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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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寝ぼけてないで起きてください!

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*







著莪《しゃが》の振るった剣を、

琥珀《こはく》が真正面から受け止める。



激しく火花が散り、

その横から三国《みくに》が槍を突き出した。



琥珀《こはく》

「っ……邪魔だ!」



琥珀《こはく》は身体を捻って槍をかわすと、

返す刃で三国《みくに》へ斬りかかる。



三国《みくに》

「っ!」



疾風《はやて》

「三国《みくに》!」




疾風《はやて》が割って入り、

再び琥珀《こはく》の剣を受け止める。




そのさらに奥では――




ゴォォォォォッ!!




火の童子《かのこどうじ》と蒼《あお》の焔が、

灰燼《かいじん》の黒い焔と激しくぶつかり合っていた。




その傍らでは、

澪斗《みなと》が灰燼《かいじん》の動きを鋭く見据えている。



紅蓮、蒼炎、黒炎。



三色の焔が戦場を照らし、

凄まじい熱波が周囲を吹き荒れる。




そんな激戦の最中――




紡《つむぎ》

「……うーん……」



微かな声が漏れた。

紡《つむぎ》の指先が、僅かに動く。




続いて、

閉じられていたまぶたが小さく震えた。



紡《つむぎ》

「……ん……」



重いまぶたを何度か瞬かせ、

紡《つむぎ》はゆっくりと目を開いていく。



ぼんやりとした視界。



最初に映ったのは、

自分を覆う淡い結界の光。



そして――



その向こうから、

心配そうに自分を見つめている真白《ましろ》の姿だった。



真白《ましろ》

「……っ!」



紡《つむぎ》の僅かな変化に気づいた瞬間、

真白《ましろ》の表情がぱっと明るくなる。



真白《ましろ》

「紡《つむぎ》!

 目が覚めましたか!?」



だが――



紡《つむぎ》は眠そうに目を細めると、

再びまぶたを閉じかける。




紡《つむぎ》

「真白《ましろ》様ぁ……。

 あと少しだけ……

 寝たいですぅ……」




真白《ましろ》

「…………」




真白《ましろ》は一瞬、ぽかんと紡《つむぎ》を見つめた。




結界の外では――




ドォォォォン!!




爆発音が轟き、

激しい衝撃が結界を震わせる。




真白《ましろ》は外へちらりと視線を向ける。



琥珀《こはく》と斬り結ぶ疾風《はやて》たち。



灰燼《かいじん》の黒い焔を迎え撃つ、火の童子《かのこどうじ》と蒼《あお》。




そして――




再び紡《つむぎ》を見る。




紡《つむぎ》

「……すぅ……」



次の瞬間――




真白《ましろ》

「紡《つむぎ》!寝ないでください!!」






紡《つむぎ》

「ふぇっ!?」




真白《ましろ》

「駄目です!

 今すぐ起きてください!

 寝ぼけてる場合ではないですよ!」




真白《ましろ》の声に紡《つむぎ》は驚いて目を見開く。




紡《つむぎ》

「うわぁー!

 真白《ましろ》様、申し訳ございません……!」




反射的に身体を起こし――




紡《つむぎ》

「……って、あれ?」




きょとんと辺りを見回した。



ガキィィィン!!



剣と槍がぶつかり合う音。



ゴォォォォォッ!!



空を染める紅蓮と黒の焔。



地面を駆ける疾風《はやて》たち。



それらを目にした瞬間――





寝ぼけていた紡《つむぎ》の瞳が、

一気に見開かれる。




紡《つむぎ》

「あっ……!

 って、そうでした!

 今、討伐任務中だった!」




真白《ましろ》

「やっと思い出しましたか……!」




紡《つむぎ》

「なんで僕、

 こんなところで寝てたんですか!?」




真白《ましろ》

「……覚えていないんですか?」




紡《つむぎ》

「えっ?」




紡《つむぎ》は眉を寄せ、

気を失う直前の記憶を辿る。




紡《つむぎ》

「確か……突然琥珀《こはく》って人が現れて……

 話をしていて……」




途切れ途切れだった記憶が、

少しずつ繋がっていく。




紡《つむぎ》

「そうだ!

 あの人に指で押されて……。

 そのあと急に身体が痛くなって――」




紡《つむぎ》の表情が強張る。




無意識に自分の身体へ手を這わせる。



胸、脇腹、腹部。



だが――



紡《つむぎ》

「……あれ?」



痛みがない。

紡《つむぎ》は不思議そうに、

自分の身体を何度も確かめる。



紡《つむぎ》

「痛く……ない?

 それに……

 傷もほとんど治ってる……?」



真白《ましろ》はその様子を見て、

ようやく安心したように表情を緩めた。




真白《ましろ》

「澪斗《みなと》さんが、

 治療してくれたおかげです。」




紡《つむぎ》

「澪斗《みなと》さんが……?」




真白《ましろ》

「はい。

 僕が合流した時、

 紡《つむぎ》は重傷を負って意識を失っていました。」




紡《つむぎ》

「…………」




真白《ましろ》

「澪斗《みなと》さんがすぐに治療してくれたから、

 助かったんです。

 それに――」




真白《ましろ》の視線が、

離れた場所へ向けられる。




そこでは蒼《あお》が、火の童子《かのこどうじ》と並んで灰燼《かいじん》の黒い焔を迎え撃っていた。




真白《ましろ》

「蒼《あお》さんも、

 澪斗《みなと》さんが治療に専念できるように、

 僕たちをずっと守ってくれていました。」




紡《つむぎ》

「蒼《あお》くんも……」




紡《つむぎ》は戦う二人を見つめる。



そして――



ゆっくりと視線を落とした。





紡《つむぎ》

「そんな……。

 僕……

 皆さんに迷惑をかけてしまったんですね……」




先程までの寝ぼけた表情が消え、

紡《つむぎ》の肩が小さく落ちる。




真白《ましろ》

「紡《つむぎ》、迷惑なんかではありません。」





落ち込む紡《つむぎ》に、

真白《ましろ》は優しく声をかける。




紡《つむぎ》

「……真白《ましろ》様?」




真白《ましろ》は紡《つむぎ》の目を真っ直ぐ見つめる。




真白《ましろ》

「みんな、

 紡《つむぎ》を助けたかったから動いたんです。」





その言葉に、

紡《つむぎ》の瞳が僅かに揺れる。





真白《ましろ》

「それに――」




ガキィィィン!!




再び激しい金属音が響いた。




琥珀《こはく》の剣を受け止めた疾風《はやて》が、

その勢いに押されながらも踏みとどまる。




疾風《はやて》

「三国《みくに》!

 右から行け!」




三国《みくに》

「分かってる!

 お前らも合わせろ!」




鬼鹿毛《おにかげ》・影月《かげつき》

「「御意!!!!」」




一方――




ゴォォォォォッ!!




灰燼《かいじん》の黒い焔が大きく膨れ上がる。




火の童子《かのこどうじ》

「蒼《あお》!押し返すで!」




蒼《あお》

「うん!」




戦場では、

今この瞬間も仲間たちが戦い続けている。




真白《ましろ》はその光景を見つめたあと、

再び紡《つむぎ》へ向き直った。





真白《ましろ》

「だから紡《つむぎ》。

 今は反省している場合ではありませんよ。」




真白《ましろ》の表情が、

眷属としての凛としたものへ変わる。




真白《ましろ》

「まだ戦いは終わっていません。

 紡《つむぎ》、すぐに動けそうですか?」



紡《つむぎ》

「……!」





紡《つむぎ》は自分の手を強く握り締める。




紡《つむぎ》

「はい!」




勢いよく立ち上がった瞬間、



少しふらついた――




紡《つむぎ》

「っと……!」




真白《ましろ》

「紡《つむぎ》!?」




紡《つむぎ》

「だ、大丈夫です!

 ちょっと急に立ったからです!」




真白《ましろ》

「本当に大丈夫ですか……?」




紡《つむぎ》

「大丈夫です!」




紡《つむぎ》は今度こそしっかりと両足で立つ。




そして――




先程までとは違う、

真剣な眼差しで戦場を見渡した。




琥珀《こはく》と戦う疾風《はやて》たち。

灰燼《かいじん》と対峙する澪斗《みなと》たち。



紡《つむぎ》は拳をぎゅっと握り締める。




紡《つむぎ》

「僕も……

 もう一度戦えます。」




そして真白《ましろ》へ振り返る。




紡《つむぎ》

「真白《ましろ》様!

 僕は、なにをしたらいいでしょうか!」




その問いに――




真白《ましろ》は戦場を見渡した。




疾風《はやて》たち、澪斗《みなと》たち。




そして――




目の前に戻ってきた、

大切な相棒。




真白《ましろ》の瞳が、

静かに戦況を捉えていく。



最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!


次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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