎ》

「真白《ましろ》様……?」




真白《ましろ》

「何かがおかしいです……

 二体いたはずなのに、一体しかいない。

 それなのに――

 穢れの気配は、

 二体いた時よりも濃くなっています……」




真白《ましろ》と紡《つむぎ》が違和感に気づいた――その瞬間だった。




俯いていた穢れ人の首が、

ゆっくりと持ち上がる。

 



ギ……ギギ……。



そして――

異形の気配が蠢いた。



ぐるりと、

あり得ない角度まで穢れ人の首が回った。




穢れ人の濁った瞳が――





離れた場所にいる真白《ましろ》を捉え、

その視線が真っ直ぐにぶつかった。





真白《ましろ》の瞳が、

静かに見開かれる。




ドクン――




心臓が大きく跳ねた。




真白《ましろ》

「まさか――っ!」




足元を揺らすように、

ふらり、ふらりと――



まるで身体の扱い方を忘れた者のように、

穢れ人が揺れながら立ち上がる。



その直後――



ミチミチと、

不気味な骨鳴りを立てながら、

その身体が膨張を始めた。




輪郭が歪み、

骨が軋み、肉が蠢く。




幼子のように小さかった手足が、

異様な速さで伸びていく。




そして――ほんの一瞬。




先ほどまで幼子の姿をしていた穢れ人は、

禍々しい大人の姿へと変貌していた。




濁った眼光が、

真白《ましろ》だけを捉える。



その様子に紡《つむぎ》が息をのんだ次の瞬間。




紡《つむぎ》

「えっ……」




穢れ人が、

地面を砕く勢いで蹴り――




爆風のような圧を伴い、

凄まじい速度で真白《ましろ》めがけて突進してくる。




疾風《はやて》

「まずい! 真白《ましろ》様――っ!」




いち早くその危険を察知した疾風《はやて》が、

真白《ましろ》のもとへ駆けつけようと地を蹴る。




だが――




琥珀《こはく》

「行かせる訳ないだろう」




冷徹な声と共に、

刃が交差し、激しい火花が弾け飛ぶ。




琥珀《こはく》の猛攻が疾風《はやて》を襲う。




疾風《はやて》は攻撃を受け止めながら、

大声で叫んだ。




疾風《はやて》

「三国《みくに》!」




三国《みくに》

「わかってる!任せろ!」




三国《みくに》が真白《ましろ》の元へ跳躍しようとした刹那、

黒い焔がその足元から爆ぜた。




三国《みくに》

「あっつ! 邪魔すんな!」




黒い焔に回避を余儀なくされる三国《みくに》。




その隙を見逃さず、

灰燼《かいじん》が更に黒い焔を放つ。




そんな灰燼《かいじん》を討ち払うべく、

間髪入れずに二つの異なる炎が解き放たれる。





燃えさかる紅蓮の焔と、

静謐にして苛烈な蒼《あお》の焔――




火の童子《かのこどうじ》

「ちっ! 

 蒼《あお》!真白《ましろ》の方へ行けるか!?」




蒼《あお》

「行けるけど――

 間に合わないよ!」





蒼《あお》の叫びと重なるように、大人の姿となった穢れ人が真白《ましろ》の目の前へと迫る。




空気が凝縮し、

押し潰されそうな圧迫感が真白《ましろ》と紡《つむぎ》を襲う。




二人は互いの神気を極限まで高め、

重なり合う光の盾を一気に展開した。




真白《ましろ》・紡《つむぎ》

「「守護の理――守りを!!」」




視界を埋め尽くす眩い光と多層結界。




そこへ、

死神の如き変貌した穢れ人が正面から激突した。




――バリィィィンッ!




最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!


次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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