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僕は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
封印されし穢れ人――玉繭の里編

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現天界の貴公子 VS 元天界の貴公子

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*








真白《ましろ》は咄嗟に駆け寄り、

紡《つむぎ》の傍へ膝をつく。



真白《ましろ》

「しっかりしてください、紡《つむぎ》!」



返事はない。



血の気の引いた顔。

浅く、か細い呼吸。



真白《ましろ》の胸が強く締めつけられる。




真白《ましろ》

(そんな……紡《つむぎ》……)

 


震える手で紡《つむぎ》の身体を抱き起こそうとした、

その瞬間――。




澪斗《みなと》

「真白《ましろ》様!今は動かしては駄目です!」




側にいた澪斗《みなと》が真白《ましろ》の腕をそっと掴んだ。




澪斗《みなと》

「僕が治療します。

 ですから落ち着いてください。

 僕は龍神一の治癒師ですから。」

 



そう言う澪斗《みなと》の声は落ち着いていたが、

その胸の内には、激しい焦りが渦巻いていた。




澪斗《みなと》

(……駄目だ、落ち着け。


 脈はある。

 だけど傷が深い……。

 急がないと。


 焦っても紡《つむぎ》を救えない。

 まずは治療に集中できる状況を作る。) 




澪斗《みなと》は静かに息を整えると、

震えそうになる手を押さえながら紡《つむぎ》の脈へ指を添えた。




傷の深さ、呼吸、脈拍。



一つひとつを瞬時に見極めると、

澪斗《みなと》は紡《つむぎ》の脈を確認したまま一瞬だけ視線を上げる。



周囲では激しい戦闘が続き、

一瞬たりとも気を抜ける状況ではない。



澪斗《みなと》は迷うことなく指示を飛ばした。




澪斗《みなと》

「蒼《あお》!紡《つむぎ》を治療している間守りを頼む!」




蒼《あお》は紡《つむぎ》の横顔を見つめる。



苦しげな呼吸。

血の気を失った顔。



胸の奥から、

怒りが込み上げる。




蒼《あお》

(……紡《つむぎ》、

 澪斗《みなと》が治療終えるまで、

 誰も指一本触れさせない。)




蒼《あお》は拳を強く握り締め、

その瞳に揺るぎない決意を宿した。



蒼《あお》

「……任せて!

 澪斗《みなと》と紡《つむぎ》は蒼《あお》が絶対に守る。

 だから安心して治療に集中して!」



蒼《あお》は力強く頷くと、

澪斗《みなと》たちの前へ躍り出る。



燃え盛る蒼《あお》焔が、

蒼《あお》の決意に応えるように激しく揺らめいた。



澪斗《みなと》は続けて真白《ましろ》へ視線を向ける。



澪斗《みなと》

「真白《ましろ》様は結界をお願いします!」




真白《ましろ》は一瞬だけ目を伏せた。




先程取り乱した自分を思い返す。




真白《ましろ》

(戦いの最中に、

 冷静さを失ってしまったなんて……)




真白《ましろ》

「……すみません。

 澪斗《みなと》さん、ありがとうございます。」




そう小さく頭を下げると、

真白《ましろ》の瞳に再び静かな光が宿る。




真白《ましろ》

「僕の結界は、

 簡単には破られません。


 だから安心して、

 紡《つむぎ》の治療に集中してください。

 ……紡《つむぎ》を、よろしくお願いします。」



澪斗《みなと》は静かに頷いた。



澪斗《みなと》

「……必ず助けます。」



真白《ましろ》は胸の前で両手を重ね、

深く息を吸う。



震えていた指先が、

紡《つむぎ》を守るという決意とともに静かに落ち着いていく。



真白《ましろ》

「守護の理――結界展開」



眩い光が澪斗《みなと》と紡《つむぎ》を包み込み、

強固な結界がその場に展開された。



蒼《あお》も真白《ましろ》も力強く頷く。




その背中へ、

炎の粒子を纏った火の童子《かのこどうじ》が威勢よく声を張り上げた。




火の童子《かのこどうじ》

「蒼《あお》!

 こっちはアタイに任せて、

 真白《ましろ》達のこと頼むで!」



蒼《あお》

「うん!

 絶対に誰も近づけさせない!」




その喧噪のただ中で、

琥珀《こはく》は静かに目を細め、

前線の一角を見つめていた。




その瞳がとらえたのは、




琥珀《こはく》

(……あれが噂の白い狐の真白《ましろ》……成る程、

 確かに今まで生まれた同族たちとは違う)




著莪《しゃが》

「……貴方の顔など、

 二度と見ることはないと思っていたが……


 考え事とは随分余裕ですねっ!

 雷鳴の理――雷《いかずち》」




琥珀《こはく》が真白《ましろ》へ意識を向けた、

その一瞬を逃さず、

著莪《しゃが》が鋭く踏み込んだ。




著莪《しゃが》の手から放たれた護符が、

青白く発光したかと思うと、鼓膜を裂くような重低音とともに猛烈な稲光が走り、一直線に琥珀《こはく》の体へと襲い掛かる!




眩い雷光が視界を染めるなか、琥珀《こはく》は顔色ひとつ変えず、優雅とさえ思える身のこなしでそれをかわす。



焦げ付く空気の向こう、

その口元に酷薄な笑みが浮かぶ。




琥珀《こはく》

「これは、随分懐かしい。

 天界の貴公子様と現世で再会するとは、

 私はまた、

 昔のように茶でも勧められるかと思いました

 天界の皆様はお変わりなくお元気ですか?」




著莪《しゃが》

「奇遇だね、

 私も元天界の貴公子に会えるとは、

 思ってもいなかったよ……

 お茶は誘えないけどね。

 まさか禁忌に落ちた後に災禍の神と

 共にしていとは……

 どこまで豊穣神様を、悲しませたら気が済むの?」




琥珀《こはく》

「……著莪《しゃが》、

 その言い方には語弊がありますね。

 ……貴方達は何も知らないでしょう。


 あの日、

 神々は一柱として、

 私の声を聞こうとはしなかった。


 悲しませているのは、

 むしろ豊穣神のほうです。


 先に私を失望させたのは、

 豊穣神や神々の方で――」



琥珀《こはく》が言い終える前に著莪《しゃが》の剣が琥珀《こはく》に振るわれる。




ガキンッ!!




すんでの所で受け太刀した琥珀《こはく》は刃越しに著莪《しゃが》と睨み合う。




著莪《しゃが》

「豊穣神様だ……様をつけろ!!

 むしろ、禁忌に落ちた者が気安く呼ぶな!

 この愚かものが!」



ガキィィン!!



著莪《しゃが》の剣が鋭く振り抜かれる。



しかし琥珀《こはく》は腰の剣を静かに抜き放ち、

火花を散らしながらその一撃を受け止めた。



キィンッ!



互いの刃が激しく擦れ合い、

甲高い金属音が森に響き渡る。




琥珀《こはく》

「貴方は昔から変わりませんね。

 護符と剣技が得意で、何でもそつなくこなす。

 ですが……肝心の実力の方は……

 うーん、どうでしたかね?」




カンッ!


キィン! 


カンッ!


キィィン!




著莪《しゃが》は返す刃で連続して斬り込み、

琥珀《こはく》は剣一本で次々と受け流す。




火花が散り、

甲高い金属音が絶え間なく響き渡った。





著莪《しゃが》

「安心してください。

 今日、嫌でも思い出させてあげますよ。」










最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!


次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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