紡を救え! 治癒の雨と黒き焔
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澪斗
「治癒の理――癒しの雨」
澪斗が静かに術式を発動すると、
紡の身体の下に青い光の五芒星が浮かび上がった。
その上空には小さな雨雲が現れ、
柔らかな青い光の雨が紡の全身へ降り注いでいく。
澪斗
(真白様たちに、
落ち着いて貰うためにあぁ言ったけど……
致命傷が一カ所ある……。
急がないと間に合わない。
頼む……
間に合ってくれ……!)
澪斗は唇を強く噛み締めた。
額から汗が一筋流れ落ちる。
それでも拭うことなく、
極限まで集中力を高めながら、
致命傷となった傷口へ神気を送り続ける。
真白
(澪斗さんは……
僕が取り乱さないように、
致命傷のことを隠してくれた……
それなのに僕は……
倒れている紡を見た瞬間、
冷静さを失ってしまった。
紡……頑張ってください……!)
祈るように願い続ける真白は、
結界を張る両手に知らず知らず力が入っていた。
澪斗
「紡……頑張るんだ!
必ず……
必ず治してみせる。」
真白は祈るように紡を見つめる。
青い光の雨は絶えることなく紡へ降り注ぎ、深く裂けていた傷口は少しずつ塞がり始める。
止まらなかった出血も次第に収まり、
青白かった紡の頬にもわずかに血色が戻っていった。
その変化を感じ取った澪斗は、
張り詰めていた表情をほんの少しだけ緩めると、
小さく息を吐いた。
澪斗
(……致命傷は塞がった……)
さらに神気を紡へ流し込みながら、
澪斗は治療の手を決して緩めなかった。
やがて苦しそうだった紡の呼吸は、
少しずつ規則正しさを取り戻していく。
澪斗
(呼吸も落ち着いてきた。
これなら……もう大丈夫だ……)
澪斗の表情に安堵が浮かんだのを見て、
真白の胸を締めつけていた不安が少しだけ和らぐ。
澪斗
「……よし、もう安心してください。
ですが……真白様、すみません。
この後負傷者が出た時のために、
重症箇所だけの治療になります……」
その言葉を聞いた瞬間、
真白は胸に安堵が広がった。
張り詰めていた肩の力が抜け、
安堵から小さく息を吐く。
真白
「……よかった。」
真白は優しく眠る紡へ視線を向け、
真白
「いいえ、謝らないでください。
澪斗さんの判断は正しかったです。
僕が取り乱してしまった時も、
澪斗さんは紡を助けることだけを、
考えていてくださいました。
本当に……
ありがとうございます。
このお礼は、
戦いが終わったら改めて言わせてください。」
次の瞬間――
吹き飛ばされた著莪が、
真白の結界へ激しく叩きつけられた。
その隙を逃すまいと、
琥珀が著莪へ追撃を放つ。
ガキィィィン!!
琥珀
「邪魔な……っ!」
振り下ろされた琥珀の剣を、
疾風が間一髪で受け止めた。
火花が散り、
衝撃で二人の足元の地面が砕ける。
疾風
「っく!
見かけによらずっ!」
その一瞬の隙を逃さず、
三国が鋭く踏み込み、
槍の穂先が一直線に琥珀の胸元へ迫る。
キィン!!
琥珀は剣を滑らせるように槍を受け流し、
鋭い視線を三国へ向けた。
三国
「っ!同感!
速いうえに力も強いっ!
けどっ……!お前ら!」
三国の掛け声が戦場へ響き渡る。
その瞬間――
上空を天馬で駆けていた鬼鹿毛と
影月が応える。
鬼鹿毛
「分かってます!!
三国様ーー!」
影月
「我ら天馬に敵はなしーーっと!!」
二本の槍が、
風を裂く鋭い音と共に琥珀めがけて落ちてくる。
琥珀
「小賢しい……っ!?」
琥珀は疾風を蹴り飛ばし、
横から迫る三国を剣で吹き飛ばすと、
そのまま後方へ飛び退こうとした――
だが、
琥珀
「っ!?なんだ?!」
視線を落とした先。
足元には淡い光を放つ拘束の陣が刻まれていた。
吹き飛ばされ、
地面を何度も転がった三国は、
全身を走る痛みに顔を歪めながらも、
口元だけは勝ち誇ったように吊り上げた。
三国
「はっ!
新世代の天馬はな、
拘束術くらい使えるんだよ!」
琥珀
「っく!」
拘束の陣が淡く輝き、
琥珀の足を縛り上げる。
迫り来る二本の槍。
琥珀は一瞬だけ目を細めると、
静かに息を吐いた。
琥珀
(っ!……仕方あるまい!)
琥珀
「灰燼!槍を!」
その叫びに、
離れた場所で戦っていた灰燼《かいじん》の瞳が鋭く光る。
灰燼は一瞬で状況を把握すると、
迷うことなく掌を突き出した。
灰燼
「こないな時にっ!」
黒い焔が一直線に走る。
ゴォッ!
二本の槍は琥珀へ届く寸前、
黒い焔に呑み込まれ、
跡形もなく燃え尽きた。
その様子に、火の童子は眉をひそめる。
火の童子
(……相変わらず甘いやっちゃな……)
火の童子
「豪炎の理――燃やし尽くせ!」
紅蓮の焔が唸りを上げ、
灰燼へと襲い掛かった。
轟轟轟轟!!
炎柱が灰燼を完全に包み込み、
火の童子の高火力の焔が炸裂し、
周囲の大気までも揺らめかせる。
しかし――
紅蓮の焔がゆっくりと消え去る。
そしてそこには、
何事もなかったかのように立つ灰燼の姿。
その身には、
煤一つ残っていなかった。
火の童子は目を見開く。
火の童子
「なんでや……?
アタイの焔はどこいきよった?」
灰燼は肩を震わせ、
喉の奥から愉快そうな笑いを漏らす。
灰燼
「おぉーおぉー!
ええなぁ……その驚いた顔!
最高や!」
ゆっくりと口角が吊り上がる。
灰燼
「お前ご自慢の焔は……
どこ行ったんやろなぁ?」
そう言うと、
灰燼は掌をゆっくりと前へ向けた。
灰燼
「豪炎の理――焼き尽くせ……」
黒い焔が蛇のように地を這い、
火の童子へ襲い掛かる。
火の童子は咄嗟に紅蓮の焔を放ち迎え撃つ。
激しくぶつかり合う、
紅と黒。
しかし。
火の童子の表情が変わる。
火の童子
(っ!押し返される!?
なんや……さっきまでと火力が違いすぎる!
……これはアカンやつや!)
黒い焔が一気に押し返してくる。
火の童子
(アカン!)
火の童子は迷わず叫んだ。
火の童子
「蒼ーー!すまん!
こっち頼む!」
離れた場所で紡たちを守っていた蒼は、一瞬だけ真白へ視線を送る。
真白は力強く頷いた。
真白
「ここは大丈夫です!
今は火の童子様を!」
蒼
「……わかった!」
蒼は迷いなく宙を駆ける。
蒼い炎をまとい、
一直線に火の童子の隣へ舞い降りた。
火の童子
「蒼!
そんなんじゃあかん!
最初から最大火力や!」
蒼は短く頷く。
蒼
「うん!
豪炎の理――焼き尽くせ……」
蒼い業炎が放たれ、
火の童子の紅蓮の焔と重なり合う。
二つの焔は共鳴するように渦を巻き、
一瞬にして、
紫紺の焔へと姿を変えた。
ゴォーーーッ!!
圧倒的な熱量が黒い焔を押し返し、
そのまま灰燼へ襲い掛かる。
火の童子は息を呑む。
火の童子
「今度こそ……
やったやろ……」
蒼も紫の焔を見つめたまま、
静かに頷く。
蒼
「……うん。」
やがて、
紫の焔がゆっくりと消えていく。
揺らめく熱気の向こう。
霞んでいた視界が、
少しずつ晴れていく。
そして現れたのは――
傷一つ負わず、
静かに立ち尽くす灰燼だった。
蒼
「えっ……効いてない?」
灰燼は口元を歪め、
愉快そうに笑う。
灰燼
「くくっ……
なんでやろうなぁー?」
最後までお付き合いいただき、
ほんとうにありがとうございます!
次回もお付き合いいただけたら幸いです。
(人´∀`).☆.。.:*・゜




