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実は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
【二章】封印されし穢れ人――烏天狗編

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いざ烏天狗の里へ! 穢れ人討伐へ向かう真白たち――紡、初めての空へ

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*

−−−






烏天狗の里へ向かうことが決まってからというもの、



豊穣神社にはどこか張り詰めた空気が漂っていた。



境内を吹き抜ける冬風は冷たく、

御神木をさらさらと鳴らしていく。



社務所では、

真白ましろつむぎが、

旅支度を進めていた。




真白

「えーっと御神酒と……琥珀糖と……」


 

真白は一つ一つを丁寧に確認しながら、

静かに鞄へ収めていく。



一方の紡はというと、

初めての旅支度に必要以上に荷物を詰め込み、あわあわと慌てていた。



「ま、真白さま!

 これも必要でしょうか!?

 あっ、でもこっちも……!」



真白

「ふふ、大丈夫ですよ紡。

 烏天狗の里にも必要な物はありますから、

 そんなに持っていかなくても平気です」


真白が穏やかに笑うと、


「えっ?!そ、そうなんですか?!」



紡は慌てて鞄の中を見直し始めた。



やがて旅の支度を終えた真白と紡は境内へと

やって来た。



そんな二人の元へ、

えにしがやってくる。



いつもの柔らかな笑みを浮かべながらも、

その瞳には僅かな緊張が宿っていた。



えにし

「今回の討伐任務だけどね、

 天界側からも増援が来ることになったよ」



「増援……ですか?」



紡がきょとんと首を傾げる。




えにし

「穢れ人討伐はかなり危険だからねぇ。

 流石に万全を期したいんだって。

 それで今回は――檜扇ひおうぎくんと著莪しゃがくんも参加

 するみたい」



その名前を聞いた瞬間、

優羽ゆうはがぴくりと反応した。


「えっ!?檜扇ひおうぎ様と著莪しゃが様って、

 優羽さんのお兄様方ですよね?

 僕、全然知りませんでした!」



紡が目を丸くしながら優羽ゆうはを見ると、

優羽ゆうはは少し困ったように笑った。



優羽ゆうは

「あはは、無理もないよ。紡が天界にいた頃には、

 私はもう現世に降りていたからね。今の世代の子

 たちは、意外と知らないんじゃないかな?」



優羽ゆうははくすりと笑い、

どこか懐かしむように冬空を見上げた。


優羽ゆうは

「でも兄様たちは、

 黒狐の中でも最強って言われてたから、

 安心していいよ!」



えにし

「そうそう。

 檜扇ひおうぎくんと著莪しゃがくん、

 眉目秀麗なのにものすごく強いからねぇ。

 天界の貴公子なんて二つ名まで付い 

 てたくらいだもん。羨ましいよねぇ」


えにしが冗談交じりに笑うと、

優羽ゆうはは遠い目をした。




優羽ゆうは

「確かに……。

 私も菖蒲あやめ姉様も、天界にいた頃 

 は兄様目当ての眷属たちが毎日のようにす

 り寄ってきて大変でした……」


思い出しただけで疲れたのか、

優羽ゆうはは深々とため息を吐く。


その脳裏には、

兄たちとお近づきになりたい眷属たちと、

それから逃れる日々の過去の自分の姿が浮かんでいた。



優羽ゆうは

「今はこの現世にいるので解放されましたけ

 ど……そろそろ本当に、早くお嫁さんをも

 らっていただきたいものです」



そんな優羽ゆうはの様子に、紡はぽつりと呟いた。



「ゆ、優羽ゆうはさんも天界では

 大変だったんですね……」



紡がしみじみ呟くと、

その場にくすりと笑いが広がった。



だが次の瞬間、優羽ゆうははふと思い出したように真白たちを見る。



優羽ゆうは

「ところで真白様と紡は、

 えにし様が“狐の窓”で

 烏天狗の里へ送るんですか?」



えにし

「それがね――」



えにしが言い終えるより早く、





???

「俺と一緒に行くんだよ!」



弾けるような元気な声が、

境内へ響き渡った次の瞬間、



風を切る音と共に、

輝く天馬が空から舞い降りる。



白銀の鬣をなびかせ、

着地したその背にいたのは――



三国みくにだった。



「三国さん!?」



紡がぱっと顔を輝かせる。



三国は人懐っこい笑みを浮かべながら、

軽やかに天馬から飛び降りた。



三国

「お久しぶりですね!

 紡様!迎えに来ました!」



その直後、後方から、



磨墨するすみ

「ま、待ってください三国様っ!」



という声と共に、

もう一頭の黒い天馬が降り立つ。




艶やかな黒毛を持つその神々しい天馬の傍らには、磨墨するすみの姿があった。




磨墨するすみ

「三国様速すぎます……」 



呆れたように言いながらも、

どこか慣れた様子で息を整えている。



真白

「三国さん、磨墨するすみ様。

 わざわざありがとうございます」



真白が丁寧に頭を下げると、

磨墨するすみは静かに首を横へ振った。



磨墨するすみ

「お気になさらず、お二人は今回の討伐の要。

 確実に安全に送り届けるには、我々が共に向かった 

 方が良いと、小雲雀こひばり様が判断されたのです」



そして磨墨するすみは、

周囲へ視線を巡らせながら続ける。



磨墨するすみ

「それと、真白様と紡様が不在の間、

 豊穣神社が狙われる可能性も高い。

 その為、護衛も配置しております」



その言葉と同時に、

境内へ数頭の若い天馬たちが駆け込んできた。



若い天馬たち

「三国様!磨墨するすみ様!

 早すぎますってー!」



三国は楽しそうに声を上げた。



三国

「お前らが遅いんだよ!」



その賑やかな光景に、

えにしは自然と頬を緩めた。




えにし

「皆さん、本当にありがとうございます」


三国はそんなえにしに片手を上げると、

今度は紡へ視線を向ける。



三国

「で、紡様!

 準備は万端ですか?」



三国の笑顔は、

冬空さえ明るくするような太陽みたいな笑顔だった。


紡も負けないくらいの笑顔で頷く。



「はいっ!」



三国

「よし!

 じゃあ紡様は俺の後ろです!」


そう言って、

三国は自分の天馬の首筋をぽんぽんと叩いた。



紡の目が一気に輝く。



「わぁっ!

 僕、天馬に乗ってみたかったんですー!」



嬉しそうに駆け寄る紡に、

周囲から自然と笑みが零れる。


その様子を見た磨墨するすみが、

くすりと笑った。



磨墨するすみ

「まるで遠足にでも向かうようですね」



えにし

「ふふっ、確かに」



穏やかな空気の中、

磨墨するすみは真白へ手を差し出した。



磨墨するすみ

「それでは真白様は、私の後ろへ」



真白

「はい。

 よろしくお願いします」



真白は穏やかに頷き、静かに天馬へ跨る。

やがて全員の準備が整うと、



冬空の下、

天馬たちの白い吐息が揺れた。


その時だった。



えにし

「真白君、紡君」



えにしの声に、二人が振り返る。



そこにいたえにしは、

先程までの柔らかな笑みではなく、

真剣な表情を浮かべていた。



そして――



えにし

「……必ず帰ってくるんだよ」



その言葉のあと、

えにしはふっと笑う。



そして懐から、

小さなお守りを取り出した。



えにし

「はい、これ」



「あれ?

 僕たちもう持ってますけど……」




戸惑いながら受け取る二人へ、

えにしは優しく微笑む。




えにし

「これはね、

 僕と優羽ゆうはくんが豊穣神様にお願いして、

 二人の無事を祈る加護を付けてもらったんだ」



その瞬間。



真白と紡の胸が、

じんわりと熱くなった。



二人は手の中のお守りを見つめ、

ぎゅっと握り締める。



真白

「……ありがとうございます」




「必ず帰ってきます!」



力強い声だった。



その様子を見ていた三国は、

満足そうに笑うと、手綱を引いた。



三国

「よし!

 それじゃ行くぞ!!」


次の瞬間。

天馬が地を蹴った。



轟っ――!!



巻き上がった風に、

御神木の葉が一斉に舞い散った。



あっという間に、

三国たちの姿は空高く駆け上がっていった。



磨墨するすみ

「まったく……三国様は本当に……」



呆れながらも、

どこか楽しそうに笑う磨墨するすみ



そして護衛へ視線を向ける。



磨墨するすみ

「皆の者!

 豊穣神社をしっかりお守りするように」



護衛たち

「はっ!」



磨墨するすみ

「では参りますよ真白様。

 しっかり掴まっていてください」



真白

「はい」



黒き天馬が翼を広げる。



次の瞬間、

磨墨するすみたちもまた空へ駆け上がった。



澄み切った冬空を、

白と黒の軌跡が駆け抜けていく。


その姿が小さく消えていくまで――



えにし優羽ゆうはは、

小さくなっていく背中を、

しばらく黙ったまま見送っていた。


冬空には、

天馬たちが駆け抜けた風の余韻だけが、

いつまでも残っていた。




――その頃、烏天狗の里では。



深い山々に囲まれた禁足地に、

重苦しい風が吹き荒れていた。




最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!

ブクマや評価などいただけたら大変励みになります!

次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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