消えた穢れ人と、異形の気配
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緊迫した静寂が支配する玉繭の里――
辺りには、
重苦しい穢れの気配が立ち込めていた。
黒く淀んだ気配が結界へとまとわりつく。
真白はそれを押し返すように、
全身から神気を放ち続けていた。
淡い光を放つ結界が、
穢れに軋むように僅かに揺らぐ。
真白は結界を維持したまま、静かに息を整えた。
真白
「紡、僕たちがこの玉繭の里へ来たのは――
封印されていた穢れ人を祓うためです」
激しい戦闘音が響く中でも、
その声だけは不思議なほど紡の耳に響いた。
真白
「僕たちが今やるべきことは、一つです。」
真白は、
激しい戦いが続く戦場を見渡した。
真白
「あの二体の穢れ人を――
僕たちの手で祓います。」
紡
「……はい!」
紡は力強く頷いた。
真白
「…………」
真白は周囲へ意識を巡らせた。
疾風たちと琥珀。
火の童子たちと灰燼。
いくつもの神気がぶつかり合い、
大気そのものが震えている。
結界の揺らめく光の向こう、琥珀と疾風が激しい死闘を繰り広げるそのさらに奥――
そこにあるはずの『存在』を注視した真白は、
息をのんだ。
真白
(もう一体はどこへ?)
確かに二体いたはずだった。
一体は知性を持った穢れ人。
そしてもう一体は、
身体の半分を失った幼い姿の穢れ人。
その真白の視線を追い、紡も気づく。
紡
「真白様! あそこに穢れ人がいます!」
だが、すぐに声から勢いが消えた。
紡
「けど……あれ?
一体しかいない?
確か半身だけになった、
幼い穢れ人がいたはずですけど……」
真白
「ええ。
僕も、もう一体を探していました」
真白は眉を寄せ、
もう一度辺りへ視線を巡らせる。
戦いによって巻き上げられた土煙の向こう。
確かめるように目を凝らしていく。
真白
(おかしい……)
胸の奥に、
冷たいものがじわりと広がった。
紡
「もしかして、浄化されたのでしょうか?」
否――
浄化されたのなら、
僅かでも穢れの気配が薄くなるはず。
だが、この場を満たす穢れは薄れるどころか――
先ほどよりも、重く濃くなっている。
真白
「…………」
真白はゆっくりと視線を戻した。
そこにいるのは、
たった一体の穢れ人。
俯いたまま、
微動だにしない。
紡
「真白様……?」
真白
「何かがおかしいです……
二体いたはずなのに、一体しかいない。
それなのに――
穢れの気配は、
二体いた時よりも濃くなっています……」
真白と紡が違和感に気づいた――その瞬間だった。
俯いていた穢れ人の首が、
ゆっくりと持ち上がる。
ギ……ギギ……。
そして――
異形の気配が蠢いた。
ぐるりと、
あり得ない角度まで穢れ人の首が回った。
穢れ人の濁った瞳が――
離れた場所にいる真白を捉え、
その視線が真っ直ぐにぶつかった。
真白の瞳が、
静かに見開かれる。
ドクン――
心臓が大きく跳ねた。
真白
「まさか――っ!」
足元を揺らすように、
ふらり、ふらりと――
まるで身体の扱い方を忘れた者のように、
穢れ人が揺れながら立ち上がる。
その直後――
ミチミチと、
不気味な骨鳴りを立てながら、
その身体が膨張を始めた。
輪郭が歪み、
骨が軋み、肉が蠢く。
幼子のように小さかった手足が、
異様な速さで伸びていく。
そして――ほんの一瞬。
先ほどまで幼子の姿をしていた穢れ人は、
禍々しい大人の姿へと変貌していた。
濁った眼光が、
真白だけを捉える。
その様子に紡が息をのんだ次の瞬間。
紡
「えっ……」
穢れ人が、
地面を砕く勢いで蹴り――
爆風のような圧を伴い、
凄まじい速度で真白めがけて突進してくる。
疾風
「まずい! 真白様――っ!」
いち早くその危険を察知した疾風が、
真白のもとへ駆けつけようと地を蹴る。
だが――
琥珀
「行かせる訳ないだろう」
冷徹な声と共に、
刃が交差し、激しい火花が弾け飛ぶ。
琥珀の猛攻が疾風を襲う。
疾風は攻撃を受け止めながら、
大声で叫んだ。
疾風
「三国!」
三国
「わかってる!任せろ!」
三国が真白の元へ跳躍しようとした刹那、
黒い焔がその足元から爆ぜた。
三国
「あっつ! 邪魔すんな!」
黒い焔に回避を余儀なくされる三国。
その隙を見逃さず、
灰燼が更に黒い焔を放つ。
そんな灰燼を討ち払うべく、
間髪入れずに二つの異なる炎が解き放たれる。
燃えさかる紅蓮の焔と、
静謐にして苛烈な蒼の焔――
火の童子
「ちっ!
蒼!真白の方へ行けるか!?」
蒼
「行けるけど――
間に合わないよ!」
蒼の叫びと重なるように、大人の姿となった穢れ人が真白の目の前へと迫る。
空気が凝縮し、
押し潰されそうな圧迫感が真白と紡を襲う。
二人は互いの神気を極限まで高め、
重なり合う光の盾を一気に展開した。
真白・紡
「「守護の理――守りを!!」」
視界を埋め尽くす眩い光と多層結界。
そこへ、
死神の如き変貌した穢れ人が正面から激突した。
――バリィィィンッ!
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(人´∀`).☆.。.:*・゜




