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実は狐の眷属です! 真白と紡の神社日誌 ―600年前の巫女の願いから生まれました―  作者: 稲荷寿司
【二章】封印されし穢れ人――烏天狗編

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紡の成長、真白の決意――穢れ人討伐、始動

いつもお読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いいただけたら幸いです。

(*˘︶˘*).。.:*





新年の清らかな気が、

まだ名残として漂う豊穣神社。


境内を抜ける風は冷たく、

賑わいの去った後の静けさを運んでいた。


正月の喧騒が過ぎて、およそ一週間。

人の波は落ち着き、境内には本来の穏やかな空気が戻りつつある。


そんな中、社務所では――


真白、えにし、紡の三人が、

使い魔の白玲が運んできた一通の文を囲んでいた。



白玲はくれいさん、遠くまでお疲れ様でした。 

 こちらをどうぞ、少し羽を休めてください」



紡が差し出した瑞々しい神水を受け取り、

白玲はくれいは喉を鳴らす。



その傍らで、

真白は、ゆっくりと文を開いた。


紙が擦れる、かすかな音。


それだけで、

周囲の空気が一段静まったように感じられる。


その瞳が文へと落とされ、文字を追った。



瞬間――



ほんのわずかに、呼吸が止まった。



指先に込められた力が、

紙の端をわずかに歪ませる。



だが、すぐに。

静かに息が整えられる。



その横から。



えにし

真白の手元の文を覗き込んだ。



えにし

「……ふーん」


軽い声。


だがその視線は、

文面の一点に鋭く留まっている。


真白は何も言わない。


ただ、

紙を持つ手の位置をほんの少しだけ下げた。



えにしが見やすくするために。



その仕草に、えにしは視線を落としたまま、優しく微笑んだ。


えにし

「ありがとう……」


と小さく告げた。

そんな穏やかなやり取りとは逆に、



文に目を落とした真白とえにしの表情が、一瞬で硬く冷えたものへと変わった。



(……真白様と縁様の表情が、あんなに……。  

 何か、良くない知らせなのかな)



そんなえにしと真白の様子を見守っていた紡の胸に、小さな不安のさざ波が立つ。



境内の喧騒が、

遠くへと退いていく。

風の音だけが、やけに鮮明に耳に届く。



えにし

「……なるほどね」



縁がぽつりと呟くと、

真白がゆっくりと文を閉じる。



やがて顔を上げた二人に、

紡はそっと声を掛けた。



「真白様、えにし様……白凪しらなぎ様か 

 らの知らせは、何だったのですか?」


その声は、できるだけ穏やかに保とうとしながらも、わずかに震えていた。



真白は文を静かに畳み、紡へと視線を向ける。その瞳は優しいが、奥には確かな決意が宿っていた。



真白

「紡、以前白凪様たちが話していた

『倒せぬが故に各地の祠に封印された、古き穢れ人』 

 の話を覚えていますか?」



「は、はい……僕と真白様がまだ現世に降り

 てくる前のお話ですよね?」



真白

「ええ。その封印された祠の一つが、

 山守神やまもりのかみ様がお守りしている

 『烏天狗の里』にあるそうです。」



真白の声は静かだが、その言葉が重く響く。



真白

「これまでは数十年、数百年と封印術が綻びはじめる 

 と再封印を行っていたようですが……」



そこで言葉がわずかに途切れる。

代わりにえにしが肩をすくめながら続けた。


えにし

「今年は“討伐”に踏み切りたいらしい。

 真白君と紡君の神気の力を借りてね」



その言葉に、

空気が一段と張り詰めた。



討伐――。



それはつまり、これまでとは比べ物にならない危険を意味する。



紡の脳裏に、

年末の戦いが鮮明に蘇る。



あの時初めて見た穢れ人の異様な存在感。

肌にまとわりつくような禍々しさ。



理屈ではなく、本能が



“関わってはいけないもの”だと叫んでいた。



それでも――



紡はゆっくりと顔を上げる。



そして、

真白と縁を真っ直ぐに見据えた。



紡の胸の奥には、

自分たち豊穣神社を救おうとしてくれた、



ユッキーや笑成えな、優君や優司、

渚と航、夏樹や榛名、そして遥達の姿があった。



「確かに穢れ人はすごく怖いです。でも、

 あれは……人の子の世に決して出してはいけない、  

 あってはならない存在です」



紡は拳をぎゅっと握りしめる。



「僕も人の子達を……ここへ来てくれるみんなを守る  

 為に、現世に降りてきた存在です。

 その平穏を守りたいです」



紡のその瞳には、

迷いよりも強い光が宿っている。



「だから……僕は……行きたいです」



その言葉に、

えにしは穏やかに頷くと、



えにし

「うん、ありがとう紡君……真白君の方は……

 ふふ、聞くまでもないか」



お茶目に笑うえにしに、

真白はわずかに笑みを浮かべながら、

深く頷いた。



真白

「はい、勿論です。僕も紡と同じ気持ちです。

 この地を守る眷属として、

 退くわけにはいきません」



それからえにしは、



えにし

白凪しらなぎ様の文には、どちらか一人の

 協力をとあったけれど……。

 僕は、真白君と紡君、二人で行ってもらうのが最善 

 だと思うんだ。君たちは、

 もう二人で一つの光なのだから」




真白

「はい、僕もその方がいいと思います」



「ぼ、僕も真白様と一緒なら心強いです!」




その返答を聞いたえにしは、ぱんと手を打った。



えにし

「よし、

 それじゃすぐ返事を書かなきゃね!」



軽やかに立ち上がり、

えにしは部屋を出ていく。



えにしが奥へ去っていくと、入れ替わるように白玲はくれいが紡の足元へ歩み寄った。



それから、白玲はくれいはくちばしで大切そうにくわえていた、一粒の立派な松ぼっくりを紡の掌にぽとりと落とす。



「えっ? あ、ありがとうございます。でも白玲はくれいさん、   僕は真白様じゃないですよ?」



戸惑いながら受け取ると、

白玲はくれいは満足げに鳴き、

紡の肩に乗る。そして頬に頭を擦り寄せた。



くすぐったさに思わず笑みがこぼれる。


その様子を見て、

真白がふっと優しく微笑んだ。



真白

白凪しらなぎ様は求愛行動と仰ってい 

 ましたが……もしかすると、“共に戦う仲間”という

 意味なのかもしれませんね」



紡は松ぼっくりをそっと握りしめる。

確かな温もりがそこにあった。



真白

「紡、改めて……ありがとうございます」



真白の声が少しだけ柔らかくなる。



真白

「きっと危険な戦いになります。

 だからこそ――

 無理はしないでください。

 僕たちが倒れてしまえば、

 対抗できる者がいなくなってしまう」



その言葉は、

優しさと同時に責任の重さを伴っていた。



真白

「これまで以上に慎重にいきましょう」



紡は強く頷く。



「はい!真白様!」



その勢いに呼応するように、

白玲はくれいも高らかに鳴いた。



白玲はくれい

「カァーッ!」



緊張の中に、

ほんの少しだけ温かな空気が流れる。



真白

「もしかすると……澪斗みなとさんと

 も、またご一緒できるかもしれませんね」



真白がふと呟く。



その時だった。



参拝客

「すいませーん、

 お守りをいただきたいのですが!」



表の授与所から、

参拝客の明るい声が聞こえてきた。



「あ、はーい! ただいま行きます!」



紡は慌てて駆け出していく。



その背中を、

真白は静かに見つめていた。




真白

(紡は……本当に、よく成長しました。

 まだ失敗することもありますが、それでも、ここへ 

 来たばかりの頃よりずっと頼もしく、眩しい)



最初に出会った頃の紡は、

緊張のあまり狐の姿のままで、



どこか危なっかしく、

守られる側の存在だった。



だが今は違う。



恐れを知りながら、

それでも前に進もうとしている。



その姿は、確かに頼もしかった。



真白

(きっとまた、激しい戦いになるでしょう)



胸の奥で、静かに覚悟が固まっていく。


真白

(万が一の時は――)


その先は、言葉にはしなかった。


紡の明るい声が境内に響く中、


真白は胸の奥で、

ひとつの誓いを静かに刻む。




湯気の立つ茶が、ゆらりと揺れた。



静かな社務所に、

その揺らぎだけが、かすかに残った。



――紡だけは、何があっても守り抜く。



その誓いだけが、

冬の午後の静寂に溶けていった。

最後までお付き合いいただき、

ほんとうにありがとうございます!

ブクマや評価などいただけたら大変嬉しいです!

次回もお付き合いいただけたら幸いです。

(人´∀`).☆.。.:*・゜

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