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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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229/258

龍神の眷属を舐めるな!澪斗の反撃

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*



火の童子《かのこどうじ》

(なんでや……。


 確かにアタイと蒼《あお》の焔で、

 灰燼《かいじん》を飲み込んだはずや。


 あの火力なら、

 無傷で立っとるなんて有り得へん……。


 ほんなら……アタイらの焔は、

 一体どこへ消えたんや……?)





火の童子《かのこどうじ》は鋭い視線で灰燼《かいじん》の全身を僅かな違和感すら見逃すまいと観察する。




だが、

焼けた跡一つ見当たらない。




まるで――

焔そのものが最初から存在しなかったかのようだった。




その様子を見た灰燼《かいじん》は楽しそうに、




灰燼《かいじん》

「なんや!

 さっきまでの勢いはどないしてん?

 自慢の焔が消えてもうて、

 何が起きたか分からんか?」



そして灰燼《かいじん》はゆっくりと両腕を広げ、挑発するように笑うと、




灰燼《かいじん》

「くくっ……。


 さすがの炎熱爆裂童子も、

 自慢の焔が通じへん相手は初めてか?


 ビビってもうたか?」




その不気味な余裕が、

空気をさらに張り詰めさせる。




蒼《あお》も火の童子《かのこどうじ》の横顔を見つめながら、

あの瞬間を何度も思い返していた。




蒼《あお》

(あの時……


 灰燼《かいじん》は確かに、

 蒼《あお》と火の童子《かのこどうじ》の焔の中にいた。


 それなのに……

 どうして傷一つないの……?


 それに……蒼《あお》たちの焔は、

 一体どこへ消えたの……?)




そこへ――


紡《つむぎ》の治療を終えた澪斗《みなと》が、

蒼《あお》と火の童子《かのこどうじ》のもとへ駆けつけた。



澪斗《みなと》

「火の童子《かのこどうじ》様! 蒼《あお》!

 戦況はどうなっていますか?」



その声に、

蒼《あお》が弾かれたように振り返る。



蒼《あお》

「澪斗《みなと》!


 紡《つむぎ》は!?

 紡《つむぎ》は大丈夫なの!?」



不安に揺れる蒼《あお》の瞳を見て、

澪斗《みなと》は安心させるように小さく頷いた。



澪斗《みなと》

「大丈夫だ。

 紡《つむぎ》の怪我は治した。

 目を覚ますまでは、

 真白《ましろ》様が結界で守ってくださってる。

 それより――」




澪斗《みなと》は灰燼《かいじん》へ視線を向けた。




澪斗《みなと》

「火の童子《かのこどうじ》様たちが苦戦しているようだから、

 こっちの援護に行ってくださいって、

 真白《ましろ》様が。」



火の童子《かのこどうじ》は、

僅かに眉間へ皺を寄せる。



火の童子《かのこどうじ》

「それがな、澪斗《みなと》や。

 アタイと蒼《あお》の焔を食らったはずなのに、

 灰燼《かいじん》の奴、焼けた跡すらないねん……

 ……こんなん、初めてや。」



澪斗《みなと》の表情が険しくなる。



澪斗《みなと》

「火の童子《かのこどうじ》様と蒼《あお》の焔が……効かない?」





澪斗《みなと》

「お二人の焔は、

 悪しきものを

 問答無用で焼き尽くす焔のはず……」




澪斗《みなと》は口元へ手を添え、

灰燼《かいじん》をじっと観察する。



その視線に気付いた灰燼《かいじん》と、

ふいに視線がぶつかった。



すると灰燼《かいじん》は、

待っていたと言わんばかりに口角を吊り上げる。



灰燼《かいじん》

「おっ!


 今度は葵《あおい》の弟まで加わって、

 仲良う作戦会議かいな!」



両腕を広げ、

愉快そうに笑う。





灰燼《かいじん》

「そないな奴らとつるんどらんと、

 お前もこっち来いや!


 葵《あおい》がおらんようになってから、

 こっちは治癒師がおらんくて困っとんねん!」



その瞬間――



火の童子《かのこどうじ》

「葵《あおい》、葵《あおい》、葵《あおい》って……

 さっきからしつこいねん!!


 黙っとけ!

 このボケが!!」



火の童子《かのこどうじ》が怒鳴りつける。



だが――



澪斗《みなと》

「…………」




灰燼《かいじん》の言葉に澪斗《みなと》は何も答えず、

ただ静かに、灰燼《かいじん》を見つめている。



蒼《あお》はそんな澪斗《みなと》の横顔を心配そうに覗き込んだ。



蒼《あお》

「……澪斗《みなと》。

 大丈夫?」



その声で、

澪斗《みなと》はようやく蒼《あお》へ視線を戻すと、

柔らかく笑った。




澪斗《みなと》

「ありがとう、蒼《あお》。


 大丈夫……

 あいつの言葉は、

 受け止めないことにしてるから。」




そう答えた直後、

澪斗《みなと》の瞳が再び鋭く細められる。




澪斗《みなと》

「それより今は……どうして

 火の童子《かのこどうじ》様と蒼《あお》の焔をまともに受けて、

 あいつが無傷なのか。

 僕はそっちの方が気になる。」




澪斗《みなと》はそう言うと、

僅かに目を細めて思案する。



澪斗《みなと》

「火の童子《かのこどうじ》様、蒼《あお》。

 もう一度、

 あいつへ焔を放ってもらえますか?」



火の童子《かのこどうじ》

「……は?」




澪斗《みなと》

「それも、最大火力でお願いします。」



火の童子《かのこどうじ》は目を丸くすると、

すぐに渋い顔をした。



火の童子《かのこどうじ》

「いや、せやけどな……。

 原因も分からんまま、

 闇雲に神気を消耗するんは得策やないで?

 また効かんかったら、

 ただあいつを喜ばせるだけや。」



澪斗《みなと》

「大丈夫です。

 真白《ましろ》様特製の琥珀糖も預かって来てます。


 それに、このまま原因が分からないまま

 持久戦になる方が得策ではありません。


 だからこそ、

 原因を突き止めるために

 もう一度だけ確認したいんです。


 お願いします。」


迷いのない声だった。




火の童子《かのこどうじ》は澪斗《みなと》をじっと見つめる。



その横から、

蒼《あお》が一歩前へ出た。



蒼《あお》

「火の童子《かのこどうじ》……やろう。」



火の童子《かのこどうじ》

「蒼《あお》?」



蒼《あお》は真っ直ぐ澪斗《みなと》を見つめ、

小さく頷く。



蒼《あお》

「蒼《あお》は……

 澪斗《みなと》を信じる。

 澪斗《みなと》なら、きっと原因を見つけてくれるって」



火の童子《かのこどうじ》は、

一瞬きょとんと目を丸くした。



だが――



すぐに嬉しそうに破顔する。



火の童子《かのこどうじ》

「……なんや蒼《あお》!


 任務中に自分から気持ち言うてくるなんて、

 初めてちゃうか!?

 成長しとるやないかー!」



火の童子《かのこどうじ》は嬉しそうに、

蒼《あお》の頭をわしゃわしゃと撫で回す。



蒼《あお》

「ちょっ……

 火の童子《かのこどうじ》……今は任務中……!」




その光景を――



灰燼《かいじん》は無言で見つめていた。



先程まで浮かべていた笑みが、

僅かに薄れる。



灰燼《かいじん》

(……なんや、あの青い焔のガキのこと……

 えらい気に入っとるみたいやな……)




灰燼《かいじん》の瞳に、

どす黒い光が宿る。



灰燼《かいじん》

(……ほんなら。

 あのガキから消したるか。)



灰燼《かいじん》

「――いつまで団欒しとんねん!!」



突如、

灰燼《かいじん》の掌から黒い焔が爆発的に噴き上がった。



灰燼《かいじん》

「今は戦いの最中やぞ!!」



ゴォォォォォッ!!



高火力の黒炎が、

三人を飲み込まんと襲い掛かる。



火の童子《かのこどうじ》

「蒼《あお》!」



蒼《あお》

「うん!」




火の童子《かのこどうじ》と蒼《あお》が同時に前へ出る。




火の童子《かのこどうじ》・蒼《あお》

「「豪炎の理――燃やし尽くせ!!」」




紅蓮と蒼《あお》――

二つの焔が黒い焔へ激突する。




ドォォォォン!!



三色の焔が激しくぶつかり合い、

凄まじい熱波が周囲へ吹き荒れた。



火の童子《かのこどうじ》

「っ……押し返すで!」



蒼《あお》

「うんっ!」




紅蓮と蒼《あお》の焔が勢いを増す。




黒炎を押し返し――

そのまま灰燼《かいじん》を飲み込んだ。


 

ゴォォォォォッ!!



澪斗《みなと》はその一部始終を、

瞬きもせずに見つめていた。



澪斗《みなと》

(……今だ。

 何が起きてる……?)



やがて焔が収束する。



その中心から――



またしても、

無傷の灰燼《かいじん》が姿を現した。




火の童子《かのこどうじ》

「……やっぱりや。

 また効いてへん……!」




だが澪斗《みなと》だけは、

灰燼《かいじん》ではなく別のものを見ていた。




灰燼《かいじん》へ吸い込まれるように消えていく焔。



そして――



先程よりも明らかに強くなった、

灰燼《かいじん》の黒い焔。




澪斗《みなと》の瞳が見開かれる。



澪斗《みなと》

(……そうか!


 効いてないんじゃない。

 焔そのものが消えてる……。


 それなのに、

 あいつの焔だけが強くなってる……?)




そして、灰燼《かいじん》はニヤリと笑い、

再び掌を突き出した。




ゴォォォォォッ!!




先程を遥かに上回る黒い焔が放たれる。




火の童子《かのこどうじ》

「また火力上がっとるやないか!!」



火の童子《かのこどうじ》と蒼《あお》が、

再び焔を放って迎え撃つ。



紅蓮と蒼《あお》、そして黒。



三つの焔が再び激突した――

その瞬間。




澪斗《みなと》

(……やっぱり!


 消えた焔の分だけ、

 あいつの焔が強くなってる……!


 そういうことか!

 だったら――!)




澪斗《みなと》が素早く両手で印を結ぶ。




澪斗《みなと》

「火の童子《かのこどうじ》様!蒼《あお》!

 そのまま黒い焔を押し返してください!」




火の童子《かのこどうじ》

「はぁ!?

 何する気や!」




澪斗《みなと》

「大丈夫ですから!僕を信じてください!」



その言葉に、

火の童子《かのこどうじ》が歯を食いしばる。



火の童子《かのこどうじ》

「……しゃあない!やったるで!」




蒼《あお》

「うん!」



二人が一気に火力を引き上げる。



黒炎が押し返され――



紅蓮と蒼《あお》の焔が、

再び灰燼《かいじん》へ迫る。



灰燼《かいじん》の口角が吊り上がった。



灰燼《かいじん》

「くくっ……。

 何べんやっても同じや――」




澪斗《みなと》

(――今だ!)




澪斗《みなと》《みなと》

「封印の理――水牢《すいろう》!」




バシャァァァァン!!



大量の水が四方から押し寄せ、灰燼《かいじん》へ到達する寸前の焔を巨大な水球の中へ閉じ込めた。




火の童子《かのこどうじ》

「なっ!?澪斗《みなと》!

 何しとんねん!アタイらの焔に、

 水の術なんか効かへんで!?」




澪斗《みなと》

「分かってます!」




澪斗《みなと》は印を崩さない。




水牢の表面へ、

青白い封印の術式文字が次々と浮かび上がる。




澪斗《みなと》

「これは――

 水で消すんじゃありません!」




術式が一斉に輝く。




澪斗《みなと》

「焔に流れる神気を――

 封じます!!」



その瞬間。



紅蓮、蒼《あお》、黒。



三つの焔を覆っていた神気が、

水牢の内部へ完全に閉じ込められた。




ジュワァァァァァァッ!!




凄まじい白煙が爆発的に噴き上がる。




水牢が激しく沸騰する。



火の童子《かのこどうじ》

「なっ……!?」



蒼《あお》

「焔が……!」





水は瞬く間に蒸発していく。




だが、

水牢の中の焔もまた急速に勢いを失っていく。



澪斗《みなと》

「逃がさない……!」




澪斗《みなと》の額から汗が伝う。

崩れかける水牢を必死に維持しながら、



澪斗《みなと》

「神気さえ封じてしまえば……

 ただの炎になるっ!

 そうなれば、龍神の水の術で消せます!」




ジュワァァァァァッ――!!




そして。




最後の一滴が蒸発した瞬間――



紅蓮も、蒼《あお》い焔も、黒い焔も――

全てが跡形もなく消滅した。



灰燼《かいじん》

「…………は?」




灰燼《かいじん》の顔から――

初めて笑みが消えた。



灰燼《かいじん》は己の掌へ視線を落とす。



だが――



そこには、

取り込めるはずだった焔が何一つ残っていない。



その表情を見た澪斗《みなと》の口元に、

僅かな笑みが浮かんだ。



澪斗《みなと》

「……どうしました?」




灰燼《かいじん》

「…………」




澪斗《みなと》は、

わざと灰燼《かいじん》の空っぽの掌へ視線を落とした。




澪斗《みなと》

「おかしいですね。


 吸収するはずだった焔は――

 一体どこへ行ってしまったんでしょうね?」




灰燼《かいじん》の眉がぴくりと動く。




灰燼《かいじん》

「……お前……」




澪斗《みなと》の瞳から、

笑みが消える。



真っ直ぐ灰燼《かいじん》を見据えると、



澪斗《みなと》

「龍神の眷属をあんまり舐めるな……」





灰燼《かいじん》の表情が強張る。




澪斗《みなと》

「あんたは、

 火の童子《かのこどうじ》様と蒼《あお》の焔を

 無効化していたんじゃない。


 吸収して――


 自分の焔へ上乗せしていただけ。」





火の童子《かのこどうじ》

「……っ!」




蒼《あお》

「だから……

 どんどん黒い焔が強くなってたんだ……!」



澪斗《みなと》

「さっきから急激に強くなっていた黒い焔も……

 火の童子《かのこどうじ》様と蒼《あお》の焔を奪い、

 自分の焔へ上乗せしていたからです。


 それなら――

 話は簡単です。」




澪斗《みなと》は静かに印を構え直す。




澪斗《みなと》

「あんたに吸収される前に、

 焔を流れる神気を僕が封じる。


 その後は――

 ただの炎同士の戦いになる。


 純粋に、

 火力の強い方が勝つだけだ。」



灰燼《かいじん》

(なんや……。

 葵《あおい》のやつ、

 龍神の眷属がそないなことできるなんて

 言うてへんかったぞ……)




僅かに動揺を見せる灰燼《かいじん》を前に、

澪斗《みなと》は穏やかな笑みを浮かべる。




澪斗《みなと》

「さて――

 今度は貴方が考える番ですよ。

 焔を吸収できなければ、

 どうやって僕たちと戦うんですか?」




最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!


次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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