龍神の眷属を舐めるな!澪斗の反撃
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火の童子
(なんでや……。
確かにアタイと蒼の焔で、
灰燼を飲み込んだはずや。
あの火力なら、
無傷で立っとるなんて有り得へん……。
ほんなら……アタイらの焔は、
一体どこへ消えたんや……?)
火の童子は鋭い視線で灰燼の全身を僅かな違和感すら見逃すまいと観察する。
だが、
焼けた跡一つ見当たらない。
まるで――
焔そのものが最初から存在しなかったかのようだった。
その様子を見た灰燼は楽しそうに、
灰燼
「なんや!
さっきまでの勢いはどないしてん?
自慢の焔が消えてもうて、
何が起きたか分からんか?」
そして灰燼はゆっくりと両腕を広げ、挑発するように笑うと、
灰燼
「くくっ……。
さすがの炎熱爆裂童子も、
自慢の焔が通じへん相手は初めてか?
ビビってもうたか?」
その不気味な余裕が、
空気をさらに張り詰めさせる。
蒼も火の童子の横顔を見つめながら、
あの瞬間を何度も思い返していた。
蒼
(あの時……
灰燼は確かに、
蒼と火の童子の焔の中にいた。
それなのに……
どうして傷一つないの……?
それに……蒼たちの焔は、
一体どこへ消えたの……?)
そこへ――
紡の治療を終えた澪斗が、
蒼と火の童子のもとへ駆けつけた。
澪斗
「火の童子様! 蒼!
戦況はどうなっていますか?」
その声に、
蒼が弾かれたように振り返る。
蒼
「澪斗!
紡は!?
紡は大丈夫なの!?」
不安に揺れる蒼の瞳を見て、
澪斗は安心させるように小さく頷いた。
澪斗
「大丈夫だ。
紡の怪我は治した。
目を覚ますまでは、
真白様が結界で守ってくださってる。
それより――」
澪斗は灰燼へ視線を向けた。
澪斗
「火の童子様たちが苦戦しているようだから、
こっちの援護に行ってくださいって、
真白様が。」
火の童子は、
僅かに眉間へ皺を寄せる。
火の童子
「それがな、澪斗や。
アタイと蒼の焔を食らったはずなのに、
灰燼の奴、焼けた跡すらないねん……
……こんなん、初めてや。」
澪斗の表情が険しくなる。
澪斗
「火の童子様と蒼の焔が……効かない?」
澪斗
「お二人の焔は、
悪しきものを
問答無用で焼き尽くす焔のはず……」
澪斗は口元へ手を添え、
灰燼をじっと観察する。
その視線に気付いた灰燼と、
ふいに視線がぶつかった。
すると灰燼は、
待っていたと言わんばかりに口角を吊り上げる。
灰燼
「おっ!
今度は葵の弟まで加わって、
仲良う作戦会議かいな!」
両腕を広げ、
愉快そうに笑う。
灰燼
「そないな奴らとつるんどらんと、
お前もこっち来いや!
葵がおらんようになってから、
こっちは治癒師がおらんくて困っとんねん!」
その瞬間――
火の童子
「葵、葵、葵って……
さっきからしつこいねん!!
黙っとけ!
このボケが!!」
火の童子が怒鳴りつける。
だが――
澪斗
「…………」
灰燼の言葉に澪斗は何も答えず、
ただ静かに、灰燼を見つめている。
蒼はそんな澪斗の横顔を心配そうに覗き込んだ。
蒼
「……澪斗。
大丈夫?」
その声で、
澪斗はようやく蒼へ視線を戻すと、
柔らかく笑った。
澪斗
「ありがとう、蒼。
大丈夫……
あいつの言葉は、
受け止めないことにしてるから。」
そう答えた直後、
澪斗の瞳が再び鋭く細められる。
澪斗
「それより今は……どうして
火の童子様と蒼の焔をまともに受けて、
あいつが無傷なのか。
僕はそっちの方が気になる。」
澪斗はそう言うと、
僅かに目を細めて思案する。
澪斗
「火の童子様、蒼。
もう一度、
あいつへ焔を放ってもらえますか?」
火の童子
「……は?」
澪斗
「それも、最大火力でお願いします。」
火の童子は目を丸くすると、
すぐに渋い顔をした。
火の童子
「いや、せやけどな……。
原因も分からんまま、
闇雲に神気を消耗するんは得策やないで?
また効かんかったら、
ただあいつを喜ばせるだけや。」
澪斗
「大丈夫です。
真白様特製の琥珀糖も預かって来てます。
それに、このまま原因が分からないまま
持久戦になる方が得策ではありません。
だからこそ、
原因を突き止めるために
もう一度だけ確認したいんです。
お願いします。」
迷いのない声だった。
火の童子は澪斗をじっと見つめる。
その横から、
蒼が一歩前へ出た。
蒼
「火の童子……やろう。」
火の童子
「蒼?」
蒼は真っ直ぐ澪斗を見つめ、
小さく頷く。
蒼
「蒼は……
澪斗を信じる。
澪斗なら、きっと原因を見つけてくれるって」
火の童子は、
一瞬きょとんと目を丸くした。
だが――
すぐに嬉しそうに破顔する。
火の童子
「……なんや蒼!
任務中に自分から気持ち言うてくるなんて、
初めてちゃうか!?
成長しとるやないかー!」
火の童子は嬉しそうに、
蒼の頭をわしゃわしゃと撫で回す。
蒼
「ちょっ……
火の童子……今は任務中……!」
その光景を――
灰燼は無言で見つめていた。
先程まで浮かべていた笑みが、
僅かに薄れる。
灰燼
(……なんや、あの青い焔のガキのこと……
えらい気に入っとるみたいやな……)
灰燼の瞳に、
どす黒い光が宿る。
灰燼
(……ほんなら。
あのガキから消したるか。)
灰燼
「――いつまで団欒しとんねん!!」
突如、
灰燼の掌から黒い焔が爆発的に噴き上がった。
灰燼
「今は戦いの最中やぞ!!」
ゴォォォォォッ!!
高火力の黒炎が、
三人を飲み込まんと襲い掛かる。
火の童子
「蒼!」
蒼
「うん!」
火の童子と蒼が同時に前へ出る。
火の童子・蒼
「「豪炎の理――燃やし尽くせ!!」」
紅蓮と蒼――
二つの焔が黒い焔へ激突する。
ドォォォォン!!
三色の焔が激しくぶつかり合い、
凄まじい熱波が周囲へ吹き荒れた。
火の童子
「っ……押し返すで!」
蒼
「うんっ!」
紅蓮と蒼の焔が勢いを増す。
黒炎を押し返し――
そのまま灰燼を飲み込んだ。
ゴォォォォォッ!!
澪斗はその一部始終を、
瞬きもせずに見つめていた。
澪斗
(……今だ。
何が起きてる……?)
やがて焔が収束する。
その中心から――
またしても、
無傷の灰燼が姿を現した。
火の童子
「……やっぱりや。
また効いてへん……!」
だが澪斗だけは、
灰燼ではなく別のものを見ていた。
灰燼へ吸い込まれるように消えていく焔。
そして――
先程よりも明らかに強くなった、
灰燼の黒い焔。
澪斗の瞳が見開かれる。
澪斗
(……そうか!
効いてないんじゃない。
焔そのものが消えてる……。
それなのに、
あいつの焔だけが強くなってる……?)
そして、灰燼はニヤリと笑い、
再び掌を突き出した。
ゴォォォォォッ!!
先程を遥かに上回る黒い焔が放たれる。
火の童子
「また火力上がっとるやないか!!」
火の童子と蒼が、
再び焔を放って迎え撃つ。
紅蓮と蒼、そして黒。
三つの焔が再び激突した――
その瞬間。
澪斗
(……やっぱり!
消えた焔の分だけ、
あいつの焔が強くなってる……!
そういうことか!
だったら――!)
澪斗が素早く両手で印を結ぶ。
澪斗
「火の童子様!蒼!
そのまま黒い焔を押し返してください!」
火の童子
「はぁ!?
何する気や!」
澪斗
「大丈夫ですから!僕を信じてください!」
その言葉に、
火の童子が歯を食いしばる。
火の童子
「……しゃあない!やったるで!」
蒼
「うん!」
二人が一気に火力を引き上げる。
黒炎が押し返され――
紅蓮と蒼の焔が、
再び灰燼へ迫る。
灰燼の口角が吊り上がった。
灰燼
「くくっ……。
何べんやっても同じや――」
澪斗
(――今だ!)
澪斗《みなと》
「封印の理――水牢!」
バシャァァァァン!!
大量の水が四方から押し寄せ、灰燼へ到達する寸前の焔を巨大な水球の中へ閉じ込めた。
火の童子
「なっ!?澪斗!
何しとんねん!アタイらの焔に、
水の術なんか効かへんで!?」
澪斗
「分かってます!」
澪斗は印を崩さない。
水牢の表面へ、
青白い封印の術式文字が次々と浮かび上がる。
澪斗
「これは――
水で消すんじゃありません!」
術式が一斉に輝く。
澪斗
「焔に流れる神気を――
封じます!!」
その瞬間。
紅蓮、蒼、黒。
三つの焔を覆っていた神気が、
水牢の内部へ完全に閉じ込められた。
ジュワァァァァァァッ!!
凄まじい白煙が爆発的に噴き上がる。
水牢が激しく沸騰する。
火の童子
「なっ……!?」
蒼
「焔が……!」
水は瞬く間に蒸発していく。
だが、
水牢の中の焔もまた急速に勢いを失っていく。
澪斗
「逃がさない……!」
澪斗の額から汗が伝う。
崩れかける水牢を必死に維持しながら、
澪斗
「神気さえ封じてしまえば……
ただの炎になるっ!
そうなれば、龍神の水の術で消せます!」
ジュワァァァァァッ――!!
そして。
最後の一滴が蒸発した瞬間――
紅蓮も、蒼い焔も、黒い焔も――
全てが跡形もなく消滅した。
灰燼
「…………は?」
灰燼の顔から――
初めて笑みが消えた。
灰燼は己の掌へ視線を落とす。
だが――
そこには、
取り込めるはずだった焔が何一つ残っていない。
その表情を見た澪斗の口元に、
僅かな笑みが浮かんだ。
澪斗
「……どうしました?」
灰燼
「…………」
澪斗は、
わざと灰燼の空っぽの掌へ視線を落とした。
澪斗
「おかしいですね。
吸収するはずだった焔は――
一体どこへ行ってしまったんでしょうね?」
灰燼の眉がぴくりと動く。
灰燼
「……お前……」
澪斗の瞳から、
笑みが消える。
真っ直ぐ灰燼を見据えると、
澪斗
「龍神の眷属をあんまり舐めるな……」
灰燼の表情が強張る。
澪斗
「あんたは、
火の童子様と蒼の焔を
無効化していたんじゃない。
吸収して――
自分の焔へ上乗せしていただけ。」
火の童子
「……っ!」
蒼
「だから……
どんどん黒い焔が強くなってたんだ……!」
澪斗
「さっきから急激に強くなっていた黒い焔も……
火の童子様と蒼の焔を奪い、
自分の焔へ上乗せしていたからです。
それなら――
話は簡単です。」
澪斗は静かに印を構え直す。
澪斗
「あんたに吸収される前に、
焔を流れる神気を僕が封じる。
その後は――
ただの炎同士の戦いになる。
純粋に、
火力の強い方が勝つだけだ。」
灰燼
(なんや……。
葵のやつ、
龍神の眷属がそないなことできるなんて
言うてへんかったぞ……)
僅かに動揺を見せる灰燼を前に、
澪斗は穏やかな笑みを浮かべる。
澪斗
「さて――
今度は貴方が考える番ですよ。
焔を吸収できなければ、
どうやって僕たちと戦うんですか?」
最後までお付き合いいただき、
ほんとうにありがとうございます!
次回もお付き合いいただけたら幸いです。
(人´∀`).☆.。.:*・゜




